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第290話 ソーセージロール

 床暖房とセントラルヒーティングが導入され、ハナが家の中を元気よく歩き回るようになった。



「そろそろ来るかな!」

「そうだね、約束した時間になるね」

 ハナが足元ではしゃいでいる。今日はクズさんと応竜ちゃんが来る日なのだ。買っておいたアドベントカレンダーを渡すつもりだけど特に何も言わずに招待した。



「ハナー!」


「来た!」

 アルバロに呼ばれたハナが玄関に向かって駆けてゆく。2人揃って来たようだ。



アルバロが1人で戻って来た。


「みんなで出かけたよ」

「ハナも?」

「うん。九頭龍と応竜の勢いに飲まれて一緒に走って出かけたよ。外は寒いって気づいたら帰って来るんじゃない」

「アホ可愛いよねえ」


 あんなに寒がっていたのに元気よく3人で外で追いかけっこをするようだ。



「それよりカナ、今日はソーセージロールを作るって言ってたよね」

「うん。パン屋勤務時代に人気の商品だったんだよね。特に子供人気が高かったから3人に気に入ってもらえると思うの」

「僕も好きなんだ」

「そっか」


 ── アルバロにも喜んでもらえるなら大成功だ。



 下拵えは出来ているしアルバロが手伝ってくれるというのでたくさん焼く。9割はリザのおやつになる見込みだ。


「私が勤務していたパン屋はパン生地で巻いて焼いていたんだ。…こんな感じ」

「オッケー」

 1つやってみせるとアルバロが手早くたくさん巻いてくれるので、どんどん焼く。


「今日はイギリスの有名店から召喚もするよ」

「イギリス?」

「グレッグス(Greggs)っていうイギリスのベーカリーチェーンの看板商品なんだ。グレッグスのソーセージロールは1週間で200万個売れたことがあるんだって」

「それは凄いね!」


「フランスの製菓学校で学んでいた頃に週末旅行みたいな感じでイギリスに行ってね、その時に食べたよ。青い看板が素敵だったな、パン生地じゃなくてパイ皮で包まれていたんだよね」

「いいシチュエーションだね。それは最高に美味しかったでしょ?」

「普通に美味しかったよ」


アルバロの眉間に皺が寄った。


「普通なの?美味しいの?」

「普通に美味しい。想像通りの美味しいソーセージロールだったよ」

「そういう感じか〜」

「美味しいソーセージロールは美味しいソーセージロールだもん。今日はアメリカンドッグも揚げるよ」

「やったね!それも僕の大好物だよ。ちょっと甘い生地がソーセージに合うんだよね〜」



 リザの食欲に負けないよう山ほど焼いて揚げて召喚した頃、玄関の方が騒がしくなった。


「ただいまー」

「いいにおい!」

「腹減ったー」


「おかえり、今日も追いかけっこしたの?」

「ああ!」

「楽しかったぞ」

「おいしいにおい!」


「はいはい、おやつにしようね。ハナは父さんとリザを呼んできてくれる?」

「うん!」


「クズさんと応ちゃんは人型になって手を洗ってね」

「ああ!」

「分かった!」



 大皿に山ほど積み上げて飲み物が揃ったところに父さんとリザがやってきた。


「全部ソーセージロールだよ、ふわふわのパン生地やパイ生地で包んだの、それとアメリカンドッグの3種類。お好みでケチャップとマスタードをどうぞ」


「ソーセージですね!嬉しいです」

 予想通りリザにも喜んでもらえた。山ほど作ったから安心して食べてくれ。

「たくさん作ったからお腹いっぱい食べて!」


みんな揃っていただきます。


「ハナは全種類?」

「うん!ケチャップとマスタードして!」

 ハナのために全種類を3等分にして真ん中の美味しい部分をお皿に乗せてやる。両端は私が食べる。



「おいしー!」

「美味しいです」

 ハナとリザがハモった。クズさんと応竜ちゃんは黙々と食べている。



「ハナ揚げたやつが好き」

「甘い生地と合いますよね、パイ皮のもパン生地のも美味しいです」

 ハナはアメリカンドッグが気に入ってリザは全部好きだと言う。



*********


「美味かった!」

「焼きたてっていいな!」


 たくさん食べてくれたクズさんと応竜ちゃんも満足そうだ。少し早くお腹いっぱいになったハナは紅茶を飲んでいる…カワイイ。



「みんなお腹いっぱいになった?」

「はい」

9割を完食したリザが満腹顔だ。


「そっか、良かった。これは私からみんなに。アドベントカレンダーだよ」

ハナ、クズさん、応竜ちゃん、アルバロに渡す。


「リザには別に用意してあるから家でな!カナが手伝ってくれたんだぞ」

「アドベントカレンダーが何か分かりませんがありがとうございます」

 家に帰ってから喜んでくれ。素直なリザが喜ぶ姿は可愛いだろう。



「カナちゃん。これ、なあに?」

「クリスマスまで1日ずつカウントダウンするカレンダーだよ。ここが今日の日付、今日の窓を開けてごらん」


 可愛い熊ハンドでめりめりっと開けるとチョコレートの包みが出てきた。


「チョコ!」

「チョコだ!」

クズさんと応竜ちゃんとアルバロも大喜びだ。


「1日1個ね。明日になったら明日の窓を開けるの」

「うれしー!」

「サンキュー!カナ」

「ありがとう」

 ハナがクズさんと応竜ちゃんと一緒に喜んでいる。チョコに執着しないリザは冷静だ。帰宅してリザ用のアドベントカレンダーの中身が肉だと知って驚いてくれ。




「………」

アルバロが無言で俯いている。怪しい。


「アルバロはどうしたの?」

「残念なことにソーセージロールでお腹いっぱいなんだよ…」


そんなことか。


「とりあえずインベントリに入れておいたら?お腹が空いた時に食べればいいんじゃない」




 この嬉しい雰囲気の中で美味しく食べたかったらしい。ハナとクズさんと応竜ちゃんは素直にインベントリに入れたのに。大人のアルバロから、カナは分かっていないと文句を言われた。

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