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第30話 マヤの宿

「査定に時間がかかると思うんだけど」

「全部は要らないだろ?必要なだけ見積もってくれ」

「出直すから僕らはそこらを歩いてくるよ」


「ハナ、街をみたい!」

「街ではリードするよ」

「うん!」

 愛犬時代からの習慣なので街中でのリードを嫌がらないのは助かる。


「預かり証を書くから待ってくれ」


 カミロさんとアントニアさんを呼んで3人がかりで預かり証を書いてくれた。その間にハナにハーネスを装着させる。愛犬時代のようにハーネスを出すと前脚を通すところをひょいっと跨いでくれるので簡単に装着出来て助かる。

「きつくない?」

「大丈夫!」



「預かり証だ。今日もう一度顔を出してもらえるか?宿は取ったのか?」

「まだだ。おすすめはあるか?」

「女性が2人いるからマヤの宿がいいんじゃないか、主人のマヤが女性なんで男だけのパーティは泊めない宿だ」

「そこにするか」


ギルドマスターが地図を書いてくれた。


「ありがとう助かるよ」

「これくらいは普通だろ。ハナちゃん、気をつけてな」

ギルドマスターは動物好きらしい。笑顔で手を振ってくれた。



外に出ると賑やかだった。

「活気があるね」

「そうだな、まず宿を取っちまうか」


 地図を見ながらメインストリートを歩いていると屋台村のような広場があった。隣のエリアは店じまい済みの屋台が並んでいる。


「あっちのエリアは朝市だと思うよ。明日の朝行ってみようか」

「いいな!」

次の小道を左に曲がって3件目、棍棒を持った女性の看板が目印だ。


「ごめんくださーい」

フロントで奥に向かって声をはると奥から女性が出てきた。


「泊まりかい?」

「はい、4人とこの子も大丈夫ですか?」

「いま空いているのは1部屋だけなんだ。大きめの部屋で4人一緒になっても大丈夫なら。ベッドは4つあるよ。1部屋4人の素泊まりで1泊16,000シル。朝食は別料金で1人1食500シル、夕食は1人800シル。夕食でお酒を呑んだり定食以外のメニューを注文するなら別料金だよ」

「それでいいです。食事は屋台を試してみたいので素泊まりで2泊お願いします」

 宿をとって魔法陣で我が家に帰るから部屋の広さなどは問題ない。


「カナちゃん抱っこして」

 フロントが見えないハナに抱っこをせがまれた。

「見える?」

「うん」


「可愛いね、この子も女の子?」

「はい、女の子です。可愛いんです」

ハナが私にスリスリしてくる。ものすごく可愛い。


「じゃあ宿帳に記入を頼むよ」

「父さん書いて」

 両手がハナで塞がっているので父さんに頼んだ。支払い担当はアルバロだ。


「はい32,000シルちょうどだね。この宿帳の受領欄にあたしのサインで前金を受け取ったという印だよ。部屋に案内するね」


 部屋は2階だった。ギルドマスターの言っていたように女性が経営する女性向けの宿ってことできれいだし小物も北欧っぽくて素敵だ。


「カーテンもベッドカバーも素敵ですね!」

「あたしは冒険者だったんだ。結構強かったんだけど中には宿で苦労する女性冒険者や旅人もいてね、引退して清潔で安全な宿をはじめたんだ。これが鍵、ゆっくりしてっておくれ」


 部屋は清潔できれいだった。ハナが部屋中をチェックして私のところに戻ってきた。


「じゃあ街をぶらぶらするか。軽く屋台でつまんで味のレベルをチェックしよう、その後でギルドに顔を出す。屋台のチェックで大丈夫そうなら今日の晩飯は屋台、ダメだったら家に帰ってメシだな」



「カナちゃん早く!」

 ハナに急かされてお肉の屋台に向かって小走りだ。おいしい匂いがするらしい。


「ここ!」


 串に刺さった肉が香ばしい匂いをさせている。

「いらっしゃい!いくつだい?」

「夕食の前だから1つだけね、このお皿に入れてくれる?」

「あいよ、熱いから気をつけてな」


 アルバロが支払って父さんが5等分に切り分けてインベントリからフォークを出す。1人1切れだ。ハナも上手にフォークを使って食べている。


「おいしー」

「うん、美味しいね」

「これはホーンラビットの肉ですね」

ハナとアルバロとリザは無邪気に味わう。


「…塩の加減、大丈夫だな」

「本当だ…」

私と父さんは複雑な心境だった。



 他にも何件か試した。口には出さなかったけれど竜人族が飯マズなだけで世間一般の食事は普通レベルだと分かった。普通に美味しい。

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