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第61話 ドス・グラントの商業ギルド

 お仕立ての翌日は商業ギルドを訪ねて父さんの干し肉と私のフルーツケーキを納品した。



「カナさん、もし可能なら…というご相談なのですが」


 ドス・グラントには人気の仕立て屋が集まっているため国中から裕福な女性がドレスを仕立てに来るらしい。そこで接客に出されるカナのフルーツケーキというのが評判で、フルーツケーキ目当てでお仕立てに来るマダムもいるらしい。


「冒険者の保存食として作ったのに冒険者とかけ離れた立場の方からの需要があると聞いてびっくりです」

「我々は、あのように贅沢なお品を冒険者の保存食にしようとしたカナさんに驚きましたよ」


遠慮のないコメントが返ってきた。



「それでですね、裕福なお客様向けのお菓子を他にも作れないでしょうか」


 造作もない。問題は私が空気を読まずにやり過ぎないかだ。


「どんな材料でどのくらいの価格をお考えですか?」

 このポイントを押さえれば大丈夫だろう。フルーツケーキは洋酒と砂糖たっぷりなのがダメだったと今は理解している。


「そうですね…贅沢なお菓子という大前提なので、やっぱり砂糖は贅沢に使って欲しいです。特別感があればあるほど人気が出るでしょう」

 そんなふわっとした答えだとやらかす気がしてならない。贅沢にしてくれって、やらかすお膳立てをされているような気がする。


「…ちょっと時間をください」

「もちろんです!」

 アルバロに聞きながら作れば問題無いだろう。



 試作のためにアルバロとハナを連れてドス・グラントの市場で買い物をしてから我が家に戻ってきた。

 ドス・グラントの市場で買えるもの縛りで作れば大丈夫なはずだ。市場には粉も牛乳も油もナッツも卵も売っていた。



「良いねえ、僕の世界にスイーツ!」

甘いもの大好きなアルバロがご機嫌だ。


「アルバロには、この世界で非常識な物かどうかを判定して欲しいんだ。いつか生み出されるものかも知れないけど、自然な流れを乱すようなことをしたら未来に悪い影響があるかもしれないじゃない?」

「任せてよ!」


「試作の前に何なら作っても大丈夫そうか考える時間を持ちたいからハナと一緒にダンジョンでも行っててよ」

「まだ試食じゃないの…」

「まだだよ!」


 側にいるとうるさそうなので出かけてもらった。



── 市場に無かったチョコは使わないようにしよう。確かまだゼラチンも無かったな。ホイッパーも無かったけど、これを封印すると苦しいので使おう。やっぱり焼き菓子になるな。焼き菓子で見栄えがするもの…


 バウムクーヘンとクッキーとマカロンを作った。バウムクーヘンは焼くのが面倒なだけで、この世界でも簡単に真似出来る。


 クッキーは見栄えの為にチョコや抹茶を使った市松模様のアイスボックスクッキーを作りたくなったがグッと堪えた。貴婦人向けなので一口で食べられるように小さくした。その上に砕いてキャラメリゼしたナッツを散りばめて見栄えと食感を良く。この世界の市場で入手可能なナッツだけを使った。ピスタチオの緑色がありがたい。


 キャラメリゼのついでにフロランタンも作った。その他に刻んだドライフルーツを混ぜた生地でも作った。


 あとはプレーン。ただの白いクッキーだけどクッキーローラーで生地の表面に華やかな模様を刻んだ。クッキーローラーは木彫りの模様がついた麺棒のようなもので、広げた生地の上で転がせば華やかな模様がつく。それをただの丸い型で抜いて焼けば豪華な見栄えのクッキーだ。


 最後にマカロン。コックと呼ばれるマカロンの上下の生地は、卵白に砂糖を加えて作るフレンチメレンゲで出来ている。メレンゲに粉類を加えてよく混ぜ、乾燥させてオーブンで焼けばコックの出来上がり。

 簡単そうに聞こえるがメレンゲ作りは大変だし焼く前の乾燥の工程など見極めを誤ると上手くいかない面倒なお菓子だ。私は電動ミキサーを使う。

 挟むのはジャムでいいや。マカロン自体に色を付けられない代わりに市場で売っていたフルーツを砂糖で煮れば色鮮やかで華やかなマカロンの出来上がりだ。


今回はちゃんと世界と時代に合わせた。私だってやれば出来るのだ。

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