第277話 エナジーバー
「レーションを改善するぞ」
全員で秘境の我が家に来た。ハナは父さんとリザに交代でモフモフされて大喜びだ。今も父さんに抱っこされて手荒にモフられている。
「何か手伝う?」
「ああ!是非頼みたい」
お湯を沸かす余裕のある時の夜営用に、お湯をかけて戻すだけのインスタント食品を父さんが担当するので、お湯を沸かすことも出来ない環境でも食べられるエナジーバーのようなものを私に作って欲しいと言う。
「じゃあ試作だよね、どんなものにしようかな…」
「考える時間が必要だよな、日本のエナジーバーを取り寄せてみたから参考にしてくれ」
父さんがどさどさっとエナジーバーをテーブルに並べた。
「俺のオススメはこれだ!」
父さん一推しは低糖質かつ高タンパクなプロテインバーだった。
「プロテイン!?」
アルバロが反応した。
「味もいいぞ」
私が発する冷ややかな空気に父さんが気づいた。父さんとアルバロは一緒に筋トレしている筋友だ。
「こ、これは食物繊維も豊富で腸内環境にもいいんだ!」
取ってつけたようなコメントだったが確かにパッケージでプロテインと食物繊維が強調されている。
「食べてみようか」
たくさん種類があるので少しずつ試食しようということになり1本を5等分して分けた。
「おいしー!」
チョコレート味のエナジーバーをハナが気に入ったようだ。
「飲むプロテインよりも美味しいね!」
予想通りアルバロも気に入っている。
「カロリーはギリギリまで低くしてあるんだね、冒険者や軍隊のレーションなら反対にカロリーを上げていかないと体力がもたないよね」
「それなら、これはどうだ?」
父さんが差し出したのはスイーツっぽい1本だった。10種類のビタミン、カルシウムと鉄分と食物繊維入りがセールスポイントだ。
これも5等分にして試食。
「おいしー!」
「甘くて美味しいね!」
これもハナとアルバロからの評価が高い。甘くてスイーツっぽくて腹持ちも良さそうだ。
「これはどうだ?大豆が主原料で長く人気のシリーズだよな」
これも5等分にして試食。
大豆バーも高タンパク・低GI食品だ。低GI食品なので糖質の吸収がおだやかなので冒険者や軍隊には向かないだろう。ダイエット向けの低糖質・低カロリーなエナジーバーを過酷な行軍中の冒険者が主食にしたら倒れてしまうかもしれない。でも味はいい。
父さんがインターネット通販で召喚したエナジーバーは全部で30種類ほどあった。同じシリーズの違うフレーバーが参考になる。同じ種類ばかりでは長期の行軍で飽きるだろうから出来るだけたくさん種類を作りたい。
「味を参考にしてカロリーは高めにしてみようか。種類は多い方がいいよね」
「そうだな!カロリー補給が目的だもんな。種類を増やして飽きない工夫はいいと思うぞ。さすがカナだ」
父さんが今日も親バカだ。
「この世界の材料で作ることになるよね…アルバロ、材料について相談にのってよ」
「任せてよー!」
アルバロがノリノリだ。スイーツっぽいから喜んでいるようだ。
「運動後に食べるならプロテイン入りだな」
「このチョコ味も好きだけどチーズケーキ味もすっごく美味しかったよ」
「次の筋トレまでに買い足しておこう」
試食が終わったパッケージを集めて原材料をメモしていたら父さんとアルバロがなんか相談してた。




