第48話 おすすめ
「カミロさんにひ孫…」
「エルフはご長寿だな…」
釈然としない気持ちを抱えて商業ギルドに向かった。
「いらっしゃいませ、リオさんとカナさん。元気がないようですが、どうなさいましたか?」
商業ギルドで出迎えてくれたのはフィリッパさんだった。
「カミロさんにひ孫がいると聞いてびっくりしちゃって」
「冒険者ギルドのカミロさんはエルフですからね。200歳くらいで冒険者を引退したそうですよ」
「200歳…」
「さらさらヘアーで透明感のあるイケメンなのに、おじいちゃんとか呼ばれちゃってるのかー」
「エルフは気持ちも若いからお孫さんやひ孫さんとも友達感覚だそうですよ」
「へー」
「子孫が集まっても兄弟姉妹に見えるって不思議な感じですよね。今日はどうされましたか?」
「そうだった!干し肉とフルーツケーキ、もし必要なら納品できます」
「それは助かります。在庫が薄くなってきているんです」
フィリッパさんと相談して納品数を決めた。売れ行きは順調らしい。干し肉もフルーツケーキもお高めの価格設定なので初動はパッとしなかったがリピーターが増えているらしい。
「今日は面白いものを紹介する。気に入ったら商業ギルドで仕入れに行くといい」
「ご紹介ですか?」
「ああ。紹介料なんてケチケチしたこと言わないから安心してくれ」
「どういったものでしょうか」
「ここに食べ物を出してもいいか?」
「それなら奥でお願いできますか」
奥に通されると商業ギルドマスターのジュリアさんもやってきた。
「昨日まで冒険者ギルドからの依頼でケレンカ村に行っていたんだ」
「特産もない、どちらかというと貧しい村ですね」
「魔物が出たとかで調査依頼をうけた。調べてみたら近くの山にマタンゴしかポップしないダンジョンが出来ていた」
ジュリアさんとフィリッパさんが微妙な顔になった。難易度の高いダンジョンが出来れば村も栄えただろうに、よりにもよってマタンゴしかポップしないダンジョンだ。
「奴らはこれをドロップする。こっちはフレッシュなもので、こっちは乾燥させたものだ」
干しどんこや乾燥ポルチーニを見たジュリアさんとフィリッパさんが無表情だ。
「奴らがドロップするどんこは最高級品だ。最高に美味い出汁が出る。奴らは本しめじもドロップする。俺たちの故郷では『匂いマツタケ、味シメジ』と言ってな、本しめじは旨みが強い稀少な高級キノコだ。すまし汁、炊き込みご飯、シチュー、どうやっても美味くなる」
ジュリアさんとフィリッパさんが本当に?て表情だ。
「ポルチーニ茸はナッツや肉のような濃厚な香りと風味が特徴でキノコの王様と呼ばれている。リゾットにしても美味いしクリームパスタにしても美味いしソースにして肉にかけても美味い」
ジュリアさんとフィリッパさんの表情が揺らいだがカッサカサのどんこやポルチーニを見て、すんっ!て無表情に戻った。
「まあ試してみてくれ」
父さんがインベントリから土鍋を出して蓋を開けると旨みたっぷりの湯気がジュリアさんとフィリッパさんを包んだ。
「これはケレンカ村ダンジョン産キノコの炊き込みご飯だ」
手早くお茶碗によそって2人の前に置いて、別の鍋を取り出す。
「これは舞茸の土瓶蒸し」
父さん特製の美味しいお出汁にほぐした舞茸と銀杏と三つ葉を入れて一煮立ちさせたものに酢橘を添えて。
「いただいていいのか?」
「ぜひ試してくれ」
ジュリアさんとフィリッパさんが恐る恐る口にするのを見届けもせず父さんはせっせとハナに給餌している。
「土瓶蒸しは熱いからふーふーしてな」
「うん!」
ふーふー
「おいしー」
「そうか!ハナちゃんに美味しいって言ってもらえてパパ嬉しいぞ!」
さん…
「ご飯もおいしー」
「そうか!美味しいか!おむすびにして明日の朝飯にするか?」
リオさん…
「おむすび嬉しい」
「そうかそうか!」
「リオさん!」
「ん?なんだ?」
「さっきから呼んでいたんだよ」
「悪い悪い気づかなかったな」
父さんは今日もハナの下僕だった。




