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第283話 カーリーさんと志那都比古さん

「スイートポテトとかぼちゃプリンの作り方を教えてもらえないか」


 戦いの女神、カーリーさんと風神の志那都比古しなつひこさんが訪ねてきた。



「この間、差し入れてくれたスイートポテトとかぼちゃプリンをカーリーが気に入ってね。たくさん作って食べさせてやりたいんだ」


 秋なので収穫したかぼちゃとさつまいもでスイーツを作ってお世話になった神様たちに差し入れした。

作れるようになりたいのは志那都比古しなつひこさんで、食べるのはちょっと脳筋なカーリーさんらしい。


「2人は付き合ってるんだよ。もう600年くらいになるっけ?」


 もしかして…と思ったらアルバロが説明してくれた。



「活動的で素直な性格でボーイッシュなカーリーは私のタイプなんだ。付き合うのをめんどくさがって逃げ回るカーリーも可愛らしかったよ」

 嬉しそうに馴れ初めを教えてくれた。志那都比古しなつひこさんの猛アタックでお付き合いが始まったらしい。



「じゃあさっそく作ってみましょうか」

 カーリーさんとハナは見学だ。カーリーさんに抱っこされたハナがご機嫌で可愛い。



「スイートポテトから始めましょうか。焼き芋で作ります。まずは焼き芋を作るところから始めますよ」

「何時間もかかりそうだな…」

「時短できるんですよ」


「ねっとり甘い品種の安納芋をよく洗って濡らしたキッチンペーパーで包んだら、さらにラップで包みます」


志那都比古さんが綺麗に包んだ。


「500Wで2分。続いて150〜200Wの低温、または解凍モードで10分くらい。今日のさつまいもの大きさなら9分で一度開けてみましょう。足りなそうだったら1分ずつ追加で温めます」


「……レンチン?」


めちゃくちゃ疑われている。


「そうです」

「レンジで温めても焼き芋のようにはならんだろう」

「そこそこ美味しくなるんですよ〜」

「いやいやいや!」

全力で否定された。


「最初の2分で全体の温度を65度から70度くらいに上げます。この65度~70度という温度帯はさつまいもに含まれるβ‐アミラーゼという酵素が活発になる温度なのです」


「それが活発になると良いことがあるのか?」


「β‐アミラーゼの働きで、でんぷんが甘く変化します。2回目の加熱の時にワット数を低くすることで最適な温度帯65度〜70度をキープできるのです」


「ほお〜!」


「電子レンジで一気に加熱するとイマイチなのは酵素のβ‐アミラーゼが働きにくい温度だかららしいです」

 テレビで観て真似したら、そこそこ美味しくできた方法だ。


「分かりやすい説明だ!納得したぞ」

 電子レンジの前で待機していた志那都比古しなつひこさんが2回目の加熱をセットする間にアルバロがお湯を沸かしてくれた。



チーン!


「開けてみましょうか」

 中を開いて切ってみると美味しそうにチンされていた。


……ハナとカーリーさんの視線を感じる。視線が強すぎる。


「カナ、お茶の準備はできてるよ」

「ありがとうアルバロ。じゃあこれは試食してみましょうか」


「やったあ!」

ハナとカーリーさんが大喜びだ。


 1本をカットして小皿に乗せて配る。アルバロのお茶もタイミングぴったりだ


「いただきまーす!」

ハナが可愛くぱくん。


「甘くておいしー」

「美味しいな」

 ハナもカーリーさんも気に入ってくれたようだ。


「本当に美味いな…電子レンジで温めたとは思えない」

 志那都比古しなつひこさんもびっくりだ。


「でしょう〜。じっくり焼くのが1番美味しいので時間がある時は焼き芋を作ってくださいね。じゃあ同じ手順でレンチンしていきますよ」


 レンチン焼き芋の中身を裏ごしして滑らかになったら砂糖、バター、生クリーム、卵黄を入れてよく混ぜる。



 志那都比古しなつひこさんが迷いなく作業を進める。本当に手際が良いな


「形を整えたら表面に卵黄を塗って、予熱しておいたオーブンで焼きます。焼けたら冷まします」



次はかぼちゃプリン。

「まずはカラメルソースを作りますよ」

計量した砂糖と水と熱湯を準備する。


「砂糖と水を入れ火にかけます。カラメル色になるまで煮詰めたら火から下ろして熱湯を入れて馴染ませたら固まらないうちに型に流し入れます」

「分かった」


 やはり志那都比古しなつひこさんは優秀だった。一度説明したら上手にカラメルソースを作った。


「かぼちゃは皮と種とワタを取って火が通りやすいように薄く小さくカットします。次にカットしたかぼちゃを柔らかくなるまで蒸します。蒸したかぼちゃの粗熱が取れたら裏漉しします」


 かぼちゃをカットする手際も良かった。普段から料理をしている人っぽい。


 裏ごししている間にスイートポテトが焼けたようだ。アルバロが取り出してくれた。



「裏ごししたかぼちゃに砂糖を加えてよく混ぜます。別のボウルに牛乳と卵を加えて混ぜます。よく混ざったら濾します。濾した牛乳と卵を混ぜたものを少しずつ裏ごししたかぼちゃに混ぜます。一度に混ぜずに少しずつ混ぜると滑らかになりますよ」


綺麗に混ざった。


「カラメルを入れた型にかぼちゃのプリン液を流し入れたら蒸し焼きにします」



「蒸し焼きにも時間がかかるし、冷ました方が美味しいからカーリーはハナちゃんを連れて散歩に行ってきたらどうだ?ハナちゃん、私の拠点の近くに秋の麒麟草なんかが咲いてて見ごろだぞ」


「ハナ行きたい!」

「じゃあ一緒に走ろうか」

「うん!」


 待ちきれない様子のカーリーさんとハナを志那都比古しなつひこさんが外出させてくれた。



 後片付けしてお喋りしているうちに焼き上がったのでケーキクーラーに乗せたら風神の志那都比古しなつひこさんが小さな風を起こしてかぼちゃプリンを冷ました。


「すごいですね」

「カーリーが待てない性格だからよくやるんだ」

 ハナも待てない性格なので教えてもらったら私も出来るようになった。自然に冷ますよりもずっと早く冷めた。



 かぼちゃプリンが冷めた頃、カーリーさんとハナが帰ってきた。


「これはカナにおみやげ」

 秋の麒麟草、藤袴ふじばかま七竈ななかまど蔓梅擬つるうめもどきだった。


「ありがとうございますカーリーさん、とっても綺麗ですね!しおれる前に生けなきゃ」

「じゃあこっちは僕らに任せて」


 スイーツをアルバロと志那都比古しなつひこさんに任せて、秋の花をテーブルに飾ったらテーブルが華やかになった。アルバロたちの盛り付けや茶器が引き立つ。



「じゃあ、いただきまーす」

「まーす!」


ハナとカーリーさんが嬉しそうにぱくん。



「おいしー」

「うん、美味しいね」


 カーリーさんに満足してもらえたので志那都比古しなつひこさんも嬉しそうだった。ハナもたくさん遊んでもらっちゃって助かる。



 スイーツよりもお酒を好む志那都比古しなつひこさんに芋焼酎をお土産に渡したら喜んでもらえた。


 来年は芋もたくさん作って焼酎を仕込みたいと思っている。お酒嫌いなハナに嫌がられそうだけどリザは喜ぶだろう。

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