第34話 朝市で朝食
「一通り回ったな、買い物は充分だ」
「ハナ、お腹すいた」
屋台で何か食べるつもりで家を出る前に軽くフルーツを食べてきたが歩き回って小腹が空いた。
「美味しい匂いする?」
ハナが目を閉じてフンフンする。
「…お魚とフルーツの匂いが強くてわからない」
「この時間なら南門近くの屋台がいいよ。すぐに食べられる軽いものもあるし昼に食べるための持ち帰り用の軽食もあるから選び放題だ」
ハナのフルーツを大人買いした果物屋台の店主が教えてくれた。
「南門って、ここを真っ直ぐ?」
「ああ、ゆっくり歩いても5分もかからない」
「ご親切にありがとう」
「こちらこそ、たくさん買ってくれてありがとう」
お礼を言って歩いて行くとすぐに着いた。
「おいしい匂いがする!」
「お肉?フルーツ?」
「煮たお肉みたいな匂い」
ハナに導かれるまま歩いていくとスープとシチューの中間のようなメニューが人気の屋台にたどり着いた。
「これ食べたい!」
「この鍋いっぱいに売ってくれ」
父さんが味見もせずに大人買いだ。
近くのベンチに座ってインベントリから食器とパンを出して朝ごはんだ。
「おいしー!」
上手にスプーンを使って一口食べたハナがご機嫌だ。
「具沢山の煮込みだな。肉も野菜もよく煮込まれていて美味い」
父さんも気に入ったようだ。安定の塩味だが野菜もたっぷりで美味しい。最初に竜人に会ったので身構えてしまったが、この世界は普通に美味しいものが多い。足りないのは香辛料と調味料だ。
リザが足りなそうなので父さんがインベントリから作り置きのローストポークを出した。
「ハナさっきのブドウ食べたい」
「あれは食べごろだったな、ちょっと待て」
父さんが葡萄を出して洗う代わりに浄化をかける。
「食べていいぞ」
「ありがと!」
ハナが葡萄をプチプチ食べる姿が可愛い。
「甘くておいしー!」
私たちもつまんだが美味しい葡萄だ。皮と種が多いがハナは気にせず丸ごと食べている。アルバロによると問題無いそうだ。
朝食の後、買い物を続けた。鍋や服など、この世界のものを一通り揃えて、冒険者に必須の簡易調理器具や干し肉などの携帯食料も買った。
「必要なものは揃ったから帰ろう」
宿経由で我が家に帰った。父さんは既製品の干し肉の不味さに顔をしかめつつ試作を始めるつもりのようなので助手を務めたいリザを家庭菜園に誘った。
父さんが必要としている野菜を作らないと…の一言でリザはほいほい着いてきた。リザには飯マズを克服してもらいたいが、今のリザは試作の障害になりそうなのだ。
リーフレタスやキャベツ、白菜、ごぼう、カブ、大根、玉ねぎ、ニンニク、じゃがいも、青梗菜、ほうれん草を植えた。
「リザのおかげで捗ったよ」
疲れ知らずでドカドカ耕してくれて最高の戦力だった。
「畑仕事って面白いですね」
農業と無縁の種族なので農作業が珍しいのと自分の手で畑が出来上がるのを見て大はしゃぎだった。
「パパ、お散歩いかないって」
私たちが農具を片付けている間に父さんを呼びにいったハナが1人で戻ってきた。
「じゃあ私たちだけで行こうか」
「うん」
アルバロが用意したハナのお散歩用ダンジョンは経路やポップする魔物が日替わりなので飽きずに楽しめる。今日は草原のフィールドにミノタウロス、草原を抜けた先の洞窟にスケルトンだった。
質の良い魔石とドロップ品を大量に拾ってお散歩を終えた。




