第51話 カミロさんの人脈
「…カミロさん、相談に乗ってくれてありがとう。自分では気づけなかったことを知れて良かった…。余ったサンドイッチは冒険者ギルドのみなさんで…」
「それはいけません。こんなに美味しいものを食べさせたら癖になって味の秘密を教えろと迫る者が出てくるでしょう」
「あ、それは気づかなくて…じゃあ…」
「なのでこれは私が責任を持って処分いたします。秘密は守りますのでご安心ください」
カミロさんがさっさと自分のインベントリにしまった。カミロさんは良い性格をしていると思う。
「地図を持ってきますのでお待ちください」
カミロさんの分も食後のハーブティーを淹れていたらカミロさんが戻ってきた。コーヒーや紅茶を出すうっかりは未然に防げた。この世界で一般的なハーブティーだ。
「この地図をみてください。ここがローレです。北へ行くと織物が盛んなドス・グラント。西へ行くと武器製造が盛んなモンテ・トラス。そこから南西へ行くとルースラゴスという漁師町。私が紹介状をご用意出来るのはこのくらいです。あとは王都ですね」
「充分じゃないですか〜!カミロさん、頼りになるう!」
「若い頃、いっしょに冒険した仲間も人族は皆、亡くなってしまいましてねえ…」
答えに困るコメントだった。
「カナさんもハイ・ヒューマンなので人族よりも寿命は長いでしょう?できるなら同じくらいの寿命の相手を選んだ方がいいですよ。これはいろいろな夫婦を見てきた年寄りの言うことなので信じてくださっていいですよ」
「お互いに若いうちは問題も起こらないんでしょうね」
「そうなんですよ。早く老いる種族の方が自分と別れて新しい伴侶を探せと言いがちですね。でも寿命の長い種族は少しでも長く一緒にいたいと、老いて病に苦しむ伴侶の介護をしながら願うのです。お互いに想い合うゆえの悲しいすれ違いです」
どっちも相手を思うからこそ起きるすれ違いだと思うとやりきれない。しかもそれが最後の時間に起きるのだから辛いな。
「全部の紹介状を用意するのに数日ください」
「ありがとうございます。あの、急ぎませんので!まだしばらくローレに滞在しますし!」
「いえいえ。……カナさん?」
「はい?」
「私のインベントリは容量が大きいんです。もちろん時間停止です」
「…たくさん作ってきますけど内緒ですよ」
「カナさんのために協力は惜しみませんよ」
カミロさんが麗しく微笑んだ。腹黒食いしん坊エルフめ。




