第32話 屋台のお肉
冒険者ギルドを出て再び屋台村へ。
「まとめ買いしてお皿に入れてもらおう。気になるものは全部買っちゃおう」
魔石を売ったお金でどんどん買った。
「カナちゃん、ハナあれも食べたい!おいしい匂いがする」
「はいはい」
ハナが欲しがるものを買っておけば間違い無いだろう。インベントリという便利なものがあるのでたくさん買っておけば料理をしたくない日、すぐに食べられる。温め不要なので冷凍食品よりも便利だ。
「屋台を一周しちまったな。ハナ、もう食べたいものはないか?」
「ぜんぶ買ったよ!」
「じゃあ戻ろうか、いったん宿に戻ってから家に帰って食おう」
宿に近づくと騒がしかった。
「なんだろうね?」
「俺たちは客だぜ!」
「あんたたちなんか客じゃないよ!」
見るからにならず者っぽいパーティがマヤさんと睨み合っている。棍棒を振り回すマヤさんの後ろに怯えた様子の若い女性が数人。
「その人たちしつこいんです!」
「断っても追いかけてきて!」
察した私はズンズン進んでいってリーダーっぽいデカい男の首を後ろから左手で掴んで持ち上げた。
「なんだ!てめえ離せ!」
デカい男が暴れるが子猫みたいなものだ。ハイ・ヒューマンになって、なんでも軽々持てるようになって楽しくて仕方ない。
「マヤさん、ただいま!こいつ邪魔だから排除してもいい?」
「そりゃあ大歓迎だよ!」
手首のスナップをきかせて軽く放ってやったら通りの反対側まで飛んで行った。
男の手下3人が怯んだところにマヤさんが棍棒の素振りを始め、ハナとアルバロとリザが殺気を放つ。
「カナ、飯の前にばっちい物を触るなよ。浄化浄化」
父さんにしつこく浄化魔法をかけられた。
「遅くなって悪かった!」
「ギルマス!全員確保したぞ」
「じゃあ連行してくれ」
駆けつけた中にギルドマスターのフラビオさんがいた。
「また会ったな!この街の警備隊と冒険者ギルドは連携することが多いんだ。あいつらは冒険者なんで冒険者ギルドでの処分と街からの処分になる」
フラビオさんがマヤさんに向き直る。
「騒がせてすまなかったな、マヤ」
「来てくれて助かったよ。こういう場合は正当防衛だからやっちまってもいいだろう?」
「お前はいつもやり過ぎるだろう」
「素振りだけじゃ鈍っちまうよ」
マヤさんは実力行使を止められているのか。察した。
「じゃあ俺たちは部屋に戻るぜ」
「助かったよ、ありがとう」
「ありがとうございました!」
マヤさんや絡まれていた女性たちに手を振って部屋に戻った。
部屋に戻って、中から鍵をかけてからアルバロが何かした。
「これで誰も訪ねて来ないから大丈夫。魔法陣で戻ろうか」
父さんが魔法陣を展開して全員で帰宅した。
「埃っぽいから全員浄化!」
父さんに浄化魔法をかけられたら全身がさっぱりした。
「飯の支度するから、みんなは着替えでもシャワーでも好きにしてろー」
アルバロと私はシャワーを済ませて着替えることにした。リザは父さんの手伝いをしたいらしい。
戻ってみたらハナが父さんにまとわりついて甘やかされていた。
「このお肉おいしいね!」
「カナには内緒だぞ」
「そっちのお肉も味見したい!」
「しょうがないな〜、少しだぞぉ」
屋台で買った肉を父さんが小さくカットしてハナの口にせっせと運んでいた。飼い主というより下僕のようだった。




