第33話 朝市
「父さん…」
声をかけたら父さんとハナが同時に飛び上がった。
「め、飯にするか!」
父さんが慌てて配膳を始めた。
突撃してきたハナを受け止めると頭をぐりぐりと押し付けてきた。
「あのね!ハナが選んだお肉だから確認したの!ちゃんとおいしいから大丈夫!」
「そっかー、美味しいの?」
「うん!」
── 誤魔化せたと思ってるハナが可愛い。
「飯にするぞー!今日買った肉をカットしてみた。サラダとスープは行き渡っているな?おかわりもあるから足りないやつは言ってくれ、肉とパンは好きに取ってくれ」
「ハナはどれがいい?」
「骨付き肉と右側のお肉とって!」
ハナが欲しいだけ取ってあげると上手に食べ始めた。愛犬時代はあげるものに気を使っていたけど今はなんでも食べられるし、上手に食べてくれるので安心だ。今も骨つき肉の骨の部分を両手で持って上手に食べている。ハナと同じものを食べられるようになって嬉しい。
「おいしー!」
「美味しいねえ」
「ちゃんと処理してあるし新鮮だから悪くないな」
……でも飽きた。
全部同じ味つけなので飽きる。
「ハナ、フルーツ食べたい」
「私も飽きたな、柿と梨でいい?」
「うん」
よく熟して甘そうな柿と梨をむいたらリザをのぞく全員の手が伸びてきた。
「やっぱり飽きるよね」
「少し味変したいと思うよなあ」
「みなさん食べないんですか?」
「美味しく焼けているんだけど味に飽きちゃったんだよねえ」
「味に飽きるなんてことがあるのですか?」
残った肉はリザが美味しく完食した。
「明日は朝市で食材を買おう」
「その後は服や雑貨を買おうよ。(この世界に合った)鍋なんかを揃えないとね」
「ダンジョンは?」
「ハナのお散歩はちゃんと行くよ。明日買い物して準備できたら明後日は牛乳のダンジョンに行こうね」
「行く!」
その日は早めに休んで早起きして朝市に間に合った。
「すごい人だね」
「カナちゃん抱っこ、ハナ踏まれちゃう」
「そうだね、こんなに人が居ると怖いね」
抱き上げるとしがみついて、頭をもたれてきた。今日もハナが可愛い。
「肉がいろいろあるな、俺の見立てで選んでいいか?」
「肉も魚も野菜も父さんに任せるよ」
任せると言ったし良いんだけど本当にたくさん買った。買う前に店員さんと話し込んでいるし試食もさせてもらって目的があって計画的に買っているようなので黙っていた。ハナも調理前の素材には興味がないのか大人しい。
「次は野菜だな、どんどん買うぞ」
これまたたくさん買っていく。
「野菜はこんなもんだな」
「パパ、フルーツ買って!」
「任せとけ!美味しいのを選んでやるからな」
歩いて行くとフルーツのエリアに入った。
「パイナップルか、甘い匂いだな」
「食べたい!」
「20個くれ」
見事な下僕っぷりを発揮してハナの欲しがるフルーツを全種類、大量に買った。




