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第302話 ドーナツ型クッション

 錬金ギルドのマルコスさんに会いに行くまで時間ができた。時間ができたので余った裏起毛の布でドーナツ型クッションを作った。おばあちゃんのミシンを出して久しぶりに触ってみたけど結構使えた。



「ハナ」

「なあに?」


 首を傾げるハナを抱き上げてドーナツ型クッションに仰向けに乗せた。ハナのお尻がクッションの穴にはまって可愛い。


「どうかな?」

「ハナに作ってくれたの?うれしー!」


 大きなクッションの穴に苦戦して、よちよちした動作で穴から抜け出したり、もう一度穴にはまったり、けっこう楽しそうだ。

「すべすべであったかいね!楽しいよ」

「気に入ってもらえて嬉しいよ」


 お尻が中心の穴にはまってもがいたり頭を突っ込んでジタバタしたり可愛く遊んでくれて、いつまででも見ていられるなと思ったらアルバロが子供の姿のクズさんと応竜ちゃんを案内してきた。



「いらっしゃい」

「おじゃまします」

「ハナはどうしたんだ?」


 焦ったハナがジタバタしながら穴から抜け出した。

「これ楽しいよ!」


「同じものを作ったから、良かったら2人も持って帰って」

 ドーナツ型クッションを2つ差し出すと狸になったクズさんと小竜になった応竜ちゃんが穴にはまってジタバタして可愛い。アルバロが笑いをこらえて震えている。



 しばらくジタバタしていた3人が穴にはまって落ち着いたので声をかけた。


「温室のフルーツでいろんなジャムを作ったし、ちょうど時期だからエピファニータルトを作ろうと思って招待したんだよ」


「ジャム?」

「カナのスイーツか!」


 1月6日のエピファニーを祝って作るジャムタルトだ。大きな丸いタルトを生地で星形に区切る。すると生地で区切られた13のパートが出来るので、そこに13種のジャムを入れて焼くのだ。



「タルト生地は作っておいたよ。区切られたところに好きなジャムを入れてね」


一つ見本を見せた。



「ジャムはこれ。乗せる前に試食をどうぞ」


 いちじく、ブルーベリー、ぶどう、梨、栗、ミルクジャム、イチゴ、アプリコット、スモモ、キウイ、柿、ラズベリー、ブラックベリー、ママレード、オレンジ、リンゴ、アンズ、マンゴー、クランベリーなどを用意した。小皿とスプーンを山ほど用意して好きに食べてもらったらちびっ子たちが大喜びだ。…大きな(アルバロ)も大喜びだ。


「これちょっと苦い」

「ハナはママレードが苦手?」

「俺も…」

「苦いよな…」

クズさんと応竜ちゃんも苦手だった。



「これ美味いな!」

「クズさんと応竜ちゃんは柿のジャムが気に入った?」

「ああ!」

「ハナはイチゴ!」

「イチゴも美味いよな!」



 全員、気に入ったジャムを13種類決めた。私が作っておいた生地にジャムを乗せるだけなので、その後の作業もスムーズだった。



「上手に乗せたね、じゃあ焼いてみようか」


 我が家のオーブンは業務用なので全員分を一度に焼ける。アルバロがハナを抱いてオーブンの前に立つ。

「見える?」

「うん」


 それを見たクズさんが大人になって小さな竜に変化した応竜ちゃんを抱いてアルバロの横に立った。


……萌える!


 喧嘩ばかりの幼馴染の片割れが少し大人になった甘酸っぱい瞬間を目撃してしまった。これは私の大好きなシチュエーションだ。大人になったクズさんが子供の応竜ちゃんを甘やかす姿も私にはご馳走だ。2人とも超可愛い…。



 オーブンの方をチラチラ見て萌え萌えしながら道具を洗った。焼きたてを食べたがるはずなので私の見本を切り分けよう。みんなが焼いたのはお土産にしてもらうのだ。



ピー!ピー!ピー!

オーブンが鳴った。


「出すよー、火傷するからみんな離れてて」


 アルバロとクズさんが離れたのでオーブンを開けると、ちょうど良い焼き色だった。取り出してケーキクーラーの上に出す。見分けがつくよう、タヌキの型、竜の型、クマの型で抜いた生地を乗せておいたので混乱もない。



「みんなが焼いたのはお土産に持って帰ってね。今日は見本を食べてみよう」


4人とも嬉しそうだ。


「まだ熱々で触れないから少し外で遊んできてくれる?」


「ええ〜」


全員不満そうだ。アルバロまで…。



「お土産にフルーツも持ってって。アルバロとハナも収穫を手伝ってあげてね」


 これは喜ばれた。4人で張り切って裏庭に向かった。こちらにも果樹園を作ってよかった。



 お茶の準備をしてアイテムボックスに入れたら少し休んだ。アイテムボックスに入れておけば時間停止なので本当に便利だ。




 少しのんびりしていると玄関の方が騒がしい。


「おかえり」

「ただいまー!」

「冷めた?」

「うん、もう食べられると思うよ」

「やったあ!」


 こたつに集まって見本を切り分けるとアルバロがお茶を淹れてくれた。こたつに集まった3人とも可愛いな。



「さあ、どうぞ」

「おいしー」

「美味い!」

「ジャムのタルトって美味いな!」




 エピファニータルトは大成功だった。4人が大量のジャムを乗せると予想してタルト生地もジャムも甘さを超控えめにしたら予想通りのジャム大盛りタルトが出来上がった。

 ハナとアルバロは朝ごはんに、クズさんと応竜ちゃんは好きに食べてくれ。



 焼きたてのエピファニータルトともぎたてフルーツ、ジャムのお土産は予想以上に喜んでもらえた。

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