第67話 世界は危険で当然
「ほら元気出して」
「そうだ。たまたま、あのダンジョンだったというだけだ」
「今日のおやつはアルバロの好きな栗蒸し羊羹だよ」
父さんがお茶を淹れて私が羊羹を切る。父さんとハナと私は一切れ。リザは二切れ。アルバロは一棹。
「美味しい」
「ハナもすき」
栗入りなのでハナも喜んでくれた。
「また栗のお菓子を作ろうね」
「うん」
アルバロが落ち込んでいる理由はダンジョンでアデマールさんが大怪我したことだ。
あの後、ダンジョンを元に戻そうとするアルバロを父さんと2人で止めた。いつでもどこででも起きる可能性のあることだった。たまたま、あの日のダンジョンだっただけだ。
ちゃんと職員は改修があったと伝えていたしランクが低いなら慎重に調べるべきだった。大丈夫だろう…で行動する冒険者は遅かれ早かれ怪我を負うか命を落とすのだ。
ダンジョンを管理する側が改修について調べるまで閉鎖するという選択肢もあるが新規発見ダンジョン以外で調査を行わないのはこの世界の一般常識で、それを承知で入るのだから責任は冒険者の側にある。
おやつの後、じゃれつくハナといちゃいちゃした。へそ天になったハナのお腹を撫でると気持ちよさそうに目を閉じるので眠ったのかと思って撫でる手を止める。するとハナの手が私の手をポンポンしてくる『撫で撫でを止めないで』のポンポンだ。知らんぷりしてるとバシッと強めに催促してくるのが可愛い。
ハナといちゃいちゃしていたら夕飯の支度をする時間になった。
「今日は何にしようか?」
「僕、麻婆豆腐がいいな」
アルバロは甘いものが好きだけど辛いものも好きだ。
「いいな!今日はおうち中華にするか!」
我が家の麻婆豆腐は陳さんのレシピだ。ふるふるの豆腐の周りに滲む赤い油が食欲をそそる。リザも嬉しそうなので多めにご飯を炊かないと。
野菜多めで酢豚と回鍋肉も作ったのにブロッコリーの蟹餡掛けも作った。野菜の中華スープもあるので野菜は充分だ。
「出来たぞ!ハナちゃんのは辛くしていないからな」
「ありがとパパ」
ハナの丼にご飯を敷いて麻婆豆腐と酢豚、回鍋肉を乗せると上手にスプーンで食べる。
「おいしー」
「うん、美味しいね!」
リザは早くも2杯目だ。麻婆豆腐は美味しいしハナは可愛いしアルバロも元気が出てきたし今日のおうち中華は大成功だ。




