第62話 試食
「甘いにおい!」
ハナがフンフンしながらキッチンに入って来た。アルバロと一緒にダンジョンで暴れてすっきりしたようだ。
「おかえりハナちゃん」
「ただいま!甘いにおい」
「試作が出来たよ」
アルバロを見ると期待に満ちた顔をしている。
「試食しようか」
「うん!」
「やったあ!」
複製してからバウムクーヘンを切り分ける。ハナと私には小さく。アルバロにはでっかく。クッキーとマカロンはテーブルの中央に。
「おいしー」
ハナが上手にフォークを使ってバウムクーヘンを食べる。
「シンプルな生地をひたすら焼くだけなんだけど材料は良いものを使ったよ」
今回は卵焼きを作る四角いフライパンで転がすように焼いた。
「しっとりして美味しい生地だね、良い材料を使ったってよく分かるよ。クッキーとマカロンもいい?」
「もちろん」
「ハナもクッキー」
ハナに1種類ずつ取ってやる。マカロンはハナが選んだイチゴジャムのを1つだけ。このくらいがハナの胃袋の上限だろう。
「おいしー」
ハナはキャラメリゼしたナッツを乗せたクッキーとフロランタンが気に入ったようだ。今生のハナは甘栗やナッツが好きだ。ポクポクと甘栗やナッツを食べるハナはクマっぽくて可愛い。
「クッキーもバターの風味が美味しいね、シンプルな素材でこんなに美味しいものが出来るんだね!」
「インターネットで買った地球のバターを使っているんだ。この世界でも美味しいバターが出来るようになったら同じレベルで作れるよ」
「ダンジョンの改修を検討するよ。マカロンも美味しい!」
「美味しいバターがドロップするようになったらバタークリームも挟んでみようか」
アルバロの目が光った。
「僕、ちょっとダンジョンに行ってこようかな」
「この近くにもダンジョンがあるの?」
「うん。ドス・グラントが織物の街と呼ばれるくらい発展したのはダンジョンでシルクスパイダーの糸やゴールデンフォックスなんかの上質な毛皮がドロップするからなんだ」
試食の後、アルバロはハナを連れてダンジョンに行った。中層にフロアを増築して『美味しいバター』『美味しい牛乳』『美味しい卵』『アーモンドプードル』『粉糖』がドロップするようになった。




