第306話 すべり台
「おいしかったー!」
ポンチキを食べ終えたハナが満足そうだ。
「良かったね。粉糖でべたべたしたお手手を浄化しようね」
ハナの両手と口のまわりを濡れタオルでぬぐってから浄化魔法をかけている間に食器やカップをアルバロが食洗機に似た魔道具にセットしてくれた。
「ねえ、使ってみようよ!」
待ちきれないアルバロがハナに迫る。
「なあに?」
すべり台の存在に気づいていないハナがポカン顔でアルバロを見上げる。
「2人で組み立てたんだよ」
アルバロがハナをすべり台を設置した壁側を向かせる。
「なにあれ?」
「すべり台」
後ろからハナの両脇に手を入れて持ち上げる。そのまますべり台まで歩いていって頂上にそっと下ろした。
「すべってごらん」
「おいで〜」
デレ顔のアルバロがすべり台の下で両手を広げている。特に怖がっている様子もないのでお尻を押してやると、すいーっとハナがすべっていった。
「上手〜!!」
ハナを受け止めたアルバロがベタ褒めだ。すべり台に上手も下手も無いと思うが、すべるハナは上から見ても可愛いかった。
「たのしー!!」
「気に入った?」
「うん!もういっかい」
今度はアルバロがハナを抱き上げてすべり台の頂上に乗せてくれたので私が下で受け止める。
すいー。
……すべるハナが可愛い。と思ったらハナの柔らかい毛皮が顔に当たった。
「はい到着」
「たのしー!もっとすべる」
「今度は自分で登ってみる?」
「うん!」
反対側に登る場所があるけど、それに気づかないハナがすべる部分を逆走で登り始めた。
必死な顔でカッカッカッと音を立てて登る姿が予想以上に可愛い。
「いくよー!」
「はーい」
頂上まで登ったハナが振り返ってすべるのでアルバロと一緒に下で待つ。
すいー。
「ハナ可愛い〜!」
「上手だよ〜」
親バカ丸出しだけどはしゃぐ気持ちをおさえられない。むちゃくちゃ可愛い。
「もういっかい!」
ハナがすべり台を逆走する姿を後ろから見守っていたら途中でハナの肉球がすべった。
すいー。
ハナがお尻から落ちてきた。普通にすべるよりも可愛い。
「もういっかい!」
今度は頂上までたどり着いて普通にすべった。
何回か頂上にたどり着けずお尻から降りてきたり普通にすべったり、ハナはすべり台を堪能した。
「はあはあしてるから少し休んで」
「ほら、どうぞ」
アルバロが美味しいミネラルウォーターをハナに渡す。
「ありがと」
この調子で毎日遊んでくれたら冬の間の運動不足を解消出来るとほくそ笑む。とはいえ今日はだいぶ動いた。
「ねえ、ブランコも試してみようよ」
「ブランコ?」
なにそれ顔のハナを抱き上げてブランコに乗せる。
「両手で両側のロープをつかんで」
ロープをつかむ手が可愛いなと思いつつ背中を押して揺らしてやる。
「えへへー」
遊ぶ姿を見られるのが嬉しいようだ。
アルバロと私はデレ顔でハナの可愛い姿を堪能した。思ったよりもハナが遊具を気に入ってくれた。
気に入ってよく遊んでくれるのは嬉しいが、遊ぶ姿を見てて!とせがまれて困る日も出てくるとは、この時は予想していなかった。




