第285話 志那都比古さんからのお礼
「これはちょっとしたお礼だ」
志那都比古さんが小瓶をもってきてくれた。スイーツのレシピを教えたお礼らしい。
「これはなんですか?」
シンプルな装飾の小瓶で中の液体は透明だ。
「恋人たちのエッセンスだ」
「昼間っから18禁はちょっと…」
ハナに説明出来ないものを持ってくるなら、こっそりしてくれ。
「そう言わず」
「ハナの前で説明出来ますか?」
「出来るぞ」
──出来るのか。
「これは人型から獣耳と尻尾付きに変身できるエッセンスだ。飲み物に2〜3滴たらして飲むといい。個人差があるが20時間〜24時間くらい効果が持つ」
「へえー!!」
アルティオちゃんみたいに変身できるのか!ちょっといいかも。でもただの変身グッズが恋人たちのエッセンスって…。
「たまにだが、こっそりカーリーの飲み物に混ぜるんだ。事前の了承無しで変化させるとちょっと怒るんだが、子猫が怒っているようでそれもまた可愛い」
恋人たちのエッセンスという表現は大袈裟だった。志那都比古さんめ、お土産を渡すついでに惚気たな。
使う人次第でパーティーグッズにもなれば怪しいものにもなるってことか。
可愛いカーリーさんについてさんざん惚気て気が済んだ志那都比古さんが帰っていった。
「アルバロは飲んだことある?」
「子供の頃に試したことはあるよ。耳と尻尾を動かせるのが楽しかったな」
「へえー!仮装って感じかと思ったら本格的なんだね」
「カナちゃん飲んでみて!」
「ハナとお揃いになるかな〜?」
紅茶に2滴たらして飲んだ。
「30分くらいで完全に変身するよ」
「ちょっと楽しみ!」
── 紅茶を飲み干した10分後
「……にゃあ〜」
カナは猫になった。どこから見ても本物の猫に見える。
「カナちゃん、かわいー!」
ハナにぎゅっと抱っこされた。
モフモフのハナに抱っこされてみたいという夢が叶ってしまった。
「ハナがふわふわにゃ〜」
喋れるけど微妙だった。姿が完全に猫だし語尾も猫だ。でも嬉しい。聞いてた状態と違うけど嬉しいので気にせずハナにすりすりした。
「カナちゃん♡」
「ハにゃ〜」
猫の姿でハナとイチャイチャしていたら慌ててどこかに出かけたアルバロが焦りながら帰ってきた。
「カナ!体調は?どこも悪くない!?」
「平気にゃ」
「シモン!どう?」
アルバロが連れて帰ったエリートサラリーマンのような見た目の人に鑑定された。
「神格の高い神々にも効果が出るような強いエッセンスを眷属になって間もないカナさんが接種したので効きすぎたようですね」
「ああ…そんな……カナは元に戻る?重大な副作用はない?」
「副反応は無さそうです。眷属が飲んでも20時間〜24時間ほどで無効になります」
「そっか。そこは僕らが摂取した時と同じなんだ」
安堵したアルバロがハナごとカナを抱き上げる。
「副作用はありません。24時間…遅くとも50時間もすれば影響は完全に消えますよ」
「良かった…」
アルバロがハナと私をきつく抱きしめる。
──翌日。
「いやあ、びっくりだったね!」
前日、猫の姿で父さんとリザにも散々モフられたけど夜が明けてみれば元通りだった。
「ちょっと猫耳には興味あるんだよね」
「……」
アルバロは心配そうだけど大丈夫だと思う。
「次は少量で試してみようかな!」
その後、1リットルに1滴垂らしたものを50ccだけ摂取すると15時間くらいケモ耳とケモ尻尾付きに変化出来ると分かった。
もちろん父さんとリザに半分わけた。父さんは虎っぽい耳と尻尾が生えてムキムキだ。なんとかっていう父さんが好きなゲームのキャラに似ていると楽しそうだった。
リザは漫画っぽい可愛いコウモリになって飛び回っていた。ドラゴン化した時も飛べるじゃんと思ったけど大きな身体をもてあますことが多く、コウモリになって父さんの肩に乗れるのが嬉しいらしい。すっごく甘えてて可愛かった。
私とアルバロはハナのリクエストに応えてたまに変化している。変化した私たちの尻尾に戯れるハナは可愛い。




