第320話 ダンジョン攻略
翌日も朝から養殖している魚や海老たちの世話をしてからアルバロの力でこっそりダンジョンに転移した。
「今日は移動が無かったから昨日より早く攻略を始められるね」
「はやくー」
ハナが待ちきれない。
「ちょっと待って、この辺りに宝箱を設置していこうよ」
「そうだね」
アルバロの眷属になって、もう老後のための大金は必要無くなった。長命な種族になって老後の資金がどれだけ必要か分からなくて貯めていたけど、もう必要ない。父さん達と話し合ってこの世界に還元してゆくと決めた。
みんなで話し合って還元方法は宝箱になった。父さんの希望でミミックもいる。冒険者達に怪我をさせたくないのでミミックはスライムよりも弱いけど、念のために倒したら回復薬が1ダースドロップする仕組みになっている。ここでドロップする回復薬を高級回復薬にしたのでミミックもけっこう喜ばれている。ダンジョンに持ち込んだ回復薬が減った頃に出会うとお金よりも嬉しいらしい。
「この木の窪みに設置しようよ」
「いいね!」
アルバロが設置してくれた。
「余剰金は宝箱ってアイディア、いいよね!」
「そう?」
「冒険者達も楽しんでいるみたい」
宝箱には日本円で3万円分くらいの硬貨が入っている。もの凄い大金ではないので出会ったらラッキーくらいの感覚だ。もっとお金になるドロップ品はたくさんある。
「低層階に設置するってのもいいよね」
「駆け出しの冒険者はお金が必要だもんね」
上級ランクの冒険者は3万円なんて見向きもしない。最近は行く先々のダンジョンの低層階に宝箱を設置している。
「設置完了!」
「じゃあ行こうか」
「うん!」
ハナが元気よく走り出したので、私たちもハナの後を追うように走り出した。
「バッファローの群れがいる。周りに他のパーティーもいないから、ハナやっちゃっていいよ」
「やったあ!」
アルバロが許可したのでハナが暴れ回って倒しまくった。ハナに怪我がないようアルバロと私が後ろでフォローした。
「ハナ、お疲れさま」
「たのしいね!」
「良かったね、ドロップ品を拾おうね」
「うん」
手分けして肉やチーズを拾って回る。
「カナちゃん!みて!!おっきなカマンベール」
「どれどれ…これはブリーチーズだね」
「ぶりー?」
「両方とも白カビチーズだよ。大きさが違うんだ。カマンベールは直径10cmくらいでブリーは30~40cmくらい」
「へえー」
ブリーをバゲットに乗せて黒胡椒をガリガリ引いて食べるのが大好きなので大きいサイズがドロップして嬉しい。
ドロップ品を全部拾って次々にフロアを制覇した。
大量のドロップ品にハナが大喜びだ。四つ足で器用にスキップしている。
「いっぱいチーズでたねー」
「そうだね」
ハナが張り切ってくれたおかげでチーズが大量だ。
モッツァレラ、ブリー、カマンベール、ラクレット、パルミジャーノ・レッジャーノ、チェダー、ゴーダ、マスカルポーネ、トム・フレッシュ、ロックフォール、ペコリーノ・ロマーノ、リコッタ、ブッラータ、フェタ、エダム。
1番嬉しいのはモン・ドールが20個も出たことだな。季節限定のチーズですっごく美味しいのだ。チーズの半分は父さんにお裾分けしよう。サワークリームやバターもたっぷり出たからお菓子作りが捗るな。
「牛乳もでたねー」
「そうだね、ハナの好きな牛乳がたくさんドロップしたね」
「ねー」
「お肉もでたねー」
「ドロップした牛肉で今日の晩御飯はハナの好きなビーフストロガノフにしようか」
「うれしー!」
帰宅するやハナが『ビーフの白いやつ』と急かすので早速料理だ。
マッシュルームと玉ねぎを薄切りに、牛肉は7~8mm幅の細切りにして塩胡椒で下味を付けたら薄力粉ををまぶす。
バターを溶かしたフライパンで、玉ねぎ、牛肉、マッシュルームの順番で炒める。白ワインを注いで煮詰めたらコンソメ、生クリーム、サワークリームを加える。塩胡椒で味を調えたら完成だ。
「出来たよー」
「たべる!」
今日ドロップしたバターでアルバロがバターライスを作ってくれたので、お皿にバターライスとビーフストロガノフを持って刻んだパセリを振りかけた。
「じゃあ、いただきまーす」
「ます!」
上手にスプーンですくってぱくん。
「おいしー」
「うん、美味しいね。アルバロのバターライスと合う!」
「そう?嬉しいな」
こってりしたバターライスとビーフストロガノフに、あっさりスープの組み合わせも良い。今日のスープは野菜多めのミネストローネだ。ビーフストロガノフの白とミネストローネの赤の対比も美しくて大満足の夕飯だった。
ハナが大喜びだしドロップ品は最高だし、良い休暇だった。




