第313話 こたつで串揚げ
今日はノボさんとクズさんと梵天様がご飯を食べに来ている。ノボさんはハナを可愛がってくれている死神で、梵天様はアルバロとクズさんの育ての親だ。
「ほほう!豪華だな」
「ダンジョンでドロップした食材や養殖している海産物だ、美味いぞ!」
今日は卓上フライヤーで串揚げをやる。暖かい部屋でこたつにあたりながら、揚げたてを食べる。しかも飲み物は冷えたビールだ。おっさん仲間のノボさんと梵天様と父さんが楽しそうだ。
「目の前に串に刺した食材とフライヤーがあるだろう?好きなものをバッター液とパン粉につけて好みの感じに揚げてな!」
肉はアスパラベーコン、牛ヒレ、豚ヒレ、ささみ、ウインナー、ハムカツ。シーフードはエビ、サーモン、ししゃも、ホタテ、明太子。
野菜は茄子、椎茸、レンコン、オクラ、かぼちゃ、さつまいも、玉ねぎ。
この他にカマンベール、餅チーズ、うずらの卵。デザート串にオレオがあるし、合間に食べたい大根サラダやトマトサラダ、グリーンサラダはあっさりドレッシングで多めに用意した。
「揚がったらソース、タルタルソース、ポン酢で食ってくれ。ポン酢に大根おろしを入れても美味いし、塩で食っても美味いぞ」
父さんの串揚げ用ソースはみりんや醤油を少し加えてあって美味しいのだ。
「ハナはどれがいい?」
「どうしよう…」
種類が多すぎてハナが困ってしまった。アルバロとクズさんも困り顔で私を見ている。
「じゃあ私がハナの好きそうなものを揚げるから、気に入ったら食べてみようか」
「うん!」
「アルバロとクズさんはアスパラベーコンを試してみてよ、我が家の家庭菜園で収穫したアスパラにハナのお散歩ダンジョンでドロップしたベーコンだよ」
「いいね、美味しそう!」
アルバロがクズさんの分もアスパラベーコンを揚げ始めた。
もちろんハナの分は私が揚げる。最初はサーモンだ。ついでに私のアスパラベーコンも揚げる。飲み物はハナとクズさんが蜂蜜酒のソーダ割で私とアルバロはレッドアイにした。純粋なビールではないので、これならハナの近くで飲んでも嫌がられない。
一足先にクズさんとアルバロのアスパラベーコンが美味しそうにカラッと揚がった。
「うわー!美味しそう、これはソースかな!」
「美味そうだな!」
2人がふーふーせずに思いっきりかぶりついた。
「&@+#%^*;!!!!」
── そりゃあ熱いだろう。
「アルバロ!クズくん!」
可愛いハナがオロオロしている。
「ほら!魔法で口の中を冷やして!」
「!」
私のアドバイスで熱々から解放されたアルバロとクズさん。
「口の中の火傷は治癒魔法で治して」
「!」
「……熱かった……」
「ふーふーしないで食べてたからびっくりしたよ」
「美味しそうだったから…」
「次はふーふーしてね」
「そうする」
「ハナのサーモンが揚がったよ、かなり熱いから気をつけて」
「うん!」
ふーふーふーふーふーふーふーふーふーふーふーふーふーふーふーふーふーふーふーふーふーふーふーふーふーふーふーふーふーふー
アルバロとクズさんの面白い姿を見たハナが慎重に冷ましていて可愛い。反面教師になってくれた2人に感謝だ。
「冷めたら好きなソースをつけてね、一口めはタルタル、二口めはソースって感じで好きな組み合わせを探してみるのもおすすめだよ」
「うん!」
ぱくり。
「おいしー」
「熱くない?」
「うん」
続けてハナにエビや牛ヒレ、豚ヒレ、ささみ、ホタテ、アスパラベーコン、うずらの卵、さつまいも、カマンベールチーズを揚げてやる。一度にたくさん揚げておいて順番に食べればアチアチになることもないだろう。
「エビおいしー」
「よかったね」
合間に自分にも揚げる。串揚げの茄子は大好物だけど、これはアチアチになるので注意だ。
「カナちゃん!これおいしー」
「ささみが気に入った?」
「うん!これとエビと鮭とチーズもっと食べる!」
「はいはい、ささみと鮭とチーズね。ちょっと待ってね」
ハナが気に入った串を揚げてやったり、サラダを取り分けてやったり、美味しくて楽しい夕食だ。
周りを見るとリザが黙々と大量の肉を揚げている。ごくごく飲むように食べていて凄い。
ノボさんと梵天様と父さんは3人で盛り上がっている。あの3人はかなりビールが進んでいるようだ。
「あと少し食べたい」
「じゃあデザートにオレオを揚げようか、アルバロとクズさんも食べる?」
「食べる!」
自分の分も一緒に揚げると全員が慎重に冷ましている。
「これは美味いな!」
「おかわりあるよ」
「ハナ、お腹いっぱい」
「僕らはまだ食べたいから自分で揚げるよ、カナは休んで」
「ありがとう」
アルバロがクズさんのケアをしてくれたので、ハナに食べさせながら自分も食べることができたんだけど、ありがたく休ませてもらおう。
「腹いっぱいだ…」
「美味しかった」
「アルバロもクズさんも満足?」
「ああ!美味かった」
「揚げたてが美味しくて食べ過ぎだよ」
「そっか」
横を見るとリザも満腹っぽいし、父さんたち3人は食事を終えて、ちびちび摘みながらお酒を飲んでいる。ビールのほかにレモンサワーやハイボールなどをぐいぐい呑んでいて、ツマミは父さん特製の糠漬けやビーフジャーキーやナッツなどの乾き物が中心になっている。
「父さん、明太子とかツマミになりそうな串だけ残しておく?空いたお皿が邪魔そうだから」
さっさとテーブルの上を片付けてアイスペールに氷を足して本格的に呑めるようにした。
「悪いなカナ」
「いえいえ、ゆっくりしていってください」
お皿は全部リザやアルバロが食洗機に入れてくれたし、私がやったことなど、ほとんどない。実に楽しくて美味しい夕食だった。




