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第281話 王都で売り込み

「なんだか王都に行くのも久しぶりな気がするね」

 今日も朝寝坊なハナをペットスリングに入れて王都に向かう。昨夜も王都王都とはしゃいで眠ってくれなかった。



「次の方ー」

 呼ばれたので全員でギルドカードを提示した。



「クマちゃんは寝坊かい?」


 前回も担当してくれた門番さんだった。ハナはペットスリングの中でぷうぷう眠っている。


「王都に行く前の晩は、はしゃいで寝てくれないんです」

「可愛いなあ」

「起きてる時は得意げにカードをピカピカさせるよな」

「あれも可愛いよな」

 門番さんたちが盛り上がっているが、うちのハナちゃんが可愛いという意見には大賛成だ。


 本人確認でハナを起こしてギルドカードに魔力を通してもらわなきゃと思ったら、記憶で本人確認できてるから起こすのは可哀想だとニコニコ笑って通してくれた。



 ハナが眠っているのでいったん王都の家に向かった。午後に商業ギルドに行くことにした。



「……王都のおうち?」

「そうだよ」

 王都の家に着いてお茶を飲んでお喋りしていたらハナが起きた。

「ちょっと見てくる!」



家中をフンフンしてから戻ってきた。


「パトロールは終わり?」

「うん」

「じゃあ出かけるか。屋台でメシにしよう」

「うれしー!ハナ屋台大好き」


 父さんに手荒にわしわしされてはしゃぐハナを連れて屋台でご飯を済ませてから商業ギルドに向かった。



「いらっしゃいませ!カナったら久しぶりね」

 鳥型の魔道具で行くことを知らせていたのでクラリッサが出迎えてくれた。


「クラちゃん!」

 ハナがクラリッサに向かって走り出すとクラリッサがハナを抱き上げてくれた。


「ハナちゃんたら相変わらずふわふわで可愛いわ」

「えへへー」

クラリッサに撫でられてハナがご機嫌だ。

「会えて嬉しいわ」

「ハナもー」

言葉が通じないのに通じていた。



 再会を堪能したハナとクラリッサが満足したので別室に案内してもらった。


「保存食を開発されたとお伺いいたしましたが、どのようなものでしょうか」

「まあ見てくれ!俺の特性レーションだ」


 キリッとビジネスの顔に切りかわったクラリッサの前にいつも通りの父さんがフリーズドライのレーションを積み上げる。


「均一な容器ですね!…凄いです」

 クラリッサはぴっちり積み上がる容器に感心している。


「中はこんな感じだ」

父さんがいくつか並べて蓋をとる。


「…これは?」

「こっちから順番にビーフシチュー、チキンのトマト煮、クリームシチュー、ミートボールのトマト煮込み、ラタトゥイユだ」

「………」


「今の見た目はカッサカサだからクラリッサちゃんの気持ちは分かるぞ」

 父さんがヤカンと計量カップを取り出す。


「ここに200ccずつお湯を注ぐんだ」

父さんがきっちり計って注ぐ。

「端っこも戻るよう全体に注いでな」

全体にお湯を注いで蓋をする。


「このまま待つ」


 私のお膝に座るハナが目を閉じてフンフンする。

「いいにおい」

「…本当ですね」

クラリッサがそわそわしてきた。



「そろそろいいな」

 砂時計の砂が全部落ちたので父さんがビーフシチューの蓋をとってスプーンでよく混ぜる。その間にリザとアルバロがチキンのトマト煮、クリームシチューなどもスプーンで混ぜて私が小皿を出して配った。


「好きなものを試食してみて」

「さっきと全然違うわ!いただきますね」


「カナちゃん、ハナはビーフのがいい」

「はいはい」

 お昼を食べたばかりなので少なめに盛って渡した。

「ありがとー」

上手にスプーンですくってぱくん。


「おいしー」


「…嘘みたい……本当に美味しいです」

クラリッサが呆然としている。


「調理済みの料理の水分だけを分離したんだ。沸かしたお湯で戻せば元通り食べられる」

「遠征なんかで料理出来ればいいけど、そうじゃない時は()()レーションでしょう」

「クソまずいよな。お湯を沸かす必要はあるけどダンジョンの中でもセイフティゾーンなら水を汲み放題だし、安全な環境で沸かし放題だからな」



「軍隊や冒険者の皆さまが遠征で食事が悩みだというのはよく聞きます。お湯をかけるだけなら簡単でいいですね」

なかなか好反応だ。


「でも容器がこの形だと手で持ちづらくないでしょうか」

 お椀型でなく平らで大きい容器は手で持ちづらい。


「誰でも大なり小なりアイテムボックスがあるから重さや形や大きさは気にしないかもしれないが平らじゃないとダメなんだ。厚いところと薄いところがあると、厚いところの中心がお湯で戻らない」

「…なるほど。意味があるんですね」


「この状態で卸すこともできるが錬金ギルドにこれを持っていくつもりなんだ。…カナ」


 父さんに促されて電子レンジのような見た目の魔道具を取り出した。


「さっきお湯で戻したやつを入れてボタンを押して待つ」


………… チーン!


「出来たな」

 父さんがいそいそと取り出すとお湯で戻したはずの料理がカッサカサになっている。


「もう一度お湯で戻してみよう」



 大丈夫か?と思ったらちゃんと戻ったけどお湯が多かったようで京都人もびっくりな薄味になった。

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