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第275話 ハナとクズさんと応竜ちゃん

「遊びに来た」

「森でかけっこしよう」


 クズさんと応竜ちゃんがハナを誘いに来てくれた。


「うれしー!ハナかけっこ大好き」


 ハナが丸い尻尾をぴこぴこさせて大喜びだ。私たちはハナと同じスピードで走れないのでハナを心から満足させることが難しいと気にしていたので助かる。

 こちらの世界にはドッグランもないのでお散歩ダンジョンで思いっきり運動させたり、たまに狐太郎君と遊んでもらうのが精一杯だった。運動量は充分でもハナの喜びや楽しい気持ちは物足りないかもしれないと心に引っかかっていた。


「クズさんも応竜ちゃんもありがとう、私も付き添った方がいいかな」

「俺がいれば大丈夫だ。この森に危険は無いからな」


「水入れを持っていった方がいいよね」

「必要ない。泉や小川の水は澄んでいて美味いからな」

「そっか。送っていった方がいい?」

「大丈夫だ」

「本当に?」

「カナは過保護だな」

「うちのハナちゃんは可愛いからね!」


 …クズさんに過保護過ぎると冷たい目で見られた。




「行くぞ」

「うん!」

 クズさんとハナと応竜ちゃんがあっという間に見えなくなった。




 ビュンと飛び出した子竜と子狸とシロクマがものすごいスピードで森を駆け抜ける。ただ走っているだけなのに楽しそうだ。



 木々が開けた場所で子狸がスピードをゆるめた。

「少し行くと泉があるから休もう」


 子狸と子竜とシロクマが並んで水を飲む。この可愛い後ろ姿をカナが見たら崩れ落ちながら動画を撮ったことだろう。


「ここのお水おいしいね!」

「分かるか?」

「ハナは味覚が鋭いな」

「むふー」

 九頭龍と応竜から褒められてハナが喜ぶ。


「この辺りは誰も来ないから自由に遊べるぞ」

「追いかけっこしよう」

「ハナ追いかけっこ好き!」

「俺が鬼だ、応竜もハナも逃げていいぞ」


 応竜とハナが逆方向に向かって駆け出すと1分後に九頭龍が追いかけた。しばらくしてハナに追いついた九頭龍はハナと一緒に応竜を左右から追い込み、空に逃げようとした応竜を九頭龍が捕まえた。


「追いかけっこの時は高さ2メートルまで飛んでいいという約束なんだ」

「すごいね!クズくん、すっごく高くジャンプしてたよ!空を飛べる応ちゃんもカッコいいね!」


「なあに、大したことないぞ」

「大人になったらハナを乗せて飛んでやる」

 素直で単純なハナが九頭龍と応竜への憧れを言葉にすると九頭龍と応竜が分かりやすくデレた。


 交代で鬼を務め、喉が乾けば泉の水を飲み、くたくたになるまで遊んだ。



「捕まえた!」

 小川の中を潜って逃げていた九頭龍を応竜が捕まえた。


「あれ…」

「ハナはどこだ?」

「水に飛び込む直前まで一緒に走っていたぞ」

 2匹が泳いで戻ると小川の近くでハナがちょこんと座っていた。


「どうした?」

「ハナぬれるの嫌い」

 お風呂嫌いだけど温泉とプールが好きなハナは小川に潜るのも苦手だった。


「悪かったな」

 子狸の九頭龍がハナから離れたところでブルブルした。

「ねえ、もう帰ろうよ。ハナお腹空いちゃった」



 濡れたままの応竜と九頭龍と一緒に走って帰ると出迎えたカナが魔法で乾かそうとした。しかし格上の応竜と九頭龍にカナの魔法は効かずタオルで乾かした。


「俺は濡れてても平気なんだがな」

「濡れたままでうちに入れられないよ」

 雨と水と縁結びを司る九頭龍も、雨を降らせる応竜も水が得意で気にならないと言うが家の中が水浸しになるのは勘弁だ。拭き終わったら自由にしてもらった。




「みんなおいでー」

カナの声で全員集まった。


「今日は冷えるから温かいスイーツにしたよ」

 湯気をたてるフォンダンショコラと紅茶を配った。


「甘いにおい!」

「中のチョコが熱いから気をつけてね」


 ハナがフォンダンショコラにスプーンを入れると中から熱々のチョコレートが流れ出した。

「おいしー!」


「チョコレートが濃厚だな!」

「一緒に盛り付けられた甘酸っぱいイチゴやオレンジと交互に食べるとさらに美味いな」



 たくさん遊んで焼きたてスイーツに満足した応竜と九頭龍が自分の世界に帰っていった。




「すっごく楽しかったよ!」

「そっか」

「応ちゃんもクズくんもすっごく早く走るの」

「どんな遊びをしたの?」

「追いかけっこ!」

「楽しかった?」

「うん!」


 走り回って疲れたハナは早めに眠ったが、寝落ちするまで楽しかったと繰り返した。



「クズさんと応竜ちゃんに感謝だね」

「また遊んでくれるように僕からも頼んでおくよ」

「ありがとう」



 翌日、いつも通り家事をこなしていたらアルバロが何かを受信した。



「ハナ」

「なあにアルバロ?」

 ハナがお座りして首をちょっと傾げて可愛い。


「ハナは具合が悪くない?」

「平気だよ」

「鑑定してもいい?」

「うん」


「……大丈夫そうだね」

「どうしたの?」


「九頭龍と応竜が風邪をひいて寝込んでいるんだって。ハナは大丈夫かって梵天様と大黒様から通信が入ってた」

「…そういえばクズさんと応竜ちゃんは濡れてたね」


「クズくんと応ちゃんは川で泳いでたよ」

「昨日は寒かったのに…」

「2人とも水に関する能力があるからね。それにしても昨日の天気で川で泳いで濡れたまま走っていたら風邪くらいひくよね」



「……ハナ入らないでよかった」

 座薬のことを思い出してちょこっと機嫌が悪くなるハナだった。

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