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第288話 温室のフルーツ

「おーいカナー」


父さんとリザが遊びに来た。

「いらっしゃい」


「パパ!リザちゃん!」

 大歓迎のハナが2人の足元で飛び跳ねている。リザに抱っこされたハナの頭を父さんが撫でるとハナの顔が嬉しそうにとろける。



「温室のフルーツな、俺たちはそんなに食わないから持ってきたぞ」

「うちでも食べきれない量だよね」

「そうだな」


そんな量を持ってこられても。



「カナちゃん何つくるの?」

 ハナが立ち上がって抱きついてきた。今日もハナが可愛い。ハナが喜ぶものを作らなければ。


「うーーん。じゃあ、いつでもスイーツを作れるように全種類を少しずつアイテムボックスに保存しておこうか」

「うん!」


「あとはジャムを作るよ」

「なんのジャム?」

「いちじく、ブルーベリー、ぶどう、梨、栗はどう?」

「栗!」

ハナの丸い尻尾がぴこぴこして可愛い。


「父さんたちにもお裾分けするからね。それでも余る分は売ろうよ」

「そうだな。冬に食糧不足になりやすい地域を定期的に回るか」

「野菜とフルーツは喜んでもらえそうだね」

「冬だしな」

今年の冬の予定が決まった。



 父さんとリザとハナが遊ぶのを横目で見つつ銅製のお鍋を5個買った。



 皮をむいてカットしたいちじく、ブルーベリー、ぶどう、梨を砂糖と一緒に銅鍋に入れて軽く混ぜ合わせたら水分が出るまで置いておく。その間に栗ジャムだ。

 栗ジャムはたっぷりの水で柔らかくなるまで茹でる。30分くらいでちょうど良くなったのでザルにあげておく。


 このタイミングで他の鍋を見ると水分が出ていたのでアルバロとお鍋を2つずつ手分けして火にかける。沸騰して灰汁が出てきたら取り除く。焦げないように混ぜながら煮つめたら出来上がり。


 フルーツのジャムがひと段落したので栗ジャムに戻る。ザルにあげておいた栗を銅鍋に入れて砂糖とお湯を加えて火にかける。煮立ってきたら木べらで混ぜながら煮詰める。大きな栗を残しつつ半分くらいの栗を木べらで潰した。混ぜた時に鍋底に筋が残るくらいに煮詰めれば完成だ。



「おいしいにおい…」

 さっきまで父さんたちと遊んでいたハナが足元でフンフンしていた。あまりにも可愛いのでもっと喜ばせてやりたくなった。


「ハナ、ミルクジャムも作ろうか」

「ミルクのジャム!?」

「そうだよ」

「うれしー!つくって」



「ミルクジャムは牛乳、生クリーム、グラニュー糖をお鍋に入れてヘラで混ぜながら弱火にかけるの。煮立たせないように1時間以上ゆっくりと加熱するだけなんだけどアルバロに任せてもいい?」

「いいけどカナは?」


「私はスコーンを焼くね、ジャムが出来たらすぐに食べたいんでしょう?」

「うん!」

ハナとアルバロがシンクロした。


「焼きたてスコーンに作りたてのジャムか、いいね!こっちは任せてよ」

「1時間以上かき混ぜ続けてね。色が濃くなって、とろみがついたら出来上がりだから」

「オッケー」



 興奮したハナを父さんとリザに任せてアルバロと一緒に調理した。


 スコーンの生地をオーブンに入れてもまだミルクジャムの完成まで時間があるのでもう一品作ることにした。


「トーストしてジャムとバターを塗るの?」

「ふふふ、今日は違うんだ。PB&Jを作るよ」

「なにそれ」

「ずっと前に観た映画に出てくるの。確か“アンフィニッシュド・ライフ”っていうタイトルだったと思うんだけど、打ち解けられないお爺ちゃんが孫娘のために作った食べ物なんだ。この孫娘がいつも気を張ってていじらしくて好きなんだよね」


 日本で劇場未公開だったのは残念だった。私は孫娘が登場する場面でおいおい泣いたのに、家で一緒に観た父さんが『そんなに泣く場面じゃないだろ』と言って喧嘩になった。



 少し前に焼いたパン・ド・ミーをスライスして1枚に甘くないピーナッツバターを塗る。もう1枚に作りたてのジャムを塗る。2枚を合わせて出来上がり、簡単だ。


「ピーナッツバター&ジェリーの略でPB&Jね。映画ではぶどうジャムだったような気がする…うろ覚えだけど」

 今日はブルーベリーとぶどう、2種類のPB&Jを作った。そのタイミングでスコーンも焼きあがったのでオーブンから出してみると層が腹割れして大成功だ。


 喋りながらアルバロの鍋をのぞくといい感じだった。

「ミルクジャムもいいよ!」

「じゃあ火を止めるね」

 ジャムを保存容器に移してお茶の準備が出来た。ハナのお腹も準備万端のようだ。



「じゃあ食べようか」

 PB&Jはハナに合わせて小さくカットした。スコーンもハナ用は小さく焼いた。


「スコーンは半分に割ってジャムとクロテッドクリームを乗せて食べると美味しいよ。ハナはどのジャムを乗せる?」

「栗!いちじくものせて!」

「はいはい」

 スコーンを割ってジャムとクロテッドクリームを乗せるところまでは私がやる。割った半分に栗ジャム、もう半分にいちじくジャムとクロテッドクリームを乗せた。


「さあ、どうぞ。ジャムとクロテッドクリームは多めが美味しいよ」

「ありがと!」


 ハナは予想通り栗ジャムを乗せたスコーンを最初に手に取った。


「おいしー」

「気に入った?」

「うん!」



甘さもちょうど良くて好評だった。

「父さんとリザはこれを持ち帰りしてね」

「ありがとうカナさん」

「これくらいの量は丁度いいな」

 どのジャムも2人で3回分くらいの量を詰めた。我が家の場合、ジャムは大瓶だと冷蔵庫の中で忘れ去られてしまうことがあるのだ。


「今回は同じサイズの小さめな保存容器に詰めたんだ。足りなくなったら取りにきてね、気に入ったのがあれば取り分けておくから」

「サンキュー」



 ハナはミルクジャムを明日の朝ごはんで食べると言う。うちのハナちゃんは自分の適量を分かっていて今日も良い子で可愛い。

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