第88話 警備隊と冒険者ギルド
ワイバーンを討伐した警備隊が帰ってきた。
錬金ギルドで爆弾石を売ってから、温存していたミスリルを販売するため冒険者ギルドに来てみたら警備隊長さんと副隊長さんと鉢合わせした。
「偶然だな!」
「おかえりなさい」
「現地ではお世話になりました。おかげさまで犠牲者を出さずに討伐できました」
「帰りも無事でしたか?」
「おかげさまで。帰還報告を終えて隊員は解散して私たちだけこちらに伺ったんです」
隊長さんと副隊長さんは埃っぽかった。さっぱりさせてあげたいけど浄化をかけるのは失礼かなと思いとどまったら隊長さんを出迎えにグスタポさんとイレーネさんが奥から出てきた。
「無事に戻ったな!」
「汚いわね、浄化」
イレーネさんは出会い頭に失礼だった。
「あら、待ち合わせていたの?」
「俺たちは素材を売りにきたんだ」
「買い取りカウンターに行くところだったんです」
「ミスリルを錬金してみたかったんだが歯が立たなかったからな」
「そうでしたか。錬金レベルが上がると難しい素材を錬金できるようになるそうですがミスリルを錬金となると相当でしょう」
「先は長そうだな!じゃあ俺たちはこれで」
「失礼します」
最上階ではミスリル、アダマンタイト、オリハルコンの順にドロップした。少ししかないアダマンタイトとオリハルコンは温存してミスリルだけ買い取りしてもらったら860万シルになった。
買い取りの後はみんなで街中や市場をゆっくり歩いて回った。売られているのは布が多いが裁縫は苦手なので何も買わなかった。
「ハナ、布は楽しくない」
一回りしたところでハナが飽きた。
「領地に戻る?」
アルバロの提案だった。
「いつも魔法陣で戻っても家の中ばっかりでしょう。家の周囲、海から山までかなり広い範囲を領地にしてあるから楽しめると思うよ」
「そういえば、じっくり見たこと無かったかも」
全員賛成で戻ることになった。リザがこういう会話に違和感を抱くタイプじゃなくて良かった。
── 一方その頃ギルドでは。
「犠牲者が出なかったのはリオさんたちのおかげだ。俺たちはワイバーンを軽くみていた。依頼を受けてもらえなかったら多数の死者を出した上に討伐も叶わず街に逃げ戻ることになっていただろう」
「次に強力な魔物が出たら警備隊は、でしゃばらずに冒険者ギルドを全力で支援する」
対立しがちな街の警備隊と冒険者ギルドの距離がグッと近づいていた。
「カルピオパーティはどんな感じだったんだ?」
「隊員の周囲に強力な防御魔法を展開してくれたお陰で怪我人はほとんど出なかった。勝手に防御エリアからはみ出した隊員が怪我をすることがあってもポーションで全快できるレベルだった」
「こちらの攻撃は相手に届くから高度な魔法だったんだと思う」
リオやカナが子供の頃に観たアニメの一方通行なバリアをイメージしたら上手くいった。
「リザさんとアルバロさんは縦横無尽に駆け回って隊の側面を襲うワイバーンの尻尾を剣で払って隊員に届くのを防いでくれた」
「全体的に警備隊の無力さを痛感したな」
「今まで通り棲み分け出来たら俺たちは上手くいくってことだよな」
「そうだな」
「これからもよろしく」
「現地でハナちゃんは?」
イレーネはハナの活躍が気になるようだった。
「暴れたいハナちゃんはカナさんの抱っこ紐の中で押さえつけられてビチビチしてた」
「あれはあれで可愛かったな」
カルピオパーティも大変だったんだなと一瞬で理解したイレーネだった。




