第310話 2人の帰宅
10日後に父さんとリザが帰ってきた。
「おかえり、あちこち回れた?」
「ああ、いい旅行だったぞ」
「アルバロさんが欲しいものもたくさんドロップしましたよ」
ハナに大歓迎され、爆舐めされた2人が顔をふきながら答える。
「これがカカオだ」
父さんが米袋並みの大きさの袋をドサっと積み上げた。
「やった!ありがとうリオ!リザ!」
アルバロが興奮しているし、ハナの丸い尻尾がぴこぴこしている。量が多すぎてくらくらしたけど、こんなに喜んでいるなら仕方ない、頑張ろう。
「それから各地で食って美味かったフルーツな」
続いてトロピカルなフルーツを取り出す。
「甘いにおい」
ハナが目をつぶってフンフンする。
「冷やしておくから後で食おうな」
「ありがとパパ」
「それから生胡椒だ」
「なまの胡椒?」
「そうだ。これを塩漬けにするぞ。食べごろまでしばらくかかるが胡椒のフレッシュな香りと塩味が楽しめるから楽しみにしててな!」
「へえ、そんなのがあるんだ」
「酒に合うんだ」
お酒が苦手なハナがちょっと嫌そうな顔になった。
「ハナちゃんにはフルーツな!」
「うん」
「2人とも疲れたでしょう?今日は私たちでご飯の支度をするよ」
「裏山で温泉につかってきたら?」
「じゃあご飯も向こうで用意しようか」
「いいのか?」
「うん、2人とも爆舐めされてたし。さっぱりしてきて」
「そうしましょうか」
「そうだな、悪いな」
「気にしないでよ、僕のお願いで出かけてもらってたんだから!」
全員で裏山温泉に移動した。
「ハナ、リザちゃんといく!」
「嬉しいです!」
ジャンプして抱きつくハナをリザがしっかり受け止めてくれた。久しぶりに会えて興奮しているハナはリザと一緒に温泉につかりにいった。
「なにを作ろうか」
「旅行で胃腸が疲れていそうだからお腹に優しいものがいいよね…海鮮しゃぶしゃぶはどうかな?」
「いいね!リザには肉も必要だよね」
「胃腸に優しいメニューだから揚げ物以外がいいよね」
「そうだね…ローストビーフでよければ僕が作るよ」
「いいね!お願いしてもいい?」
「もちろん!」
アルバロと一緒にエプロンをして調理に取り掛かる。
きのこ類は小房に分け、豆腐は食べやすい大きさに切る。長ねぎは斜め薄切り、水菜はざく切り、白菜はそぎ切りにする。
ブリ、タコ、金目鯛、ノドグロ、ホタテを薄切りにする。牡蠣は洗ってそのまま。ぼたんエビとカニは殻をむいた。ハナのためにサーモンも薄切りにした。
お鍋に昆布と水と料理酒を入れて煮立たせる。沸騰したら中火から弱火にして昆布を取りだしておく。食べる時に温め直したらしゃぶしゃぶ開始だ。
「こっちはもう出来たよ」
「お肉もいい感じ。このまま休ませておくよ」
アルバロは玉ねぎすりおろしや醤油などでタレも作ってくれた。
全部をこたつに運んで休んでいたらハナが騒々しく戻ってきた。
「お腹すいたー!」
パシーン!
ハナが後ろ足で立ち上がって襖を開ける。
駆け寄るハナを抱き止めてワシワシしていると父さんとリザも戻ってきた。
「お!海鮮しゃぶしゃぶか!」
「お肉もありますね!嬉しいです」
「さっそく食べようよ」
お鍋を火にかけるとアルバロが父さんたちに冷えたビールを注いでいる。
「もう良さそう。好きな具をしゃぶしゃぶしてね。タレはお醤油やポン酢の他にピリ辛ごまダレとレモンタレも用意したよ」
ハナにサーモンをしゃぶしゃぶしてやりながら説明したら、父さんはノドグロから食べはじめた。リザはローストビーフからだ。
「美味い!」
「たくさん食べて。締めは雑炊だよ」
「おいしー!サーモンとレモンあうー!」
「良かったね」
ハナはサーモンしゃぶしゃぶにレモンタレの組み合わせが気に入ったようだ。合間にカニやぼたんエビも勧めると喜んで食べている。
私はひと通り食べる。ブリと金目鯛とホタテが特に気に入ったので野菜やきのこ類を挟みながらリピートした。
「海鮮しゃぶしゃぶはヒラメやつぶ貝、マグロ、白子なんかも美味いぞ」
「それは贅沢だね!」
「寒いうちにまたやろう。今度は俺が用意する」
「ありがとう」
旅行の話を聞きながら海鮮しゃぶしゃぶを堪能した。
「そろそろ締めようか」
「待て」
「食べ足りない?」
「そうじゃない。あっさり過ぎる」
── 旅行で疲れた胃腸に気をつかったのに。
まさかまさかだよ!
「ニンニクと白ワインを効かせてリゾットにしよう。プチトマトも入れよう」
こってり食べたい父さんが締めをリゾットにしてくれた。せっかく気をつかったのに!と不満もあったけど父さんのリゾットは美味しかった。




