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第314話 無神経な保護者たち

 ちゃぶ台に戻るとクズさんの目がハナの室内遊具に釘付けだった。


「あれは何だ?」

「ハナの遊具。ハナ、すべってみる?」

「うん!」


ハナを抱き上げてすべり台の頂上に運ぶ。



すいーーー。


ハナがうつ伏せですべった。


「もう一回すべる!」

 すべり台を逆走で駆け上がるが途中でお尻から落ちてきた。


すいーー。


「…食べすぎちゃった」

 お腹が重かったらしい。可愛いな!


「俺も滑りたい!」

 いつの間にか子狸に化けたクズさんがカカカカッとすべり台を登った。


すいーー。


 クズさんが上手にすべった。

「これは楽しいな!」



「すっっっごく可愛いぞ」

「九頭龍…」

 ノボさんと梵天様が口元を押さえてぷるぷるしていた。



 アルバロがハナとクズさんをすべり台の頂上に交代で運んで遊ばせてくれた。腹ごなしにちょうど良いようだ。


 しばらくすべり台を楽しんだ後、アルバロがブランコを増やしてくれたので2人をブランコに乗せて揺らしてやった。大人たちはハナとクズさんの可愛い姿をツマミに、さらにお酒が進んでいた。




「アルバロも九頭龍も小さくて可愛かったんだ」

「うちのカナと愛犬だった頃のハナちゃんも可愛いかったぞ」



── 嫌な予感がした。



「カナのお気に入りのぬいぐるみ、うさぎのラビちゃんだったか?それとハナのおもちゃを一緒に洗濯したらカナが必死で助けようとするんだ」


── 覚えているわ…全自動洗濯機の中でラビちゃんがグルグル回されて虐待だと思って号泣したっけ…。


「ハナはハナでお気に入りのおもちゃを一緒に洗われてギャン泣きだった。カナが取り出そうとして危ないから俺が2人を抱っこするんだが大暴れで結構痛かった」


── ごめん。


「2人とも俺を死刑執行人のように責めるんだが、やったのはおばあちゃんだ。それなのに大泣きして俺を殴って、おばあちゃんに縋って泣くんだ。納得がいかない」


── ごめん。


「洗濯が終わったら、おばあちゃんが干すために洗濯バサミでラビちゃんを耳から吊り下げたらカナがギャン泣きでボカスカ殴ってくるわ、ハナはハナで全力で噛みついてくるわ…やったのは、おばあちゃんなのに」


「ははは」

「子育てあるあるだな!」


── 騒ぐより黙っていよう。それほど恥ずかしい話じゃなくてよかった。



「小さなアルバロと九頭龍も可愛かったんだ。…そういえば九頭龍の初恋は愛と美と性を司るギリシア神話の女神のアフロディーテだったなぁ、あの頃の九頭龍は特に可愛いかった…」


子狸姿のクズさんがビクッとした。


「ほほう」

「想いを伝える方法をアルバロに相談して、2人でネックレスを作ったんだ」

「凄いじゃないか!さすが小さくても神様なんだな」

 凄い凄いと盛り上がる父さんと暗い表情のノボさんとアルバロ。嫌な予感しかしない。


「九頭龍とアルバロは、とある世界の国宝を参考にしたんだ」

「ほほう!」


「国宝、玉虫の厨子の輝きを再現すると言って2人で原材料を集めてなあ」


 カナがハナを抱き寄せてアルバロ達と距離を取った。じわじわ離れる。


「毎日のように野山を駆け回って、何をしているのかと思ったら自然死した玉虫を集めていた」


 ── 玉虫の厨子は玉虫の羽根を漆に定着させて作られたんだっけ…。



「深みがある艶やかな緑色のネックレスを贈ったらアフロディーテが悲鳴をあげて…拒否されたと思った九頭龍が号泣してしまって地獄絵図だった…」

梵天様がレモンサワーをあおる。


 子狸なクズさんがぷるぷる震えている。アルバロも恥ずかしそうだ。


「アフロディーテが震えながら、素晴らしい工芸品を再現して贈り物にしようとした幼い子供の気持ちを受け止められず、ごめんなさいと涙目だった。あいつは虫が苦手なんだ」

ノボさんがハイボールをあおる。


「悪気なんてないのは明らかだよな。綺麗なネックレスをプレゼントして喜んで欲しかったんだな…」

父さんがしみじみだ。



悪気がなくても無理だ…。


「私とハナはもう寝るね。今日はハナと2人で寝るから!おやすみ!」



カナも虫が苦手だった。

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