第318話 ロチャの揚げパン
「ダンジョン!」
「その前にどこかでお昼にしようよ」
「そうだね、朝から養殖場や畑を回ったしお腹空いたね」
「そういえばハナもお腹すいた」
「美味しい匂いしたら教えてね」
「うん!」
ペットスリングの上からぽんぽんしたらハナが張り切り出した。
「あっち!おいしい匂い」
ハナがフンフンする方へ向かうとラーンゴシュによく似た揚げパンの屋台が何件も並んでおり、どのお店も繁盛していた。
ラーンゴシュはハンガリー発祥の平たくて大きな揚げパンだ。フランスの製菓学校に通っていた時にハンガリー出身のクラスメイトが作ってくれたことがある。美味しくて作り方を教えてもらったことも思い出した。
初めて見た時はボリュームに驚いたけど美味しくてペロリと平らげてしまった。
ラーンゴシュは大きくて平たい揚げパンで、塩を振りかけただけのプレーンや、ガーリックバターを塗った味付けも美味しい。
しかしラーンゴシュの醍醐味はトッピングだと思う。プレーンも美味しいけど種類豊富なトッピングが楽しいのだ。
サワークリームと山盛りチーズのトッピングが1番人気と教えてもらったけど、さらにその上に玉ねぎのスライスやハム、ソーセージ、カリカリベーコン、チリビーンズや目玉焼き、ツナマヨなど好みのトッピングを乗せると最高に美味しかった。ジャムや砂糖、チョコレートスプレッドのヌテラとかもクラスメイトたちの間で人気だった。
この世界にはまだチョコレートや生クリームが無いけどクレープに包むような具材はなんでも合いそうだ。
「ラーンゴシュにそっくり!」
「カナは知ってるの?」
「よく似たものを食べたことがあるし、作り方を習ったこともあるよ。トッピング多めが美味しいと思う」
「早くたべよー!」
トッピングが豊富そうな屋台に並んぶと、すぐに順番がきた。
「いらっしゃい!」
「2人分は普通サイズで、この子に小さく作ってもらうことはできる?」
「出来るよ!半分くらいでいいかい?」
「うん!」
屋台のおじさんが手でこのくらいと示すとハナが元気よく答えたので半分サイズで作ってもらうことにした。
全員サワークリームと山盛りチーズを乗せてもらって、ハナは玉ねぎスライスとソーセージを追加、アルバロは炭火で焼いた大きな肉をゴロゴロ乗せていた。私はハムエッグにした。
注文するとおじさんが手際よく具材を包んでくれた。くるっと丸めたら、この世界の屋台でよく見かける抗菌作用のある大きな葉っぱで包んで手渡しだ。
「まいど!」
「ありがとう、美味しそう!」
近くに空いているベンチがあったのでハナを真ん中に並んで座った。
「ほら、持てる?」
「だいじょうぶ」
アルバロがハナに渡すと両手で上手に持てた。
「まだ熱いから気をつけてね」
「うん!いただきまーす」
ハナがあむっとかぶりつく。
「おいしー」
「本当だ、これ美味しいね!」
ハナもアルバロも気に入ったようだ。私も一口…はい美味しい!ハムエッグが半熟トロトロでウマウマだ。
「カナ、同じの作れるんでしょ?」
「ほとんど同じだと思う」
「今度作ってよ、ミートソースとかトッピングしたいな」
「ハナも食べたい!」
「じゃあ今度作ろうね」
「やったあ!」
楽しく食べ終えてダンジョンに向かった。




