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第7話 一夜明けて

 柔らかい毛皮が顔をくすぐる感触で目が覚めた。腕の中でふわふわのハナがぷうぷう眠っている。

 柔らかいハナの頭にスリスリしてくんくんして寝顔を眺める。


── 可愛い…。夢じゃなかった。


 しばらく寝顔を眺めてからそっと布団から出る。ハナに布団をかけてそっと部屋を出て洗面所で顔を洗う。


── やっと目が開いてきたな…


 タオルで顔をふきながら鏡を見て驚いた。本当に中学生の頃の顔つきに戻っている。しかも元々濃かった顔がさらに濃くなっている。これはこの世界の人種に合わせて調整が入ったのだろう。変に目立つのは避けたいからありがたい。体つきは中学生くらいで筋肉はそれなり、中学の時は陸上部だった。


── びっくり…本当に生き直すって感じだな。父さん喜ぶだろうな。


 身支度を終えて部屋に戻るとハナはまだ眠っていたが私が着替えているうちに目覚めてきたようだ。着替えを終えて寝顔を眺めていると起きた。


「おはようハナ」

「…… 繧ォ繝翫■繧�s」

文字化けみたいな挨拶だった。


「もう少し眠る?」

「起きるぅ」

少しグズグズして起きた。


「あふう…おはようカナちゃん」

大きなあくびが可愛い。

「はい、おはよう」

 抱っこしてスリスリ。ふわふわの毛皮がくすぐったい。


 抱っこで一階に降りるとご機嫌な父さんが朝食の支度をしていた。


「めっちゃ若い…」

 私の記憶にある1番若い父さんよりさらに若くて違和感。後退していた髪がフッサフサ!


「お!起きたか!もうすぐできるからアルバロ呼んできてくれ」

しかもめっちゃ機嫌が良い。


「アルバロー、ごはんー」

「はーい!」

 ハナを下ろしてアルバロのドアをノックすると返事が返ってきた。


「おはようー」

 ガチャっとドアが開いてアルバロが出てきた。

「おはよう!今日は和朝食だぞ!」

父さんのアルバロへの好感度が最大だ。


 炊きたてご飯、焼いた鮭、だし巻き卵、お味噌汁。残り物のかぼちゃのそぼろ煮、にんじんのたらこ和え、肉じゃが。残り物はこの朝食で終わりだ。


「ハナちゃんの分は鮭をほぐして骨を取ってあるからな」

「ありがとパパ」

 ハナの分は丼にご飯をしいた上におかずを乗せてスプーンで食べやすくしてある。


「いただきまーす!」

鮭の焼き加減もご飯もちょうどいい。


アルバロが食べながら時々震えている。

「美味しい!この卵、じゅわーっと旨みが染み出してる!」

「だし巻き卵だからな!」

「鮭も美味しい!塩加減がご飯に合う!」


「父さんは地元で1番のホテルで料理長を務めてる…務めてたからね」

「田舎で他に働く先が無かったから成り行きで就職したんだぞ。配属先は会社が決めたし。もともと料理人を目指していたわけじゃないんだよ」

「父さんのだし巻き卵は美味しいよ。ね?ハナ」


「うん!犬だった頃、おばあちゃんとカナちゃんには内緒だぞって言って、こっそりくれる卵焼き大好きだったよ」

「ハナちゃん、しー!」


「…父さん。ハナには長生きして欲しいから体に良いものしかあげないようにしようって約束してたよね?」

「そ、そうだったかな…」


「お庭に落ちてた柿とか果物をくわえていくとパパには内緒だよって、おばあちゃんとカナちゃんがむいてくれたのも好きだったよ!」

「カナ…」

「そ、そうだったかな…」



 丼からスプーンで食べるハナは無邪気で可愛いかった。

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