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第278話 イナゴマメ

「イナゴマメ?」

「うん。キャロブとも呼ぶんだけど」


 チョコレート味のエナジーバーを作りたいけどカカオが未発見なので使うに使えない。

そこで目をつけたのがキャロブだ。地球では地中海地方で栽培されており、コーヒーやココアの代用品として有名だ。

 初めてキャロブのお菓子を試食した時、本物のチョコレートだと思ったくらいチョコレートっぽい風味で美味しかった。


「同じか似たものがあればチョコレートの代用品になるかと思って」

 インターネット通販で召喚したイナゴマメとキャロブパウダーを見せたらアルバロが眉間に皺を寄せた。ハナはフンフン匂いを嗅いでいる。


「ないの?」

 この様子では存在しないのだろうと諦めかけた。


「……ある」

「あるなら良かった。でも問題があるの?」

「問題っていうか…鳥や兎の餌なんだよね」

「この世界ってお米も食べてないよね」

「うん。この世界を創造する時、民が飢えるのは忍びなくて温暖な地域に肥沃な陸地しか作らなかったんだ。僕の世界で飢饉が起きたことはないよ」

「無理に美味しくないものを工夫して食べる必要が無かったんだね」

「そうなんだ。でも存在するなら使えるよね……くふふっ、僕の世界にチョコレート味のスイーツかー!いいねいいね!」


「美味しければ受け入れてもらえるよね!栽培されているの?それとも野生?」

「栽培はされていないんだ。あちこちに生えてて秘境にも群生しているところがあるよ」


「じゃあ採りに行こうか」


 車…じゃなくて馬車を出してマッピングスキルを起動するとイナゴマメの群生地に板チョコ型のアイコンが表示された。間違いなくアルバロの仕業だ。


「出発するよー、シートベルトした?」

「うん」

 ハナが座席でゴロゴロしている。

「アルバロはハナを見ててくれる?」

「分かったよ」


 2時間ほどでイナゴマメの群生地に着いたのでハナを降ろすと伸びをしてから走り出した。

「遠くに行っちゃダメだよー!」

「わかったー」

 慌てて声をかけるが分かっていないだろう。後で迎えに行かねば。



「収穫しようか、ちょうど熟す時期で良かったね」

 キャロブの果実は熟すのに1年近くかかる上に緑色の果実が茶色く熟すのは翌年の夏の終わり頃という栽培したら収穫可能になるまでだいぶ時間のかかる植物だ。


「お茶の葉を収穫した時のように範囲魔法で囲って“収穫”スキルで1m四方くらい収穫出来るよ」

「キャロブの木は高さがあるからスキルがあると助かるね」

 

 事前に調べてみたらキャロブの木は草丈5~15mとあり、群生地に着いてみたらアルバロの世界でも似たような状態だった。


 アルバロと手分けして収穫して回り、2時間近くかかって4割近くがアイテムボックスに入った。ここに食べにくる鳥などの野生動物がいるだろうから半分以上を残し、さらにリンゴなどの果樹を植樹した。


「じゃあハナを探しに行こうか」

 マッピングスキルを起動してシロクマアイコンに向かうとしばらくして白いモコモコが見えた。


「ハナ!」


 声をかけると振り返ったハナがこちらに向かって駆けてくる。

「遠くに行っちゃダメって言ったでしょう」

「楽しくて忘れちゃった!」

 抱きついてきたハナが可愛いので抱きしめてモフってやった。


「ウサギがいたよ」

 ハナの目線を追うと茶色いウサギのつがいがいた。

「可愛いねえ」

「そうなの」

 ハナが強すぎて小動物を相手にしないので近寄っても安心しているらしい。可愛いもの好きなハナがデレデレだ



「おいしいの採れた?」

「ハナも食べる?」

「たべる!」

 地球でも産地ではそのまま齧って食べると聞くので熟したサヤを渡すと手で持って齧る。


「ほんのり甘いね」

「そうだね、こうして食べるとやっぱりチョコレートとは違うね」

「おいしーよ」

 ハナは優しい甘みを気に入ったようだ。……アルバロがもりもり食べている。食物繊維が牛蒡の5倍らしいのでお腹を壊しても知らないぞ。


「カナちゃんウサギも食べたいって」

 ハナの声を聞いて足元を見るとウサギの番がいた。キャロブのサヤを渡すと熱心に食べ始めた。


「そういえばペットショップでキャロブのサヤを売ってるのを見たことあるよ。パッケージにウサギの絵が描いてあった」



「じゃあ種を植えてあげようか」

 アルバロが食べ残した種を植えてくれたので、植え終わるのを待って我が家に帰った。

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