第260話 久しぶりに孤太郎君と
今日もハナは朝寝坊だ。王都が楽しみで昨夜もなかなか寝てくれなかった。ペットスリングの中でハナがぷうぷう眠っている間に王都に入った。
「王都の家も久しぶりだね」
手分けして浄化魔法で家中ピカピカにしてからお茶を淹れた頃にハナが目を覚ました。王都の家は久しぶりなのでハナは匂いをかぎながら家中を歩いてチェックしていた。
「パトロールは終わり?」
「うん」
戻ってきたハナを抱き寄せると甘えてきて可愛いのでなでなでした。
「午後は孤太郎君に会いに行こうね」
「うん!」
…今日もカワイイ♡
お昼を食べてから巽たちが経営する飲食店に行ってみるとランチタイムが終わって店は閉まっていた。今日はこっちのお店に居ると予め聞いていたので裏口に回った。
「リオさん!いらっしゃいませ」
「巽君と孤太郎君はいるかい?」
「ええ、どうぞ!」
「こたくん!」
「ハナちゃん!」
お互いに駆け寄って鼻と鼻をちょんとくっつけて可愛い。
「可愛いですねえ!」
「お友達が来てくれて良かったな、孤太郎」
孤太郎君を溺愛するお店の従業員の皆さんもハナを歓迎してくれた。
「にいちゃん!俺とハナちゃんにボール投げて」
「分かった分かった」
巽がボールを持ってまとわりつく孤太郎君とハナと一緒に裏庭に向かった。
「こちらへどうぞ」
長吉さんと桃吉さんがお茶を淹れて椅子を勧めてくれた。
「ありがとうございます」
巽のご家族のお店で飲んだハーブティーと同じだった。今日も爽やかで美味しい。
「店も順調そうだな、原料とか困っていることはないか?」
「おかげさまで」
「常連客もついているんですよ」
「そうか」
「食料不足になる冬に稲荷寿司のテイクアウトを始める予定なんです」
「そうか!」
「お米も大豆も保存が効くのでありがたいです」
「具材も乾物とか保存食なら定番メニューに出来ますし」
「オープン稲荷に乗せる具材は炒り卵さえあれば、そこそこ明るくなるし」
「……ちょっと使わせてもらっていいか?」
リオがキッチンを指差した。
「はい!」
ぞろぞろとキッチンに移動した。
「これは鮭とばだ」
カッチカチの鮭とばを出した。
「秋鮭を皮付きのまま干したものだ。小さく切って酒に浸して戻せば“ 戻し鮭とば”だ。戻してひと手間加えてオープン稲荷に乗せてもいいし、干したキノコ類なんかと一緒に炊き込みご飯にしても美味いぞ。これは先日作ってアイテムボックスに入れておいた炊き込みご飯だ。試食してみてくれ」
長吉さんや桃吉さんたちが試食する。
「これは美味しいですね」
「出汁が出てる」
「旨味がありますね」
好評だった。
「家庭菜園で余った野菜を干して干し野菜にしててな、干したインゲンや細く切って干したニンジンも入ってる」
「赤と緑で彩りも良いですね」
「冬に野菜を食べられたらありがたいですね」
「干し野菜はこのくらいなら売れる」
どさっと積み上げて量と値段を相談して合意した。
(鮭とばはこのくらい…)
「是非買い取りしたい金額ですね!」
「どうしてリオさんは急に声が小さくなったんですか?」
(鮭はハナちゃんの大好物だから売ったことはハナちゃんには内緒な!)
「え!それじゃあ…」
(また釣るからこっちは大丈夫だ。ほら早く収納しろ、ハナちゃんに気づかれる前に収納してしまえ)
裏庭を気にしながら早く隠せと冷や汗をかくリオだった。




