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第271話 拠点で釣り

「こっちでも釣りができるんだね」

「以前、森を案内してもらった時に小川を見つけて目をつけていたんだ」


 今日はアルバロの拠点がある森で釣りをすることになり、釣り好きな父さんが張り切っている。


「ハナは自由にしてていいけど遠くに行っちゃダメだよ」

「わかったー!」

 分かったと言いながら見えなくなったのでマッピングスキルを起動して移動するシロクマアイコンを確認する。離れすぎたら迎えに行こう。


「ここではどんな魚が釣れるんだ?」

「川魚ならなんでも。季節とか関係ないから!じゃんじゃん釣って大丈夫」


全員並んで釣り糸を垂らす。



「…昨日は私たちまで加護をもらっちゃってびっくりだったね」

「俺たちまでめちゃくちゃ強くなってたな」


 神様たちを見送った後、恐る恐る自分で自分を鑑定してみたら雷神トールの加護でSSRの雷魔法を使えて、風神の志那都比古しなつひこの加護でSSRの風魔法、火の神の迦具土かぐつちの加護でSSRの火魔法を使えるようになっていたし、軍神テュールの加護と戦いの女神カーリーの加護でますます強くなっているようだ。


「ノボさんの加護が1番実用的かもね、父さんが寝たきりになっても介護は任せてよ」

「俺たちは老いないらしいから大丈夫だ」

 ノボさんの加護で身についたスキルはターミナルケアだった。病気や老いで苦しむ人が余生を豊かに過ごすための力だ。



「かかりました」

 リザが立派な鮭を釣り上げた。


「俺もかかった」

 リザが鮭を釣ったら父さんが鰻を釣って、父さんはさらに鮎まで連続で釣り上げた。


「2人とも凄いねえ」

 父さんに付き合ってよく釣りに行っているリザまで最近は釣り名人だ。


「リザが釣った鮭で今日は夕飯にしよう。ハナちゃんが喜ぶぞ」

「良いですね!」




 マッピングスキルを確認したらハナがだいぶ離れた場所にいた。

「しょうがないな、ハナを迎えに行ってくる」

 釣り竿をアルバロに任せてしばらく走ると白いモコモコが見えた。


「ハナ!」

 名前を呼んだらモコモコが振り返った。


「カナちゃーん」

 振り返ったハナがこちらに向かって走ってくる。


ぼふ!


 突撃してきたハナを受け止める。

「遠くに行っちゃダメって言ったでしょう」

「たのしくて忘れちゃった!」

「もうー」

 悪びれず笑顔のハナをぎゅっとしたら、すりすりしてきて今日も可愛い。


「何かいいものあった?」

「トンボを追いかけてたの」

「そっか」


 ハナは愛犬時代から蝶々や雀などを追いかけるのが好きだった。モグラを追いかけているのか、地面の匂いを嗅ぎながら庭をフンフンしてまわった時はトリュフを探す豚のようで可愛いなと思ったものだ。


 すぐに戻らずハナと一緒に散策しながら昨日加護をいただいた時のことを思い出した。安産の神の臨水夫人が『500〜600年くらいしたら子供を欲しいと思うようになるかもしれないから、その時は私を頼ってね』と言った。

 自分はまだまだ考えられないけど父さんとリザの間に弟か妹が生まれるかもしれない。もしも生まれたらハナも可愛いがってくれるだろう。愛犬時代のハナは小さな私にいつも寄り添ってくれていた。



「たすけてー!」


 もの思いに耽っていたらハナの悲鳴が聞こえたので駆け出し、少し大きな水たまりにはまったハナを抱き上げた。


「濡れるのきらいー」

 ぎゅっとしがみついてくるハナと自分を魔法で一瞬で乾かしてから浄化で綺麗にした。


「どうしちゃったの?」

「水たまりで遊んでたの」

「それで?」

「いきなり深かった〜」

 水たまりで遊んでいたら深い場所を踏んでしまいパニックになったようだ。


「一緒にいる時で良かったよ。1人で声も届かない場所で今みたいなことになったら危ないから1人で遠くに行っちゃダメだよ」

「わかった〜」

 しばらく抱っこして撫でていたら落ち着いたので地面に降ろすと匂いをかいでまわっている。



「そろそろ戻ろうか」

「うん!」

 気が済んだのか機嫌よく一緒に戻ってくれることになったのでマッピングスキルで父さんたちの場所を確かめながら戻った。



「パパ!」

 しばらく歩くと父さんたちが見えてハナが駆け出した。


「1人で遠くに行っちゃダメだぞ」

「わかったー」

 わしわし撫でられてご機嫌で答えるけどたぶん分かっていない。


 父さんのなでなでから解放されたハナが父さんたちが釣った魚が入っているバケツをのぞいたり川をのぞいたりしているので私も釣りに戻ったが、その途端に雨が降り出した。


「けっこう本格的に降りそうだね」

「俺1人なら雨でも釣るんだが」

「ハナ、ぬれるのきらい」

「片付けて帰ろうか」


 釣り道具をアイテムボックスに入れてハナを抱き上げるとしがみついてきて可愛い。


「道具は雑にアイテムボックスに入れてもきちんと収納されるからいいな、魚もしめておけば収納できるし」

「便利だよね。…あれ、雨が強くなってきた。早く帰ろうよ。…アルバロ?」

「どうしたんだ?」

アルバロの眉間に皺が寄っている。


「僕らの森に雨は降らないんだ」

「いま降ってるじゃん」


 アルバロから不穏な空気を感じて父さんがリザを抱き寄せた。


「なにか来るよ」

 ハナが何かに気づいた。



応竜おうりゅうだ」

 ハナが示す方向を見ていたアルバロがつぶやいた。


「応竜って?」

「雨を降らせる能力がある神竜だよ」

 アルバロが見ている方向から小さな竜が飛んできた。ハナより小さくて手足が2本ずつ、蝙蝠に似た翼がある。全体的に丸くてカッコいいというより可愛い。


「アル〜」

 飛んできた応竜がアルバロに抱きついてメソメソ泣いている。



 ハナをたくさん遊ばせて父さんたちが釣りを堪能して、なんでもない日だけど、楽しくて満足な1日だったと思ったらトラブルの予感がした。

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