第274話 ハナの療養
飲み薬も注射も嫌だと泣いて暴れるハナにアルバロが座薬を挿れたらハナが拗ねて泣いた。
「大人しく注射されてくれたら楽なんだけどねえ」
「飲み薬も絶望的だしね」
治療への激しい抵抗を思い出してアルバロと一緒にため息をついた。
「座薬に拗ねて寝ちゃったね」
「可哀想だけど可愛いね」
「アルバロもそう思う?」
「うん」
ハナが眠っている間にハナが病気になった時の治療は今後すべて座薬にしようと方針が決まった。あれほど嫌がる注射を打つのは忍びないし飲み薬への抵抗も激しく座薬が無難だからだ。
……………断じてセクハラではないし面白い表情とポーズで硬直するハナが可愛いからじゃない。これが1番ハナの負担が少ない治療法なのだ。
………すっごく可愛いけど。
「私の魔法ってもう全部ハナに弾かれちゃうのかな。治癒魔法が効かないのも困るけど浄化魔法が効かないのも困るね」
「そうだね、食事の時もお散歩から帰った時も必要だもんね、ちょっと管理職たちに相談してみるよ」
「ありがとう」
「交代で僕らもご飯にしようか、夜はここで川の字になって寝ようよ」
「それがいいね」
夜中に目が覚めて1人だとハナがぐずる可能性が高いし離れていると心配なので横で眠ることにした。
やっぱり夜の間も何度か起きて水を欲しがったのでアルバロと交代でハナに水を飲ませたり氷枕を取り替えたりした。
何度も起きてハナの世話をしていたら夜が明けた。目がしょぼしょぼだ。
「寝た気がしないねえ」
「そうだね、今日こそ熱が下がるといいんだけど」
薬も注射も嫌がるのでなかなか良くならない。
「ハナが起きるまでもう少しかかるかな」
「フルーツなら食べてくれそうだから僕が温室から採ってくるよ」
「ありがとう」
ハナに付き添っているとアルバロが父さんとリザを連れてきた。
「ハナちゃんの具合はどうだ?」
「座薬が効いて熱は下がってきたよ」
「そうか」
父さんとリザがハナをそっと撫でる。
「うどんと茶碗蒸しを作ってアルバロに渡してあるからな」
「ありがとう、ハナが喜ぶよ」
居座るとハナを起こしてしまうからと父さんとリザが帰っていった。
アルバロが出掛けたので1人でハナに付き添ってお昼にうどんを食べさせた。
「おいしー」
「父さんとリザがハナのために作ってくれたんだよ」
「えへへー」
甘やかされて喜んでいるが食欲は戻らず、いつもの半分くらいしか食べなかった。大暴れするハナに1人で薬を飲ませる自信がないので安静にさせていたらアルバロが帰ってきた。
「おかえり」
「ただいま」
「お薬もらえた?」
「ばっちり。全部座薬にしてもらったよ」
ハナの風邪薬はすべて飲み薬から座薬になった。
ハナは夕飯の茶碗蒸しを完食した。
「全部食べて偉いねー!」
「えへへー」
「お熱も今日は上がらないね」
「もうお薬はいらないのよ」
「ハナったら、お熱が上がっていないけど下がってもいないでしょう?」
「いらないの」
「もう!…でも食欲は出てきたみたいだね」
「うん」
全部食べて偉かったと撫でまくり油断させたところにアルバロが座薬を挿れたらハナが面白い表情とポーズで硬直した。
「今のは風邪薬。喉の炎症と咳、鼻炎に効くよ」
「アルバロのばか〜」
ハナが泣き疲れて眠った。
この日の夜はハナが起きる回数が少なかった。翌朝は普段より遅めに起きた。
「おはよう」
お布団ぽんぽんしていたらハナがだんだん目覚めてきた。
「お水を飲む?」
「うん」
お水を飲ませた後、寄り添ってぽんぽんしていたら何か食べたいと言うのでフルーツとアイスクリームを食べさせたらご機嫌だった。
「朝ごはんにアイスっておいしいね」
食後、満足そうに甘えるハナを撫でていたらアルバロが座薬を挿れた。
「アルバロのばか〜」
そんな騙し討ちのような投薬の効果があってハナは回復した
「ハナが元気になってよかったよ。あのまま熱が下がらなかったらどうしようかと思った」
「ひどいのよ…」
座薬のことを恨んでいるようだったが抱き寄せてなでなでしていたら機嫌が直ってきた。
「今日はお外で遊ぶのはやめておいた方がいいね。ハナ、一緒にセーラーキュア⭐︎ガールを観ようか?」
「みるー!」
アルバロが定額制の動画配信サービスで最新シリーズを一緒に観ようと誘うと座薬の恨みを忘れてアルバロの膝に乗った。主人公がピンチの場面では一緒に応援したり目を覆ったり、ハナとアルバロのポーズがシンクロして面白かった。
最新シリーズ全12話を2日かけてアルバロと一緒に観てご機嫌だった。ハナはちょっと忘れっぽいところも可愛い。




