第254話 ニートの才能
ドス・グラントの商業ギルドを出て、宿経由で我が家に戻り、お散歩ダンジョンでハナのお散歩をした。ギルドからギルドへの移動で思うように動けなかったハナが思いっきり暴れて長めのお散歩になった。
「ダンジョン楽しかったねー!」
たくさん暴れてすっきりしたハナがご機嫌だった。
「ただいまー」
今日は久しぶりに我が家で過ごすことになった。住み慣れた我が家なのに久しぶりでちょっとウキウキしている。玄関でハナを浄化してやるとキッチンにすっ飛んでいった。
「おかえりハナちゃん」
「お腹すいたー!」
「晩ごはん出来てるぞ」
「食べるー!」
もうちゃぶ台に用意してくれていたので席に着く。
「今日は鮭とイクラの親子丼だ」
「鮭!」
「ハナちゃんには鮭を多めにしたぞ。カナはイクラ好きだろ。この前、鮭をおろした時にイクラを醤油漬けにしておいたんだ」
「嬉しい!大好物だよ〜」
「おいしー!」
「うん!美味しいね」
「きのこあんの揚げ出し豆腐とカボチャサラダも旬だから美味いぞ。松茸の土瓶蒸しもあるからな」
「すっごく豪華だね!」
「みんなで食べたいと思っていたんだ」
「ありがとう!」
「たくさん食えよ」
大満足な夕飯だった。お散歩ダンジョンでたくさん動いたのに食べ過ぎてプラマイゼロになってしまった。でも後悔はない。
「食後のお茶をどうぞ」
「ありがとう」
腹パンなお腹をさすりながら今後の相談をした。
「アルバロの眷属になる前に必要だった老後の資金って今後はどのくらい必要なの?」
「基本的にみんなが生活に困ることはないよ。でも退屈で働きたいって思うようになると思う」
「いやいやいや!全然休めるし!私、ニートって憧れだったんだよね!」
「カナにニートは無理だと思う」
「どうして!?」
「ハナのお散歩で毎日運動するし」
「…それは欠かせないし…ニートだってお散歩くらい行くし!」
「趣味の家庭菜園が気になって直ぐに見に行っちゃうし、養殖している魚たちの世話しちゃうし」
「絶対に放っておけないじゃん」
「裏山を散歩して薬草を見つけたついでにポーションを錬金しちゃうし」
「錬金は楽しいじゃん」
「苺が食べたいとか言って温室に行ったらついでに端から端までチェックして水やりして雑草を抜いて収穫しちゃうし」
「それは仕方ないじゃん」
「持ち帰ったフルーツで美味しいの作ってってハナと僕がねだったら作ってくれちゃうし」
「喜んで食べてくれるから…」
「たまには違うダンジョンに行きたいとか言って酒飲みのダンジョンとかシーフードのダンジョンに行って魔物を倒したり、ダンジョンに行く途中にアンデッドが出没するポイントがあると頼まれなくても浄化してるし」
「放っておけないじゃん」
「その調子でカナとリオとリザたちのアイテムボックスに高級素材と食料がたまって定期的に売りに行って大金に変えるでしょ?」
「そうだね」
「新米が食べたくてお米を育てちゃうし、新茶が飲みたいってお茶を摘みに行くし、ワインを飲みたくて葡萄から育てちゃうし。いつも通りの半農冒険者じゃん」
ニートの才能がないと指摘されて落ち込む日が来るとは思わなかった…。それにしても半農冒険者って響きも字面もカッコ悪いな。
「資金の使い道を考えたいんだよね。それはカナの心が元気な時に話そうよ。なんだか落ち込んでいるみたいだし、ね?」
「…うん」
憧れのニートへの道は険しかった。




