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第258話 久しぶりの裏山で採取

 アルバロの世界で用事があるからしばらく留守にすると告げたら子狸なクズさんのぶっとい尻尾が下がってしまった。


「クズさんもお仕事を頑張って」

 焼き菓子の詰め合わせを渡したら下がったままの尻尾が少し揺れた。最近のクズさんは子供や子狸の姿でいるのでつい甘やかしてしまう。



 仕事に行くクズさんを見送ってからアルバロの世界に戻った。


「じゃあ手分けして日課の作業を済ませちゃおうか」

 我が家の掃除、家庭菜園と養殖しているウニたちの世話、裏山の温室や果樹の世話などに半日以上かかった。




「なんだかんだで毎日やることあるよね」

「そうだな」

「今日、徹底的にやったから明日は養殖しているウニや海老たちにエサをやった後で時間ができるよね」

「そうだな」

「明日は1日、裏山で採取しない?」

「行く!」

 裏山を走り回りたいハナが飛びついてきて可愛いのでモフモフしてやった。



「今日はそろそろダンジョンへお散歩に行こうか」

「うん!」

 夕方近くにいつものお散歩ダンジョンに行き、ハナが満足するまでたっぷり走り回って暴れた。



「ダンジョン楽しかったねー!」

 今日は巨人系の魔物がたくさんポップして倒し甲斐があったようでハナがご機嫌で可愛い。

「良かったねえ」


 たくさん遊んで満足だったし翌日は裏山を駆け回る予定なのでご機嫌なハナは夜になっても興奮してなかなか寝てくれなかった。




「やっぱりこうなるよねえ」


 翌日、出発する時間になっても起きないハナをペットスリングに入れて裏山に向かう。結構揺れているけどハナが起きる様子はない。



 ハナを抱えながら頂上に向かって螺旋状に裏山を歩く。


「キノコと薬草がいっぱいだね」

「全部摘んじゃっても大丈夫、また生えてくるから」

 アルバロがそう言うならとマッピングスキルと鑑定スキルを起動しっ放しで遠慮なく摘みながら歩いた。


「これは見たことない薬草だね、焼け焦げたみたいな色」

「鑑定ではブラウン草って出てるな」

 見た目そのままだった。さらに鑑定してみると日焼け止めやホワイトニング化粧水の素材になるらしい。


「これも初めて見るな、シャクリン草って名前だ」

「どれどれ」

 父さんが指し示す草を見るとパンパンに膨れた多肉植物のような見た目の草だった。

「高血圧や動脈硬化に効く薬を錬金出来るらしいぞ」

これはリザが熱心に採取した。


「これはカンブク草だって、食欲不振の薬のもと。我が家には必要ないやつだ」

 このほかに不眠症の薬の素材であるボウミン草、神経症に効くタイコブ草などが採取できた。薬草のほかにキノコ類もたくさん採れた。


「去年の秋はシーズンを逃しちゃったけど今年の秋はいろいろ採取できて楽しいね」

「標高が低めの場所で採取できるものは網羅したね、これより上はまた違うものが採れるよ」

「へえ!楽しみ」


 そんな話をしていたらハナがペットスリングの中でモゾモゾした。

「そろそろ起きるかな」


「じゃあ早めの昼メシにするか」

 父さんとリザが『予め準備をしてきたから任せろ、カナとアルバロは休んどけ』と言うのでお言葉に甘えてハナを抱いて椅子に座ってぽんぽんしていたら、ゆっくりと目覚めてきた。


「起きた?」

 ハナが大きなあくびをした。

「ぉはよ」

「はい、おはよう」

 早くもないが余計なことを言わずに冷たいお水の入ったマグを渡すとごくごく飲んだ。


「おろして」

 ハナを地面に下ろすと四つ足で踏ん張りながら伸びをした。


「裏山?」

「そうだよ」

「ハナちょっと見てくるー!」


 目が覚めたら楽しい場所に居たことに大喜びで駆け出したのでマッピングスキルでシロクマのアイコンを確かめながら後を追った。小川をのぞき込んだりトンボを追いかけたり夢中で走り回っていたが、しばらくすると気が済んだのか戻ってきた。


「ハナお腹すいちゃった」

「じゃあ戻ろうか」

「うん」


戻るとお肉の焼けるいい匂いがしてきた。


「お腹すいたー!」

ハナが父さんに向かって駆け出す。


「じゃあご飯にしような」

 ハナが父さんの足元をちょろちょろして危ないので抱き上げて、手を中心にハナの全身を浄化した。



「今日は炭火で焼いたローストビーフとローストポークだ」

 リザの好みを反映したメニューだった。仲が良くてなによりだ。


「おいしー」

「美味しいね!」

 お肉と一緒に焼かれた根菜類もじっくり火を通されて美味しいし、スープも煮込まれてて美味しい。



「お肉おいしかったね」

「満足です」

ハナとリザが満腹顔だ。


「お茶を飲んだら進もうよ」

「ああ、何が生えているのか楽しみだな」



 ゆっくりお茶を飲んでから出発すると、いつものようにハナは右に左に寄り道ばかりしている。

「あんまり離れないようにね」

「わかったー!」

 分かったと言いながら見えなくなった。いつも通り分かっていないがマッピングスキルにシロクマのアイコンが表示されているので離れすぎると心配なので迎えにいった。


「1人で遠くに行きすぎだよ。一緒に戻るよ」

「うん」

 しかし、しばらくするとまた見えなくなり迎えに行くのを3回繰り返した。


「もう!これで3回目だよ、離れすぎちゃダメって言ったでしょう」

「わかったー」

 慌ててついてくるハナが可愛いけど、たぶん分かっていない。



「この辺りに群生しているアルストップ草って二日酔いの薬になるらしいよ」

「アルコールをストップか。なんの捻りもない名前だな」

「分かりやすくていいじゃん」

 全部採取して進むが、特に何も生えていない場所が続く。



「待ってえ!」


 寄り道していたハナが必死な顔で追いついてきた。


 マッピングスキルでハナの位置を確認しており、危険が無いとアルバロが言うので4回目はあえて迎えに行かなかったら探しにきてくれなかったと拗ねている。


「離れすぎちゃダメって何度も言ったでしょう」

「歩くの早すぎるう〜」


 しがみついてくるので抱っこして落ち着かせる。しばらく抱っこしたまま進んでいたらハナが抱っこに飽きてきた。


「ハナも歩く!」

 ハナを地面に降ろすと見える範囲でちょろちょろしている。夢中になるとすぐに忘れるので少ししたらまた見えなくなるだろう。可愛いけど手がかかる。でも可愛い。


「何か生えてるね」

「イタラック草だって。痛み止めの塗り薬になるんだね」

「痛いのが楽になるのか…」


次に見つけたのはラッカン草だった。

「関節痛が楽になるみたい」



 上層部で見つけたのはシビレシラズ草という痺れに効く薬草、ガサガサの肌荒れ減少に効くガサレス草、皮膚の炎症を抑えるエントール草、咳に効くセキナオール草などだった。



 最初は漢方っぽい名前の薬草ばかりだったのに、どんどん雑な名前になってゆく命名だった。薬草類を創造した時、アルバロが早めに飽きたんだなと思うリオとカナだった。

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