第28話 はじめての冒険者ギルド
「あっちのテーブル席は酒場で向こうの壁の掲示板は依頼。僕らは奥の受付で登録と買い取り」
初めての冒険者ギルドはアルバロが仕切ってくれる。アルバロに先導されて受付へ向かう。
「ローレの冒険者ギルドへようこそ」
「冒険者登録をしたいんだが」
「ではみなさんお座りください」
4人全員座れた。ハナは私のお膝だ。
「私はローレ冒険者ギルドのカミロです。冒険者登録いたしますので、こちらに記入をお願いします。可愛い従魔さんの分はテイマーさんの登録と一緒に行います。この部分に記入してくださいね」
上から名前と種族、その下に従魔の名前と種族か。事前の相談通り偽名を使うので父さんがリオ、私は本当は花南子だけどカナ。ハナの正式名は私の名前から取った花子なのでハナだ。
私の種族はハイ・ヒューマン、ハナの種族はウルサス。
「書けました?では登録証を作りますね」
「ささっと作ってくれるんだな」
「すぐに終わりそうだから街をゆっくりみたいな」
「その前に魔石を買い取りしてもらうよ」
「そうでしたね!」
4人でわいわいしていたらカミロさんが席を立った。
「すみません、魔道具の具合が悪くて…少しお待ちください」
「おう!気にすんな。後で出直してもいいぞ」
「いえいえ!そんなにお待たせしないと思いますので!」
「ねえ、あっちからいい匂いがする!」
ハナが鼻をフンフンさせる。
「酒場か、俺も気になってる」
「一度寄ってみようか」
「リオのご飯の方が美味しいはずだよ」
「私もそう思います」
「おいしい牛乳の匂いがするの」
「ああ…料理はリオの方が断然美味しいけど素材は良いものが多いからハナは気にいるかも」
「寄っていこう。ハナのカップに一杯だけ売ってくれるかな」
「お待たせしました。別の魔道具で登録になりますのでこちらへお願いできますか」
カミロさんが女性と一緒に戻ってきた。
「その前に酒場でハナにミルクを買ってもいいか?」
「では私がご用意しますよ」
カミロさんと一緒に来た女性が引き受けてくれたのでアルバロが女性にコインを渡していた。代わりに買って来てくれるようだ。
カミロさんに案内された部屋はギルドマスターの部屋だった。
「わざわざ来てもらってすまん。ギルドマスターのフラビオだ。座ってくれ」
見るからに強そうだけど父さんの方がデカい。ただの料理人なのに。
「失礼します」
「アントニア?」
先ほどの女性がビンを持って入室してくるが、説明していなかったのでフラビオさんは不思議顔だ。
「こちらでよろしかったでしょうか?」
女性がミルクの入った大きなビンを掲げてみせるとハナがソワソワする。
「それ!おいしい匂い」
「間違いないようです。ありがとうございます」
「ではビンごとどうぞ。お釣りです」
アントニアと呼ばれた女性がアルバロにお釣りを渡して退室した。
インベントリからハナのカップを出すと父さんが注いでハナに渡してくれる。
「落とさないようにな」
「うん!」
両手でカップを持ってミルクを飲むハナが可愛いので全員で見てしまう。
「じっと見ちゃって悪い。可愛いな」
「ハナは我が家のアイドルだからな」
「それで本題なんだが受付で登録すると騒ぎになりそうなんで来てもらった。ハイ・ヒューマンと竜人にウルサスだって?」
「ああ。リザは純粋な竜人で俺と娘は先祖にいろいろ混じっているハイ・ヒューマンだ。ハナはウルサスだが亜種だ。可愛いくて強くて可愛い」
「ハイ・ヒューマンの登録は100年ぶりくらいだ。バレたら大騒ぎだが強いのはすぐにバレるな。見るからに強そうだしお前たちを引きこみたい奴らが何か仕掛けてくる可能性がある」
全員で嫌そうな顔をした。
「この街の治安は良い方だ。どこの街にも同じようなことを考える奴らはいる。なるべく早くレベルを上げて変な考えを起こそうって考えさせないようにすることをおすすめする」
「おいしかったー!パパおかわり」
父さんが言いなりに注ごうとするので止めた。
「だめだよ。この後、美味しいものを見つけた時にお腹いっぱいだったら悲しいでしょ?」
「…ハナ、我慢する」
空気を読まないハナが可愛い。




