第60話 お仕立て
今日は楽しみにしていたファンタジーなお仕立てだ。ムキムキになった父さんが、日本では考えられないファンタジーなデザインに挑戦したがっている。私は憧れの町娘になりきりたい。
ルンルンな父さんの先導で仕立て屋を目指して歩いている。
「小鳥の仕立て屋…ここがネルソンさんおすすめの仕立て屋だな!」
「いらっしゃいませ」
従業員の皆さんはカナリヤの獣人だった。
「全員の普段着と冒険用を揃えたい」
「少し時間はかかりますが、お仕立てでよろしいでしょうか?」
「ぜひ頼む!」
「ではお好みをお聞かせください」
従業員の皆さんで全員分を手早く聞き取りして、ささっと採寸してくれた。ハナが飽きやすいので助かる。
「冒険の衣装は、その方に合わせた方が動きやすいので絶対に既製品よりお仕立てがおすすめなんですよ」
採寸がやけに丁寧で動いている途中で停止させられたりした。出来上がりに期待しちゃうな。
父さんは冒険者の装備としてのデザインに、私は普段着に熱心だった。次は布選び、ハナが興味津々でフンフンしている。
「その色が気に入った?」
「ハナもお仕立てするか?」
「ハナお洋服きらい」
「バンダナはどうだ?」
「あれ苦しい、きらい」
「残念だな、ハナは可愛いからお洒落が似合うと思うぞ」
「やだ」
「ハナはつれないな」
ぷい。
父さんがいくら働きかけても嫌だと言うが布には興味あるようでフンフンしている。
「お洋服じゃなくてハナのお昼寝用のお布団でも作れないかな?」
「お布団!?」
ハナが反応した。
「お仕立てできますよ!」
「どんなお布団にいたしましょう」
従業員の皆さんが乗り気だ。皆さんがちらちらハナを見て可愛いとつぶやいていたのはちゃんと聞こえていた。
「ふわふわと固め、どっちが好きかしら?」
「大きさは?」
「素材はどうしましょう」
とっても乗り気だ。私たちの衣装より良いものが出来そうだがハナが喜ぶなら大歓迎だ。
「馬車の座席で使えるサイズはどうかな」
「このくらいのサイズでしょうか」
すかさず手頃なブランケットを畳んで見せてくれる。
「そのくらい!」
ハナの好みに合ったようだ。
「じゃあ布を選ぼうか」
「ハナ、これ好き」
厚いが滑らかで優しい手触りの布を気に入ったようだ。
「次に色を選ばないと。タンポポ色はどう?ハナの白い毛皮がいっそう可愛く映えるよ」
「ハナかわいい?」
「可愛い〜」
「それにする」
ご機嫌なハナが甘えてくるので抱きしめて撫でまくる。
「ねえ、ペットスリングも仕立てたい」
片方の肩にたすき掛けにするやつだ。街中ですれ違うとワンコが顔だけ出してて驚くけど可愛いアレ。この世界には無いので絵に描いて説明すると作ってくれるとのことだったので発注した。
すべて前払いで頼んだ。仮縫いまで1週間とのことだったので宿を延長しなければ。お仕立て上がりが楽しみだ。




