第253話 ネルソンさんに会いにきた
「ネルソンさーん!」
ダンジョンに潜った日は街に宿を取ったので翌日はダンジョンのドロップ品を買い取ってもらおうと冒険者ギルドに来たらネルソンさんが迎えてくれた。
「カルピオパーティーの皆さん、ドス・グラントへようこそ。今日はどうされましたか?」
「注文していた冬服のお仕立て上がりだったのでドス・グラントに来たんです。ついでにダンジョンに行ってきました」
「もう秋も深まってきましたし衣替えの時期ですねえ」
「ハナの冬のお布団もお仕立てしたんですよ」
ハナが自慢げに胸を反らす。
「良かったですね、ハナちゃん」
「えへへ」
ネルソンさんにテイマースキルが無くてネルソンさんとハナが会話出来ないのが残念だ。
「ダンジョンのドロップ品の買取りをお願いできますか?」
「では別室でお願いします」
ネルソンさんに案内された別室で買い取りリストを渡された。今回も鑑定士はウサギ獣人のローラさんだった。
「今から冬にかけて需要が高まる素材や依頼の入っている素材のリストです。お持ちの素材がありましたら是非お願いします」
リストを見ると覚えのある素材名がいっぱいだった。
「まずはポーラーアウルの羽毛、これは200kgあります」
「1kgだけ出してみていただけますか?」
「どうぞ!」
どーんと出した。羽毛1kgはなかなか嵩張った。
「…最高レベルの品質です。これと同等の品種で200kgでしょうか」
「同じです」
「全部買い取ります」
200kg出すことになり倉庫の床にシートが敷かれ、応援スタッフがアイテムバッグを持ってきた。ローラさんの鑑定を経由して応援スタッフが羽毛をアイテムバッグに詰めてゆく。
「次に一角狐の毛皮が大量にあります」
「あるだけ出してみてください」
これも床に出した。
「…素晴らしいです!全部買い取ります」
このほかに角や宝石、シルクスパイダーの糸などを出した。季節柄、毛皮など保温性の高い素材が多かった。お散歩ダンジョンでドロップしたものも多く今回もたくさん買い取ってもらえた。
アルバロの眷属になったため、老後の資金はあまり必要ではないとのことなのであり余る資金は世界に還元していこうと全員で決めた。還元方法はまだ決まっていないけど。
「買い取り金額を算出するまでに2〜3日ください」
「2〜3日で大丈夫ですか?」
「今は繁忙期ではないので大丈夫ですよ」
「では明日また来ますね!」
「カナさん」
「はい」
「ドス・グラントの商業ギルドマスターから是非、寄って欲しいと伝言をお預かりしています」
── ドス・グラントの商業ギルドのギルドマスターって守銭奴ゲフンゲフン…仕事熱心なギルドマスターだったな
父さんとリザは街をぶらぶらすると言うのでアルバロとハナと一緒に商業ギルドに来た。
「お待ちしておりました!」
商業ギルドマスターが揉み手で迎えてくれて応接室に通された。
「カナさん、フィナンシェのレシピを売っていただけませんか?」
── フィナンシェ!?なぜ知っている!?
「アルルの盾のリーダーは私の弟なんです。来週が私の誕生日なんですが来週は仕事で街にいないとかで昨夜早めに祝いにきれくれたんです」
── マジか!言われてみればちょっと似てるかも。髪と目の色は同じだ。
「お兄ちゃんですから可愛い弟が好むお酒くらいは常備していましてね、誕生日を祝ってくれて嬉しいのでお返しにお酒をたくさん飲ませてあげたら可愛い弟のお口が滑らかになりました」
「別に秘匿していないので普通に売りますってば」
フィナンシェは表面、特に長方形の四隅がカリッと、中がしっとりな食感で、アーモンドパウダーと焦がしバターの香ばしい風味が美味しい焼き菓子だ。
2〜3日後に冒険者ギルドに行く約束があるけど、それは父さんたちに任せればいいと伝えたら、すぐに使いを出して明日中に申し込みした購入者限定で明後日に講習をする約束をした。
商業ギルドの職員さんも講習を受けてくれることになり私たちがドス・グラントを離れた後にレシピを購入した人には商業ギルドが講習をしてくれるとのことだ。
「私がギルドマスターを務める間は代金分のケアはするようにしているんです。レシピ考案者の皆さまからの直接指導には遠く及ばないとは思いますけど」
「すごく親切だと思います。ドス・グラントの商業ギルドへの信頼感はこういう取り組みに支えられているんですね」
「褒めすぎですよ」
まんざらでもない表情のギルドマスターがちょっと可愛い。ドス・グラントの商業ギルドマスターを守銭奴と思ってごめん。仕事熱心な良いギルドマスターだった。




