第317話 休暇でロチャへ
今の時点でできる農作業はひと段落した。みんなで話し合って2〜3日、休日とすることになった。
親バカなアルバロと私がハナと向き合う。
「お休みだからハナの好きなことしようか?」
「すべり台?ダンジョン?裏山温泉?どこかにお出かけする?」
「うれしー!」
アルバロに抱きついてモフモフされたハナが解放された途端、四つ足で踏ん張ってブルブルと乱れた毛皮を整える。
「どこ行くー?」
今度は私に飛びかかってきたので遠慮なくモフモフしてやった。
大喜びのハナがアルバロと私の間を行ったり来たり忙しい。私から解放されたハナが再びブルブルした。
「2〜3日で行けるところだよね、転移で一瞬で帰ってこられるから養殖している魚たちの世話は心配しなくて大丈夫。だからハナの行きたい場所を一緒に考えてみようか」
「うん!」
アルバロの提案にハナが大喜びだ。
「ハナはのんびりしたい?たくさん動きたい?」
「いっぱい走りたい!」
「そっか…じゃあ今まで行ったことないダンジョンに行こうか?」
「ダンジョンうれしー!」
ハナが大喜びだけどアルバロはどこのダンジョンを想定しているんだろう。
「どんなダンジョン?」
「ロチャっていう地方のダンジョンなんだけど草原フィールドだよ」
ポップする魔物はフラミンゴ、バッファロー、ジャイアントカワウソ、キラーディアー、ヒプノティズムシープとか草原ぽい魔物が多く、それほど凶暴でもないそうだ。Bランクのパーティなら無理なく制覇できるらしい。
「低レベルな上に小麦やトウモロコシ、肉やチーズ、毛皮や羽毛が多くドロップするから中級以下の冒険者に人気なんだ」
「行きたい!」
「じゃあ決まりだね!」
養殖している魚たちの世話を引き受けることや休暇中の予定を伝えに行ったら、父さんとリザは小旅行に行くとのことだったので別行動だ。
ハナとアルバロと3人で養殖している魚たち、果樹や家庭菜園などを見回りながら世話を終えたので出発した。
「ハナが待てないようだからロチャに転移するよ。カナとハナは僕につかまって」
「うん!」
ハナがジャンプしてアルバロに抱きついたので私もアルバロにくっついた。
「じゃあ行くよー!」
一瞬で見知らぬ風景の中にいた。ロチャの少し手前らしい。
いきなりダンジョンの中に転移すると街から出る時に「入った記録が無い」と騒ぎになるからいったん馬車と化した私の車で街の入り口に向かう。
ロチャの街は少し列ができていたが待たずに順番が回ってきた。今にも飛び出しそうなハナはペットスリングの中だ。
「ロチャへようこそ!」
「こんにちは!これがギルドカードです。この子は私と契約しています。ハナ、魔力を流して」
「うん!」
ハナが張り切って魔力を流すとギルドカードがキラキラする。ドヤ顔で門番さん達を見上げるハナが可愛い。
「クマちゃんは張り切ってるね、ダンジョンがお目当てかな?」
「ダンジョン!」
「可愛いね、ロチャは初めて?」
「うん!」
「お名前は?」
「ハナ!」
「ハナちゃん、ロチャの滞在を楽しんでね」
「ありがと」
ロチャの門番さんはテイマーのスキル持ちだった。
「お2人とハナちゃんはB級だから、ここのダンジョンは制覇出来ると思うけど無理は禁物だよ」
「油断せずに楽しんでね」
「ありがと!」
お礼を言って街に入るが、ハナはペットスリングの中から手を振っている。振り返ると門番さん達も手を降ってくれていた。門番さん達に余裕があるし、きっとこの街は平和で治安も良いのだろう。




