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第273話 ハナが熱を出した

「…カナちゃん抱っこ」

「はいはい」


 抱き上げたらハナの身体が熱い。

水たまりに落ちたり、ダメだと言っても聞かずにこたつで寝ていたので風邪をひいたのかもしれない。


「熱いね、だるい?」

「うん…」

「風邪かな…あれ?治癒魔法が効かないみたい」

「カナの魔法が効かないのはハナが進化したからだよ」

「そんな…」


 ハナの格が上がったために治癒魔法が効かないらしい。今すぐ治してやりたいのにハナが苦しそうで辛い。



「ハナを休ませようか、僕が布団を敷いてあげる」


 アルバロがハナの部屋に布団を敷いてくれたので、そっと寝かせた。


「お熱を測ろうね」

「うん……」

 ハナの頭を撫でながら話しかけると素直に肯いた。



「動かないでねー」


ぷす。


「#%€<@&¥・・・!!」



 体温を測るため肛門に体温計を挿したらハナが面白い表情とポーズのまま硬直した。



「………カナちゃん……どこ…どこで……」


 ハナがプルプルしたまま固まった。どこに体温計を挿しているんだと言いたいのだろうが言葉にならず震えている。肛門に体温計を挿したまま暴れたら危険なのでちょうどいい。



── ピピッ!ピピッ!ピピッ!


「じゃあ体温計を抜くよー」


ドカ!


 体温計がピーピー鳴ったのでハナの肛門から体温計をスッと抜いたらうしろ脚で顔を蹴られた。頬っぺたに足跡がついたかもしれない。



「………カナちゃんのエッチ」


 ハナがプルプルしているのは熱のせいではなく羞恥によるもののようだ。

「お熱を測っただけでしょ。…やっぱり熱が高いから安静にしようね」


 アルバロによるとウルサスの通常の体温は人とほぼ同じで36~37度らしい。いま測ったハナの体温は38度をちょっと超えていた。

 体温計は浄化魔法をかけてからケースにしまった。拗ねて鼻をぷすぷす鳴らすハナにお布団をかけてポンポンしたが、なかなか機嫌が治らない。



 涙目のハナは拗ねて布団を噛んでいたが、間もなく眠ってくれた。ぐずるハナも可愛いけど、体力が心配で早く休んで欲しかったから寝息が聞こえてきた時はほっとした。



 ハナが熟睡したのを確かめてからそっと離れてキッチンで鮭粥を作った。出来立てをフルーツと一緒にアイテムボックスに入れてハナの部屋に戻り、読書をしながらハナを見守った。




「ハナ?」

 苦しそうに身動きしたので声をかけると薄く目を開いた。

「お水を飲む?」

「…ん」


 少しだけ身体を起こさせて吸い飲みから水を飲ませた。

「お腹は?桃があるよ」

「いい…」


 そっとお布団に寝かせて側で見守り、目覚める度に水を飲ませた。しばらくするとハナのために薬を調達に行っていたアルバロが帰ってきたので一緒に見守った。



 ハナが起きたので水を飲ませた。


「お水はもういいの?」

「うん」

「お腹は?鮭粥があるよ」

「…食べる」


 私がハナを抱っこするとアルバロがスプーンで鮭粥をハナの口に運んでくれた。


「おいしいけど、いつもみたいにおいしくない」

「具合の悪い時は味覚がおかしくなるから仕方ないね。元気になったらいつも通り美味しくなるよ」

「…うん」


 鮭粥をお茶碗に半分だけ食べて、もういらないと言うのでフルーツを勧めた。

「桃は?」

「…たべる」


桃を2切れ食べたらお腹いっぱいだという。



「じゃあお薬だね」


「やだー!!」


 アルバロが粉薬を持ってハナに近づくと薬を嫌がって暴れた。激しくもがくので無理に飲ませることもできない。



「アルバロがハナのためにウルサス用の風邪薬を貰いにいってくれたんだよ」


「やーーだーーー!」


 聞き分けるどころか、さらに暴れて手がつけられないのでアルバロと相談して様子を見ることにした。

 落ち着いたら眠ってくれたので引き続きハナの側で見守り、目覚める度に水を飲ませた。




「リンゴをすりおろして蜂蜜を混ぜたよ」


「…おいしー」


 夕飯はお粥を食べたがらなかったけれどリンゴのすりおろしを半分くらい食べてくれた。しかし夕飯後も薬を飲みたくないと激しく抵抗した。



「やだやだやだー!」



「ハナったら暴れて熱が上がってるんじゃない?」


 体温計を肛門に挿したらハナが面白い表情とポーズで硬直した。



── ピピッ!ピピッ!ピピッ!


 高熱に体力を奪われたのか蹴られなかったが羞恥でプルプルと震えていて可愛い。


「昼間より上がってるね、39度を超えてる」

夜になり、ハナの熱は下がるどころか上がってしまった。


「シモンを呼ぼうか」

「シモンさんて?」

「カナが小児インフルエンザだった時に往診してくれた管理職だよ。あの時のカナは注射1本で楽になったでしょう?」

「あんまり覚えていないけど注射で劇的に熱が下がったって父さんが言ってたね」



「注射はいやー!!」


 高熱で体力の落ちているハナが注射を嫌がってジタバタ暴れる。


「このまま苦しむハナを見ていられないよ」


「やだあー!!」

 ハナが海老反えびぞって泣く。


「ハナ…」

「注射とお薬なしで治してえ」

 ハナが無茶を言いながら、しがみついて甘えてくる。



「仕方ないな…」

 アルバロがピチッと音を立ててビニール手袋をはめ、楕円形の錠剤を取り出した。


「ハナの希望通り注射も飲み薬も無しだよ」

「ダメだよアルバロ、治療しなきゃ。ハナが苦しそうで見ていられないよ…」

「うん、だからカナはそのままハナを抱っこで押さえてて」



── アルバロが容赦なく座薬を挿れた。



「解熱剤だから風邪の症状をおさえる効果は無いけど飲み薬より効くって。まずは熱を下げないと」



 ハナが面白い表情とポーズで硬直したまま動かない。



 しばらくして違和感に慣れたハナが私にしがみついて、ぷすぷす泣いた。


「アルバロのばか〜」


 かなり奥まで入れられたと訴えているが、解熱の効果を発揮させるため説明書通りだったらしい。


「座薬が嫌ならお薬を飲む?」

「………」

「注射にする?」

「………」

「飲み薬も注射も座薬も嫌はダメだよ」

「………うえぇぇーん」



 ぽんぽんしていたら静かになった。…注射で済めば楽なんだけどなあ。

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