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第316話 春の農作業

 田んぼの準備と養殖している魚たちの世話は父さんとリザに任せて、私とハナとアルバロはコットン畑や葡萄棚、茶畑の世話をすることになった。


 今日は朝から土魔法でコットン畑全体の土壌を掘り起こした。その後、昨年と同様に砂や軽石を混じりの土を混ぜ返して土壌を整えてから種をまいた。去年も行った作業なので今年は早く終わった。リズムよく葡萄畑と茶畑も回れたし、何も問題は無かった。



「もう、やることないよね」

「そうだね、しばらく放っておいても大丈夫だよ」

「1日おきくらいで様子を見にこようよ」

「そうだね、そうしようか」



 茶畑に放流した途端に走り出して見えなくなったハナを迎えに行きながら明日以降の予定をアルバロと相談した。


「明日は田んぼを手伝おうね」

「そうだね」



 マッピングスキルの地図に点滅するシロクマのアイコンに私たちが重なった。



「ハナー!」


名前を呼ぶと白いモコモコが振り返った。


「カナちゃーん!」

 嬉しそうなお顔で走ってきたので抱き止めてモフモフしてやった。


「もう終わったの?」

「そうだよ、明日は父さんたちを手伝おうね」

「うん!」


「今日はここで遊んでいく?それともお散歩ダンジョンがいい?」

「ここでカナちゃんとアルバロと遊ぶ!」

アルバロの提案にハナが大喜びだ。


「茶畑の周りは特に何もないんだけど」

「いい!一緒だからうれしい!」


…今日もハナが可愛いな。


「じゃあ一緒に走ろうか?」

「うん!」


 答えるやハナが駆け出したのでアルバロと一緒にハナを追う。こちらの世界に召喚された時に若返って10代になったし、ハイヒューマンになって身体能力が大幅に強化されたから、さほど遅れずについていくことができた。


 ハナが嬉しそうな顔で何度も振り返って私達がついてきていることを確かめて可愛い。



しばらく走るとハナがスロウダウンした。


「少し休む?」

「…うんっ」

 はあはあしながら答えるハナをアルバロが抱き上げた。


「カナはちょっと離れてて」

 アルバロから距離を取るとアルバロがアイテムボックスからテーブルセットを出してハナを座らせてくれた。


「牛乳?お水?」

「ぎゅうにゅう!」

「はいはい。アルバロは?」

「僕はお水にしておこうかな、よく走ったよね」

 いつものダンジョンのお散歩よりも本格的に走った結果、私も水しか飲みたくない。



 休憩の後はハナの気の向くまま、2時間ほど付近を散策したら満足してくれたので3人で帰ったら、今日は楽しかったとハナが夜までご機嫌だ。



「今日は楽しかったねー」

 こたつに座るアルバロに後ろから抱きつくようにぶら下がって話しかけている。アルバロも嬉しそうだ。


「アルバロも走るの早いねー」

「そう?」

「うん!」



 ぶら下がるのに飽きたのか、今度は前に回ってアルバロの胸に頭をぐりぐり押し付けている。

「カナちゃんと3人で歩くの、楽しかったねー」

「そうだね」


 ハナを撫でるアルバロの手が優しい。しばらく甘えていたら、うとうとして眠ってしまった。




 アルバロにハナを任せてハナの部屋に布団を敷いておいたら、アルバロがハナを布団に運んで寝かせてくれた。




「あのさ」

「何?」

「いつもカナとハナでお散歩に行ってるけど、これからは僕も出来るだけ一緒に行くようにするよ」

「それは嬉しいけどアルバロは仕事があるじゃん」


 アルバロは自分の世界を1人で治めているので結構忙しいのだ。


「僕はほとんど眠らなくても平気だし。それに一緒に歩いたり走ったりするだけであんなに喜ぶなら、毎日ハナを喜ばせてあげたくなっちゃうよ。カナとハナと一緒に過ごす時間は僕も楽しいし」


「…ありがとう。でも毎日の習慣になると今日みたいに甘えてくれなくなるよ」

「なんでさ」

アルバロが不満そうだ。


「当たり前じゃないから、特別だから嬉しいんだよ。毎日一緒に行くのが当たり前になったら、逆にアルバロが忙しくて一緒に行けなかった日、ハナはアルバロに対して冷たくなると思うよ」


アルバロがだんだん青ざめてきた。


「一緒に行けない日、結構あるでしょ?」

「…ある」

「アルバロの気持ちは嬉しいよ。ハナも大喜びだし。不定期で1週間か2週間に1回くらいの頻度なら今日みたいにアルバロにべったりだと思うよ」


「そうか…そうだね。カナの言う通りだと思うよ」



 アルバロは残念そうだけど、なんだかんだでアルバロは忙しい。それにハナをこんなに可愛がってくれて、泣きたくなるくらい嬉しかった。

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