第91話 防水加工
「このリストのここからここまではスライム関連だね」
「そうだな」
買い取りリストを見ると、やけにスライム関連のドロップ品が多い。
「ここが漁師町だからですよ。スライムは防水の錬金素材になるんです」
── それならスライム関連を半分くらい出そう。残りの半分は自分たちで錬金してみたいから温存だ。詳しくは錬金ギルドで聞いてみよう。
魔石は一部しか買い取りしてもらえなかったけど全部で127万シルになった。今回もクラーケンの魔石は買い取ってもらえなかった。素材の買い取り金額は639万シル。お散歩の副産物がお金になることに慣れてはいけないと思いつつ、ありがたく買い取ってもらった。
簡単にお金を稼げてしまう度、この世界に貢献したいと思う。出来ることって他の冒険者が嫌がるような割に合わない依頼を受けることやマッピングの地図で赤や黄色になってる場所を浄化するくらいしか思いつかないけど。
「買い取りありがとうございました」
「こちらこそ冬を前に助かりました」
「商業ギルドや錬金ギルドに行く前に市場や屋台に寄ってみない?」
「いく!」
冒険者ギルドを出たところで提案した。このままギルドを梯子したらハナが飽きてグズるのは間違いない。予想通りハナが真っ先に反応した。
市場で鮮魚を売っている屋台は一つも無かった。やっぱり朝じゃないとだめだな。
「おいしいにおい!」
ハナに導かれてたどり着いたのはイカ焼きの屋台だった。ゲソと胴の輪切りをブラックオリーブとニンニクのみじん切りで炒めている屋台だった。もちろん大量に買った。
「おいしー」
「イカって美味しいですね」
「この味付けいいね!」
「…この旨味はワタも使っているな」
「たくさん買ったから夕飯でアレンジしてもいいよね」
全員気に入ったので残りはそのうち夕飯で出そう。
この後もハナに導かれるままたくさん買って試食した。ハナに満足してもらえたのでギルドを梯子しよう。
商業ギルドで委託販売を頼んでいる干し肉やフルーツケーキを納品してから錬金ギルドに行った。
「聖人の泉の小瓶100本とやり直しの石50個ですね!幸運おめでとうございます」
ルースラゴスでもモンテ・トラスと同じ数を出した。
聖人の泉の水は味方にかけたり飲ませたりするとポーション代わりになるし、魔物にかければダメージを与えられる便利アイテムで、やり直しの石は最後に訪れた町や城に戻れるアイテムだ。ダンジョンのある街なら需要があるだろう。
「この街ではスライムで錬金したものが需要あるって聞いたんですけど」
「はい。漁師が使う防水の上着や長靴などにスライムは欠かせないんです」
「じゃあ俺たちも錬金してみるか」
「そうだね」
市場の道具屋でリサーチしてみたら大抵のものはすでに防水加工されていた。なので父さんのアイデアで胴付き水中長靴を作った。長靴とオーバーオールが合体したようなプロっぽいアレだ。父さんは『爪先から胸まで一体化しているところがいいんだ』と言って趣味の釣りで愛用していた。
まず服屋で靴と靴下とズボンとシャツを買って創造魔法で一体化させた。なんとなく水中オーバーオールと呼ぶことにした。長靴というより服っぽいから。
ドロップ品のスライムゼリーと浄化した水を錬金釜に入れて魔力を注いで作る防水ゼリーに水中オーバーオールを漬け込んで乾かせば防水だ。
地面に棒を2本刺して水中オーバーオールを片足ずつ逆さまに掛けて乾燥させた。全部を干し終わって、やり切った満足感に満たされながら振り返ったら庭の風景がスケキヨだらけになって怖かった。新しく作る時は魔法で乾燥出来ないかアルバロに聞いてみよう。




