第26話 海でちょっと
「海って初めてです」
リザが海に興味津々なので皆んなで浜辺にやってきた。ハナも愛犬時代は砂浜のお散歩が好きだったので喜んで駆け回って可愛い。穴を掘って何かを見つけては呼ばれたり、その辺に落ちていた長さがちょうど良い棒を気に入って咥えて走り回っている。
「何か大きいものがいるよ」
最初に気づいたのはハナだった。
「クラーケンだと思う」
アルバロがインベントリから釣り竿を取り出した。
「まさか釣るつもり?」
「釣るよ!」
「クラーケンって大きいイメージなんだけど」
「大きいよ。食いついたら引っ張るから皆んなで倒してね」
竿がしなって大きな気配が近づいてくる気配に身構えると勢いよく大きな生き物が飛び出してきたので一斉に攻撃したらクラーケンは一瞬で息絶えた。
「今夜はイカ大根にするか?」
「これを食べるの?」
「クラーケンは美味しいんだよ」
「ハナ食べてみたい」
父さんとアルバロとハナが食べる気だった。大きくて解体が面倒だな…と思ったらインベントリで分解できた。
「いったん全部を収納、欲しい部位だけをフォルダ分けできるね。最後に残ったアラはゴミ箱アイコンで廃棄出来そう」
インベントリの中で部位ごとにフォルダ分け。エンペラ、ゲソ、胴、ワタ、イカスミの墨袋…皮と目と軟骨とクチバシは要らない…普通のイカにはないものが出てきた。
「魔石があるんだけど」
「それは冒険者ギルドで売れるよ!クラーケンの魔石は高く売れるはず」
「大きいのか?カナ、出してみろ」
取り出した魔石は拳サイズだった。
「こんなに大きな魔石はみたことがありません」
リザもびっくりなサイズだった。
チュートリアルでもこんなの出なかった。
「明日、街に行ってギルドで冒険者登録とパーティー登録して魔石を売ろうよ」
「街も見てみたいしな!」
全員一致で明日の予定が決まった。
「今夜はイカを食うぞ。まずは塩辛を仕込む」
ワタの両面に多めに塩をふりかけたらラップをして冷蔵庫で1日置いておく。胴も1日置いて水分を飛ばす。
翌日、ワタを洗って塩を落としたら中身をしごいて取り出し、食べやすい大きさにカットしたイカと混ぜて冷凍。冷凍は寄生虫対策だ。よく凍らせたら食べる分だけ冷蔵庫で自然解凍。
「食べられるのは明後日かな」
「そうだな。今日はイカ大根とイカ焼きそばにしよう」
イカはさっと煮て取り出す。大根はことこと煮て柔らかく。最後にイカを戻して出来上がり。テーブルにイカ大根とお味噌汁と酢の物を並べる。
「イカ焼きそばはホットプレートで作るぞ」
温めたホットプレートに油をひいたらイカ、青梗菜、アスパラガス、赤ピーマンを炒めて塩胡椒。中華麺を入れてほぐれたら、XO醤を全体に絡める。
目の前で出来上がる焼きそばにハナとアルバロとリザが大喜びだ。父さんが手早く取り分けた。
「いただきまーす!」
ハナがフォークで上手にイカ焼きそばを食べる。
「おいしー!」
「イカ焼きそば気に入った?」
「うん!」
アルバロとリザも笑顔で頷いている。
「何十回も作れるくらいイカが残っているぞ」
「さすがに食べきれないよねえ」
「半分くらい売る?冒険者ギルドで買い取りしてくれるよ」
「そうしようか?無くなったらまた獲ればいいものね」
チュートリアルで取った魔石もついでに売ることになった。アルバロによると全部売ったら凄い値段になるけど全部の買い取りは出来ないだろうとのことだった。
いくつかの街を回って少しずつ魔石や魔物の部位を売る。気に入った街に家を買って魔法陣で領地と繋げて自由に行き来できるようにする予定だ。
その日は新しい街で脳筋じゃないイケメンとの出会いを祈りながら寝た。




