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第327話 ブブラニナ

「ハナ、機嫌を直して」


ぷい。


 最低気温が10度を超える日が5日続いたのでコタツを片付けたらハナがソファーでふて寝してしまった。



「……もうっ…仕方ないな、じゃあアルバロと2人で温室のベリーを摘んでくるからハナはお留守番しててくれる? 5時間くらいかかると思うけど」


「!!!」


 拗ねているけど1人でお留守番は耐えられないハナが涙目で振り返った。


「一緒に行く?」


…こくん。


 うなずいて大人しく抱っこされてくれたのでハナを連れて秘境の温室に向かう。…手がかかるけど今日もハナが可愛い。

 春といえば苺の旬だ。今日は苺以外のベリーも摘む。



「はい、到着」


 抱っこしたハナにすりすりクンクンしていたら温室に着いたのでハナを下ろすと自由に歩き回っている。温室の中に危険はないので好きにさせている。


 私とアルバロは本格的に収穫だ。




………これは…かなり腰にくる作業だ…。



「少し休もうよ、腰が痛いし」

 ハナが戻って来るのが見えたのでアルバロに声をかけた。


「そうしようか」

「ハナー!ひと休みするよー」


「はーい!」

 機嫌が悪かったことを忘れたハナが嬉しそうに走ってきた。


 温室の中に設置したテーブルに摘んだばかりのベリー類を浄化して並べるとアルバロがお茶を淹れてくれた。


「摘みたてのベリーだよ、バニラアイスと合わせる?寒いからアイスはやめておく?」

「アイス食べる!」

 ハナとアルバロがハモったのでバニラアイスを出した。



スプーンですくって、ぱくん。


「おいし〜!アイスとベリー、合う〜」


 寒い寒いと拗ねていたのにアイスクリームを食べたがるハナに一言ひとこと言ってやりたい気持ちをぐっとこらえた。



 休憩の後も2時間ほど収穫して、この日の作業を終えた。父さんたちの家に寄ってお裾分けしようと思ったら『ベリーはスイーツ向きだからカナが持っておけ』と言って少ししか受け取ってもらえなかった。大量に収穫したのに…。



 この大量のベリーを少しでも減らしたい…そんな訳でチェコのスイーツ、ブブラニナ(bublanina)を作ることにした。ブブラニナは材料にサワークリームを使う。ロチャのダンジョンでドロップしたサワークリームを使ってみたかったのだ。


 常温に戻したバターと砂糖をボウル入れて電動ミキサーでガーッとした。卵黄を加えてさらに混ぜる。続けてバニラオイル、サワークリーム、レモンの皮すりおろしを加えて、さらに混ぜる。


 別のボウルに卵白でメレンゲを作る。ブブラニナはチェコ語で泡を意味するブブリナが語源の家庭のスイーツらしい。レシピを教わった時に由来も聞いたので手抜きせずにしっかりしたメレンゲを作るようにしている。


 バターの方のボウルに粉を加えてさっくり混ぜる。そこにメレンゲを何回かに分けて混ぜる。

 生地を型に流しいれたら彩り良くベリー類を散らしてオーブンで焼く。



 後片付けを終えてアイテムボックスの中身を整理していたらオーブンがピーピー鳴ったので、取り出そうと振り返ったらアルバロとハナがいた。


「冷めたら食べようね」

「うん!」



 ハナが張り切って父さんとリザを呼びに行ってくれた。アルバロはお茶の準備をしてくれている。その間に私は仕上げだ。焼き上がったら粉糖を上から振って出来上がり。



 ブブラニナが冷めた頃に父さんたちが来た。

「いらっしゃい、昨日のベリーで焼いたんだ。ブブラニナっていうチェコの伝統的な家庭のスイーツ」

切り分けたブブラニナを配る。



「…しっかりした生地で食べ応えあるな」

「美味しいよ、ベリーの酸味がいいアクセントだね」

 父さんとアルバロに好評だった。



「そういえば今週末だっけ?」

「ああ、準備は任せとけ」


 神様たちを招待して裏庭でカルソッツのBBQをやるのだ。カルソッツはスペインのカタルーニャ地方のネギだ。 これを外側が真っ黒になるまで焼いてロメスコソースをつけて食べる私の大好物だ。



 アルバロが裏庭にBBQ用の大きな竈門を作ってくれたし、炭もたっぷり取り寄せてある。前菜もお肉も父さんが食べきれないくらい用意すると張り切っている。


「じゃあ私はお土産のスイーツ担当だね、ワインの在庫も渡そうか」

「みんな喜ぶよ!これもっと食べたい」


 アルバロがブブラニナをおかわりしてくれた。

「素朴で美味しいよ」




 気に入ってくれて嬉しいな、さくらんぼの季節になったら、さくらんぼで焼こう。

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