第263話 リコッタチーズのパンケーキ
「じゃあ出発しますよー」
助手席にアルバロ、後部座席にハナとノボさんを乗せて馬車に変換された車を走らせる。実用的な効果のあるアロマキャンドルや入浴剤を作るため、素材を集めに行くのだ。
アロマキャンドルの作り方は蜜蝋を溶かしてホホバオイルやオリーブオイルとエッセンシャルオイルを加えて固めるだけだ。錬金スキルがあれば上手に作れるだろう。入浴剤の作り方は検討する時間が欲しいので今回はアロマキャンドルの材料だけ集める。
上手くできて錬金ギルドにレシピを売ることになったら、乱獲に繋がらないよう素材の栽培の道筋をつけておきたい。
「この辺に反応があるよ」
助手席のアルバロのナビ通りに馬車を停めた。
「マッピングスキルを起動してみて。ピカピカしてるのが果蜂のコロニーだよ」
「……本当だ、大きい反応だね」
「天然の養蜂場でしょ?」
アルバロの提案でそれなりの規模の巣を利用することにした。
「じゃあハナは待っててね」
「うん」
ハナは小さな蜂から一斉に攻撃されるのが苦手なので馬車の中でノボさんと一緒に待っててもらう。
アルバロと一緒に防護服を着てから外に出て巣を回収する。アイテムボックスに生き物を収納できないので巣を収納すると果蜂だけ空中に取り残される。
代わりに新しく木で作った巣箱と餌台を設置し、餌台に糖度の高いフルーツを置いた。すると怒っていた果蜂たちが一斉にフルーツに向かった。果蜂は花ではなくフルーツから蜜を集める習性なのだ。
見守っているとフルーツに満足した果蜂が私たちが用意した巣箱に入りはじめた。
「巣を全部収納できたね」
「巣箱はちょっと多かったかな」
「少ないよりもいいんじゃない」
「そうだね」
「じゃあ植えちゃおうか」
アルバロと一緒に近くに果樹を植えて回った。巣を奪ったお詫びに果樹をたくさん植えることにしたのだ。
りんごやみかん、桃や柿を植えたらアルバロが神の力で成長させた。
植樹が終わる頃には果蜂たちがすべて巣箱に収まったので、蜂たちが落ち着いたのを見届けてから馬車に戻った。
「おかえり〜」
「お待たせ」
出迎えてくれたハナをもふもふしてから馬車を走らせ、野生のオリーブの木やハーブを利用する為に環境を整えて回った。
「ここ楽しいねー!」
野生のオリーブの木がたくさん生えている場所をハナが自由に走り回る。ノボさんがハナについていてくれるので安心して作業できた。
「枯葉をたくさんつけているな、儂が取ってやろう」
ノボさんがハナを抱き上げてハナの毛皮に絡まった枯葉や小枝を取ってくれた。
「ありがとー」
「アルとカナの作業はどうだ?」
「予定していた作業は全部終わり、これだけあればたくさん作れるよ」
「そうか。2人が作業する時はハナは儂の世界に行こうな」
「うん!」
「ありがとうノボさん」
「なあにハナがいてくれたら患者も喜ぶ、儂もありがたい」
ノボさんが優しくハナを撫でる。
「帰ったら果蜂のハチミツでおやつにしようか」
「!」
アルバロが反応した。
「じゃ、魔法陣で帰るよ」
一瞬で転移した。
「ここは?」
「僕の拠点。カナがここのキッチンが1番使いやすいって言ってたから」
「カナちゃん、なに作るの?」
アルバロとハナとノボさんがキラキラした顔で見てる。
「リコッタチーズのパンケーキをハチミツで食べるのはどうかな?」
「美味しそう!」
「カナちゃんのパンケーキ好き!」
全員賛成のようだ。
「はい、じゃあ全員浄化してねー」
全員を浄化して、さらに手も洗った。浄化魔法があるけど調理前の手洗いは習慣なのでやめられない。
「まずはハニーコームバターを作ります」
ゴールデンシュガーとハチミツを鍋に入れて溶かす。色がつくまで加熱するとカラメルの風味がついて美味しいのだ。
「このくらい加熱したら取り出しやすいようバターを塗った容器に入れて冷まします」
魔法で冷まして時短した。
「冷めて固まったら砕いてから柔らかくしたバターに混ぜて出来上がり」
砕くのは魔法でやった。
「ふわふわのもと、卵白とグラニュー糖でツノが立つくらいしっかりしたメレンゲを作ります!」
ハンドミキサーでガーっとした。
「別のボウルに卵黄、牛乳、リコッタチーズを入れてよく混ぜたらふるった小麦粉、ベーキングパウダーを加えて混ぜます!」
リコッタチーズは小麦粉の2倍の量だ。
「ここにメレンゲを入れて潰さないように混ぜます」
お皿やトッピングのフルーツを準備してからフライパンを温める。
「僕がお茶の準備をするよ」
完成を察知したアルバロがお茶の準備を始めてくれた。
「熱したフライパンに生地を入れて両面に焼き色が付くまで焼いたら出来上がり」
お皿に移して全体に粉糖をふりかけてフルーツをトッピングしたらテーブルに移動した。
「お好みで好きなだけハニーコームバターを乗せてハチミツかメープルシロップをかけてね!」
有名店の有名なメニューを再現した。
「ハナ、ハニーコームバターはこのくらい?もっと?」
「そのくらい!」
ハナのパンケーキにぽってり乗せてやるとパンケーキの熱で溶け出した。
「ハチミツかけて!」
「はいはい」
ハナがもういいと言うまでかけてやった。
「いただきまーす!」
ハナがパンケーキをぱくん。
「おいしー!」
「ふわふわだな!美味いぞカナ」
「ハニーコームバターの中のシュガーハニーコームがカリカリでいいね!」
ふわふわのパンケーキは好評だった。今度クズさんにも作ってあげよう。




