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第291話 クリスマス

「ハナ、そろそろ今日のアドベントカレンダーを開けようか」

「うん!」


 アルバロとハナが毎日10時になるとアドベントカレンダーを開けてチョコを食べるのでお茶を淹れてやるのだが今日はちょっと違った。


「2人ともちょっと待って」

「なあに?」


「今日のはパッケージにホットチョコレートボムって書いてある」

「チョコじゃないの?」


「それをカップに入れて上からホットミルクを注ぐの。ぐるっと混ぜるとホットチョコレートになるよ」

「ミルク!」

 ハナが尻尾をぴこぴこさせながら私の足にしがみついてくる。ハナをぶら下げたままホットミルクを作っていたらアルバロがハナを抱き上げてくれた。


 2人のカップにホットミルクを注いでやった。ハナの分が私が混ぜる。

「なにかでてきた!」


「マシュマロが入っていたね、どうぞ」

「ありがと!」

 チョコエッグのように中が空洞で小さなマシュマロが入っていた。浮かんだマシュマロが溶けないうちにハナにカップを渡してやると両手でカップを持って可愛く飲む。



「おいしー」

「僕も好き」


「気に入った?」

「うん」

「チョコレートも好きだけど、こういうのも良いね」

「そっか」

 2人が喜んでくれて良かった。ホットチョコレートはお腹に溜まるので今日はお昼を少し遅らせよう。




「今年のクリスマスはクズさんと応竜ちゃん達を招待するんだよね」

「ハナ楽しみ!」

「ありがとう、梵天様と大黒様まで招待してくれて」

「クズさんと応竜ちゃんの保護者だもんね。アルバロの家族みたいなものだし」


 今年のクリスマスはお客様をお迎えするので去年よりも早めに準備をする予定だ。前もって少しずつご馳走やスイーツを作っている。





 クリスマス当日は朝早くから父さんとリザとアルバロが料理している。ハナと私はいつもの時間に起きて掃除と洗濯を終えた。


「カナちゃん、ケーキ作るの?」

ハナの期待に満ちた顔が可愛い。


「そうだよ」

「ハナみてる!」

「じゃあ、ここに座っててくれる」

「うん」

 しがみつくハナを沢山撫でてから抱き上げて椅子に座らせて手を洗う。


 焼くだけの状態でアイテムボックスに入れておいたものを次々とオーブンに入れてゆく。


 去年も作ったシュトレンはバターたっぷりの生地に洋酒に漬けたドライフルーツとナッツを混ぜ込んだ。シュトレンはクリスマスに向けて少しずつ食べ進めるのだが今年はアドベントカレンダーのチョコレートがあったので焼かなかった。食べるのはクリスマス後でもいいやと適当に考えている。小さく焼いてお土産に持って帰ってもらう。


 シュトレンと一緒にパネットーネをオーブンに入れた。今年もマロングラッセ入りだ。これはハナが待てないだろうからお昼に父さん達と一緒に食べる。これもクズさんたちにお土産で渡すつもりだ。



 去年のクリスマスケーキはビュッシュ・ド・ノエルだったけど今年は普通に苺のケーキを作る。スポンジは焼いてあるのでホイップを泡立てて温室の苺をたっぷり挟む。苺でサンタを作ればクリスマスっぽい


 形の良い苺を選り分けてヘタを切り落とす。苺のヘタから2/3くらいでカットする。切り口にホイップクリームを絞って1/3の苺を乗せたらホイップを絞って帽子を形作る。チョコレートペンで顔を描いたら出来上がり。苺サンタを量産した。


「カナちゃん!食べたい」

「はいはい」

 待てないハナのために苺サンタを3つほど小皿に乗せてやる。


「おいしー」

「冬でも温室の苺は甘くて美味しいよね」


 つまみ食いを挟みながら苺のケーキを仕上げてシュトレンとパネットーネも焼き上げた。


「ケーキ作りはおしまい。お昼の支度をして父さん達と一緒にご飯にしよう」

「うん!」


 お昼は魚と野菜の黒酢あんかけ定食にした。夜のご馳走が重いので昼は和食にしたが、アイテムボックスから唐揚げを多めに出したのでリザも喜んでくれた。デザートにマロングラッセ入りのパネットーネを1切れ付けたらハナも大喜びだった。



「父さん達は順調?」

「ああ。約束の時間までに全部出来るぞ。カナはハナちゃんと一緒にお散歩に行ってくると良い。夜はご馳走だからお腹を空かせておけ」

「やったあ」


 ハナが機嫌良く四つ足スキップでお散歩ダンジョンに行ってくれたので休憩を挟みながらいつもより多く運動して帰った。




「ただいまー!いいにおい」

 玄関で手足を浄化するとハナがキッチンにすっ飛んでいった。



「おかえりハナちゃん。今年もメインはローストビーフとローストチキンとクリスマスハムな!今日はラザニアもあるぞ」

「うれしー」

 お客様をお迎えするので品数を増やしてくれたようだ。ハナの尻尾がぴこぴこしている。


「ハナ、一緒にテーブルセッティングしようよ」

「うん!」



 ハナと一緒にテーブルクロスやテーブルランナー、お皿を選んでカトラリーを並べて花を飾ると特別な雰囲気が出てきた。

「きれいねー」

「今日は特別だからね」


「クズ君と応ちゃん早く来ないかなー」

 そわそわするハナを抱っこして撫でているとクズさん達が来たのでアルバロと一緒に出迎えた。ハナは走っていった。



「待ってたー!」

「招待ありがとう」

「楽しみだったんだ!」

 梵天様と大黒様が一緒なせいかクズさんが子供の姿だった。同じく子供な応竜ちゃんと2人でハナを受け止めてくれていた。


「いらっしゃい、ハナを抱き止めてくれてありがとう」



クズさん達を案内すると歓声があがった。


「すごいご馳走だ!」

「肉!」

「ハナお腹すいたー」

 まとわりつくチビっ子たちを宥めながら慌ただしく飲み物やご馳走を取り分けて乾杯した。



「おいしー」

「この肉うまい!」

「うまー」


「たくさん食ってってな!ほらリザも」

 チビっ子たちの食べっぷりを見て満足そうな父さんがリザにおかわりの肉を盛り付ける。



「大黒様と梵天様、お酒のおかわりはいかがですか?シャンパンもワインもたくさんありますからね」

「ありがとう」

「このワインはアルバロの世界のものだね」

「そうだよ、僕もカナ達と一緒に葡萄から育てて醸造したんだ」


「とても美味しいワインだね」

「ふふっ、そう?」

「このシードルもいいね」

「それもカナ達と一緒にりんごから育てたんだから!」


 アルバロと梵天様達の会話が弾んでいる。図らずも育ての親に仕事の成果をみてもらう機会になり、アルバロにとっても嬉しい日になったようだ。思わず父さんと目を合わせてしまった。




 ハナもアルバロも嬉しそうでご招待して良かった。料理のおかわりも父さん達がたくさん用意してくれたし、お土産のスイーツとお酒もたっぷり用意してある。父さんと私の目論見通りアルバロと神様達を腹パンにしてやった。

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