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第299話 布作り

 プランプリー・ゴートの毛を確保した翌日、召喚魔法(インターネット通販)で裏起毛の布を作る機械を検索した。



「裏起毛の布を作る業務用の機械って高いね…」

「俺たちはもうそんなに現金が必要ないって話だし、パーティー資金を使っちまって構わんぞ」


 父さんとリザが『好きなものを買え』と気前がいい。この機械を買ってもパーティー資金は充分余るので買う気になってきた。


「布が出来たら錬金ギルドに登録するだろ?多少は元が取れるだろうし気にするな」

「確かにそうかも…錬金ギルドにどうやって持っていく?」


 これまで機械をそのまま持っていくことは、ほとんど無かった。例外は父さんのレーションを作るために持ち込んだ電子レンジのような見た目の魔道具くらいだ。


「こういう魔道具を作る仕組みを売れたらいいよね。スライムの防水加工が盛んなルースラゴスで防水の裏起毛の布を作れたら需要がありそうだし」

「それは雪深い地域にいいな!役立ててもらえそうだ」


「やっぱり1つ機械を買おうか。その仕組みを調べてみるね。そこから魔方陣か機械を作れるか…アルバロ、相談にのってくれる?」

「もちろんだよ!ありがとう」



「カナは賢いよな」

父さんの親バカが発動した。


「いくつか魔方陣を触ってみてパターンがあるなって分かったけど1人じゃ無理だよ」

「いやいや日本にいた頃から動画の編集とか、いろいろやってたじゃないか、天才だぞ!」


 勤務していたパン屋や製菓店はスタッフ数が少なかった。そのため接客担当も調理担当も関係なく、全員でSNS対策をしていたので父さんはいつも感心していた。

 しかし私世代からすると普通なんだ…父さんが親バカ過ぎる。それに魔方陣は“こんなこと出来たらいいな”って思いつくだけで、ほとんどアルバロに頼ってるし…。


「父さんは大げさだから…」

「カナは奥ゆかしいな!」

…こうなった父さんは止められないので無言で機械を買った。




 オーガニックコットンを栽培している、私たちがオースティンと呼んでいるエリアの休憩所を兼ねた加工小屋に機械を置くことになった。



「アルバロ、今日は付き合ってくれてありがとう」

「僕も楽しいよ」

 アルバロは今日も嫌な顔をせず一緒にオースティンに来てくれたし、寒がりだけど置いていかれたくないハナをブランケットに包んで抱っこしてくれている。軟弱なハナは頭のてっぺんと丸いお耳しか出ていない。


「じゃあ布を作ってみるね。まずはプランプリー・ゴートの毛で何か作ってみようか」

「いいね!プランプリー・ゴートの毛の品質を確かめてみたいよね!」

 アルバロも賛成なのでプランプリー・ゴートの毛を機械にセットした。


「サイズは毛布くらいでいいかな?」

「いいね!」

「いいのが出来たらハナのブランケットにしようか」

「うれしー!」

軟弱なハナが顔だけ出した。



 けっこうな勢いで機械が動き出すので全員で見てしまう。


「すぐに出来上がりそうだね!」

「うん…アルバロ分かる?同じ仕組みを作れるかな?」

「うーーーーん。どういう状態が1番か、もう少し考えさせて」



ガコガコガコ…



…… チーン!


「出来た!」


 ブランケットを取り出して広げてみた…いい!



「すっごく滑らかな手触り!触ってみて」


 アルバロの手がブランケットに伸びる。


「…いいね!」

「北部に出かけた甲斐があるよね、ハナ」

 ふわっと広げてハナに声をかけると飛び込んできた。


「やわやわ〜」


「気に入った?」

「うん!」

「じゃあ、これはハナのブランケットにしようね」

「うれしー!ありがと」


「裏起毛の布も加工しやすいロール状でコットン部分の厚さを変えて作ってみよう」

 プランプリー・ゴートのブランケットに包まれたハナをアルバロに渡してコットン・ボールとプランプリー・ゴートの毛をセットした。



 コットン部分をデニムくらい厚いものと、もっと薄いものと3段階で作った。


「どれもいいよね」

「いったん持ち帰ってリオたちにも見てもらおうよ」


 プランプリー・ゴートのブランケットに包まれて気持ちよさそうに眠ってしまったハナを連れて秘境の我が家に帰った。



「これ好き〜」

 自宅に戻るとハナはプランプリー・ゴートのブランケットに包まれながらコタツにあたるというダメ熊っぷりだ。アルバロは父さんとリザを呼びに行ってくれた。



「カナ」

「いらっしゃい、父さんとリザ」

「ハナちゃんが、かぶっているやつか?」

「そうだよ、触ってみて」


 父さんとリザがハナが包まれているブランケットに手を伸ばす。


「!」

「凄いな」

 2人もプランプリー・ゴートの毛の手触りが気に入ったようだ。


「小さな群れだったけど、毛はまだたくさん残っているの。2人に何がいいか聞いてから加工しようと思って」


「ブランケット、いいですね…」

 リザの撫で撫でが止まらない。


「リザはブランケットにする?服も作れるよ」

「ブランケットがいいです!」

「俺もだ。頼めるか?」

「オッケー!大人サイズで作るよ」



 翌日、プランプリー・ゴートのブランケットで包んだハナを連れてオースティンに行った。私とアルバロもブランケットが気に入ったので、みんなの分のブランケットを作った。滑らかで保温性が抜群のブランケットに家族全員が大満足だった。

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