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第261話 オスカル様の災難

 今日は王都の家に孤太郎君とローザが遊びに来る日だ。父さんとリザは王都の屋台の視察に行っていたけど、もう戻ってきており、一緒にもてなしてくれるという。ありがたい。



「早く来ないかなー」

待ちきれないハナが庭をうろうろしている。


「!」

何かに気づいたハナが門に向かって駆け出した。



「ローザちゃん!」

 オスカル様、ネルソンさんとアマリアさんご夫妻が一緒だ。残念ながらクラリッサは仕事の都合がつかず合流出来なかった。その代わりに夜はネルソンさんとアマリアさんに甘えるつもりだと言っていた。


「ふふっ、今日もモフモフね」

ローザの目がキラリと光った。


「冬毛が伸びてきたんだよ」

冬に向けてハナが夏より丸々として可愛い。


「おばあちゃん!魔法をかけて」

ローザがアマリアさんを振り返る。

「はいはい。皆さんは離れててくださいね」


ボフン!


 ローザがカナリヤから孔雀サイズに変化した。大きくなっても優雅で美しい。


「さあ、いらっしゃい!」

 ローザが翼を広げたところにハナが飛び込んでゆくとローザの羽毛にハナの顔が埋まった。


「ふわふわ〜」

 ローザの羽毛に鼻先を埋めたハナが両手両足で大好しゅきホールドした。

「むふー」

 ローザも満足そうでWin-Winだった。飽きずにお互いの羽毛と毛皮を堪能している。




「カナちゃん!久しぶり」


「孤太郎君もいらっしゃい、待ってたよ」

 ハナとローザが抱き合っていたら巽と孤太郎君が到着した。


「俺もー!」

 孤太郎君に気づいたローザが片方の手羽先を広げたところに孤太郎君が飛び込んでいった。可愛きゃわいいぃ!



「カナさん」

「なんですか?オスカル様」

「ローザの美しい羽を見て『でっかい手羽先だなー』とか考えていませんよね?」


オスカル様が鋭い。


「ローザの美しい部位を食材のように表現しちゃダメですからね!」

「だ、大丈夫ですよ…」

そっと目をそらした。


「お茶をどうぞ」

 アルバロがお茶を淹れてくれた。最高のタイミングだ。


「ほらほらお茶をどうぞ!私の特性スイーツも我が家で採れたフルーツもたくさん召し上がってくださいね」


 今日は午後の待ち合わせだったのでアフタヌーンティーっぽくおもてなしだ。



「干し葡萄入りのスコーンにはクロテッドクリームとジャムをたっぷりどうぞ。秋なので葡萄スイーツと栗スイーツ、かぼちゃスイーツを何種類かずつ用意したんですよ」

 大皿と3段のアフタヌーンティースタンドに彩りよく配置した。


「甘いものの他にローストビーフのサンドイッチもどうぞ。このチーズケーキはお茶にも白ワインにも合いますよ」

「ワインは赤も白もスパークリングも僕らが作ったんです、是非試してくださいね」


お茶とフルーツとスイーツとお酒を勧めまくった。


「ほらほら、みんなもどうぞ」

「甘いにおい!」

くっついて抱き合っているハナたちに声をかけると走ってきた。


「好きなものを教えてね、みんなのお皿に取るから」

「ハナ栗のやつ!」

「俺はブドウの!」

「はいはい、ローザは?」


「どうしましょう…」

悩むローザも優雅で美しい。


「スイーツよりフルーツにする?全部お土産に用意してあるから選ばなかったものは家でゆっくり試してね」

「カナさん、前もたくさんいただいてしまったし、これ以上は…」


 ネルソンさんが困り顔だけど遠慮されるほどのことはない。


「父も私も料理が本業なので我が家ではたくさん召し上がってください。食材は庭で採れるだけでなくダンジョンのドロップ品が売るほどあるし。作る量に関してはリザがいるのでなんでも多めに作るんですよ」

「リザを満腹にさせても余るんだ。遠慮されるほどの量じゃないから持って帰ってくださいね」


 父さんと2人で畳み掛け、自信作のチーズケーキを勧めた。



「美味しいです…」

「このチーズケーキ、本当にワインに合いますね」

ネルソンさんとアマリアさんがチーズケーキを気に入ってくれて嬉しい。

「たくさん召し上がってくださいね!」


「ローザちゃん、こたくん、遊ぼうよ!」

 マロングラッセを食べて満足したハナがフルーツを食べ終わったローザと孤太郎君を遊びに誘う。ハナはお腹ぽっこりボディーなのに少食だ。


「追いかけっこしましょう!最初は私が鬼になるわ。捕まったら次の鬼よ」

 ハナと孤太郎君がバラバラの方向に向かって駆け出すが狭い庭なので鬼ごっこにちょうどよかった。


「3人で遊んでくれると楽で良いですね」

「ローザが大きくなってハナたちに潰される心配が無くて良かったです」


安心して大人同士の交流を深めることにした。


「普段、孤太郎君はお店の皆さんやご家族に遊んでもらっているの?」

「そうなんだよ。うちの家族も従業員も暇さえあれば孤太郎孤太郎って」

「それなら淋しくないね!ローザはオスカル様といつも一緒ですか?」

「いつでも僕の側にいて欲しいんだけどローザはうちのギルド職員とも仲が良いんですよ。冒険者の中にはテイマースキル持ちもいて、彼らもローザとの会話を楽しみにしてくれているんですよ」


 ギルド職員のほとんどはテイマースキルがなく、ローザと会話できないけれど問題なく可愛がられているらしい。



 お風呂を嫌がる時やブラッシングの工夫とか、どんな我儘も許してしまいそうになるけど、それは教育上良くないという悩みなど、話題が尽きず今日も会話が盛り上がった。


「おや、少し休ませた方が良さそうだね。僕が行ってくるよ」

「ありがとう」

 巽がハナたちに水を飲ませたり休ませたりしてくれて助かる。



「ん?」

「どうかした?」

 かぼちゃプリンを食べたアルバロが固まった。

「このかぼちゃプリン、すっごく好み!」

「気に入った?」

「うん!かぼちゃが旬の間にまた作って!」

「じゃあ次は大きく作ろうか」

「ありがとう!来年はかぼちゃをたくさん植えようよ」

「そんなに気に入ったの?」

「うん!」


 お客様を放置して2人で会話してしまった…ちょこっと甘い雰囲気まで出してしまったような気がする。



「カナさんとアルバロさんは仲が良いのね」

「僕たちつきあってますから!」


 …横からアルバロに抱きしめられた…ごめんアルバロほど堂々とできない。めちゃくちゃ恥ずかしいな。



「………オスカル。お見合いしなさい」


「…嫌だよ」


「お父さんもお母さんに賛成だ。お見合いが嫌ならギルドの職員を紹介しよう」

「やめてよ…」


 親からの紹介とお見合いの違いが分からないけど口出ししてはいけない雰囲気を察した。少し早く離脱した巽は運が良いのか要領がいいのか。


「私たちは長命種族だ。長い時間を孤独に過ごすのは淋しいものだよ。せめてローザ以外に友人を作りなさい」

「………」


 オスカル様ってローザ以外に友達がいないのか…すべての時間をローザのために費やしているんだな。



「カナさんとアルバロさんはどういった経緯で交際することになったの?」

「僕らはもともと同じ種族で僕が先に好きになったんだ!カナは可愛いし!カナのスイーツは最高だし!リオとカナの家に居候することになった初日の一食めで胃袋を掴まれちゃったんだよね」


「まあまあまあ!それで?カナさんは?」

アマリアさんがぐいぐいきた。


「……顔が好みだったし…ハナのことも凄く可愛がってくれるし」


「あらあら!カナさんは恥ずかしがりやなのね!お似合いの2人ね」


「ハナちゃんを可愛がって…そうか!お父さんが小鳥好きな長命種族を探してみよう」

「いいわね!お母さんも探してみるわ」

「………」


 

 ハナとローザと孤太郎君が満足するまで遊べたので今日は良い日だった。しかしその後もオスカル様のお見合い話が続き、オスカル様が抜け殻のようになっていた。

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