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第325話 遠野にやきもち

 約束の時間ぴったりにヘンリクさんのお店に到着した。


「久しぶりだね」

「こんばんは!」

 イケおじなヘンリクさんが出迎えてくれた。


「ハナちゃんは今日も可愛いね」

「えへへー」

「ハナが喜んでいます」

「本当に可愛いよ、クラリッサさんとエステルさんが到着済みだよ」



 ヘンリクさんがいつもの個室に案内してくれた。


「カナ!」

「ハナちゃん!」


「クラちゃんとテルちゃん!」

 ハナを床に降ろすと2人に走って駆け寄った。


「今日も可愛いわ」

「ふわふわね!」

「むふー」

 2人に全身をモフられてご機嫌に尻尾をぴこぴこさせている。


「我慢できない!抱っこさせて」

 クラリッサがハナを抱き上げるとハナは大人しくすりすりされている。

「次は私よ!」

 隣のエステルに抱き寄せられてハナがうっとりしている。


「2人ともハナを可愛いがってくれてありがとう」

「本当に可愛いのよ」

「今日もとっても良い子ね」

「むふー」

ハナが大喜びで2人に甘えている。


「ハナちゃんは冬の間、どうしていたの?」

「がうがう!」


「『おこたに入って、カナちゃんとお散歩に行って、カナちゃんのケーキ食べた!』って言ってる」

 今日もアルバロと私はハナの通訳だ。クラリッサとエステルにハナの通訳をしていたら遠野が到着した。



「久しぶり、王都へようこそ」


遠野が今日もイケメンだった。

「とのくん!」


「とのくん?…僕はハナちゃんにそんな風に可愛く呼ばれていたのか」

「……」

「……」

「……」

「……」

 クラリッサとエステルとアルバロと私が『…ん?どういうこと?』と首を傾げた。


「とのくん、だっこ」

ハナが遠野に向かって両手を伸ばす。


「うわぁ可愛い!抱っこのおねだり」

嬉しそうな遠野がハナを抱き上げる。


「今日もふわふわだね」

「冬は中の方の毛がのびるのよ」

「柔らかいね」

「ハナの毛皮はカナちゃんも好きなのよ」

「僕も大好きだよ」

「えへへー」


「…遠野」

「まさか…」

「先月だったかな、巽がうちのサロンに髪を切りに来た時に狐太郎も連れてきてて、その時に狐太郎と会話できちゃって。テイマーのスキルをゲットしていたんだよね」


「ちょっと!」

「どうやって!」

 クラリッサとエステルがすごい勢いで遠野に迫る。ちょっとハナが怯えているので抱き取った。


「2人とも落ち着いて!」

「私もハナちゃんとお話ししたいの!」

「教えて!」


「僕は魔族の血を引いているから。魔族といえば使い魔だろう?僕の父親も黒猫の使い魔がいるんだ。だから父親もテイマーのスキル持ち。僕は寿命が長いから魔族寄りなのに、そこは遺伝しなかったと思っていたんだけど発現が遅かっただけみたいなんだ」


そういうことか。



「いいな〜」


 涙目のクラリッサとエステルが2人ともハンカチを噛み締めていた。もの凄い美女たちなのに漫画みたいだ。


「ハナは2人の言葉を理解しているし2人のことが大好きだよ」

「がうがう!(大好きー!)」


「大好きだって!」

「ハナちゃん…」

「もう一度抱っこさせて」

 ハナを2人に預けてたっぷりイチャイチャしてもらうことにした。



「使い魔ってテイマーのスキルだったんだね」

「意外?」

「言われてみれば…って思うよ」

 アルバロと遠野と3人で雑談していたら狐太郎と巽が到着した。


「ハナちゃん!」

 ハナが振り返ると駆け寄る狐太郎がいた。


「こたくん!」

 お鼻とお鼻をちょんと合わせてご挨拶すると狐太郎とハナはクラリッサとエステルに抱っこされてしまった。2人は今日ずっとハナと狐太郎を離さないだろう。


 全員揃ったのでドリンクや食べ物を注文した。ハナの好きな鮭のロヒケイットは多めに頼んだ。タマネギ、ジャガイモ、ソーセージを炒めた上に目玉焼きをのせたピッティパンヌは私とアルバロのお気に入りだ。



「今日も美味しい!」


「それはありがとう」

 ピッティパンヌを味わっていたら次の料理を運んできたヘンリクさんに聞かれていた。


「追加のスモークサーモンとハムをどうぞ」

「がうー!(しゃけ!)」


「あ、スモークサーモンはハナに、ハムは狐太郎くんにお願いします」

「ハナちゃん、狐太郎くん、お待たせしました」

「がう!(ありがと)」

「こん!(ありがとう)」


 クラリッサとエステルに抱かれているので2人の前に置いてくれた。


「クラリッサとエステルはちゃんと食べてる?」

「もちろんよ!今日はハナちゃんと狐太郎を独占させてちょうだい」

 ハナと狐太郎を離す気は無いようだ。ハナも狐太郎も喜んでいるから見守ることにした。2人ともスモークサーモンやハムを食べさせてもらってご機嫌だ。


「そうだ、みんなにお土産。ヘンリクさんにも」

 練乳とフルーツを詰め込んだ籠をアイテムボックスから取り出して順番に渡した。


「中身は練乳とフルーツね!」

 アイテムボックスから試食の練乳と苺を出した。


「これは牛乳とグラニュー糖を煮詰めた練乳、苺をつけて食べると美味しいの。ハナのお気に入りなんだ」

「がうがう!(おいしーよ)」


「ぜひ試してください」

ヘンリクさんが苺を練乳につけて食べる。


「甘いミルクと甘酸っぱい苺が合うね!これは美味しいよ」

 ヘンリクさんの故郷では毎年どの家庭も苺を10キロ以上も収穫するらしい。凍る魔法で冷凍にしておけば冬の間の貴重なビタミン源になるそうだ。


「本当に美味しいわ」

「苺に合うのね」

 ハナと狐太郎に食べさせながら自分たちもつまんだクラリッサとエステルも気に入ってくれたようだ。


「カナ、この練乳のレシピを買うよ」

「レシピってほどのものじゃないよ」

「僕の故郷でも似たソースがあるよ、ハーブで甘い香りを足しているんだ」


「ほら!一般的なものだってば。どんどん作ってよ!もしレシピ販売しても料理上手な人は即日真似できるよ、そんなものにお金もらったら巽に大損させちゃうし、そうなったら友達付き合いもやりにくいもん」


「僕もカナさんに賛成だよ」

 ヘンリクさんが援護してくれた。

「お鍋に牛乳とグラニュー糖を入れて弱火で焦がさないように煮詰めてね。牛乳が1/3になるくらいが出来上がりの目安だから」

「…ありがとう、真似させてもらうよ」



 巽のお店は今年も苺の季節は大忙しになりそうだ。

ハナと狐太郎も溺愛されて大喜びだったし今日の飲み会も楽しかった。

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