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第252話 アルルの盾と再会

 ハナの希望により家族全員でドス・グラントのダンジョンに来た。


 服飾素材ばかりドロップする低層階を最短で進み、中層階に入るとハナとリザが張り切って魔物を倒しまくった。マッピングスキルで確認して同じフロアに誰もいなかったので思いっきり動いてもらった。



「ハナったら張り切りすぎだよ」

「セイフティゾーンで休んでいこうよ」

 ハナを捕まえると疲れていたのか大人しく抱っこされてくれたので抱っこのままセイフティゾーンに向かった。



 セイフティゾーンには誰もいなかった。

フロアでも誰にも会わなかったし今日の中層階は空いているようだ。


 セイフティゾーンの泉には小さな滝があって上の段は飲み水専用で下の段で手や傷口を洗ったり出来る。セイフティゾーンの飲み水は美味しい天然水なので少し汲んだ。


「手を洗いたいな」

「俺もだ」

 ハナ以外の全員が泉で手を洗った。


「毛皮がぬれるのいやー!」


 手洗いを嫌がるハナを捕まえて洗う代わりに全身浄化していると父さんは顔まで洗っていた。


 アルバロが敷いてくれたシートに座るとハナが甘えてきて今日も可愛い。

「ハナ牛乳のみたい」

「さっきドロップしたのでいい?」

「うん!」

 ハナのカップに牛乳を注いでやると両手でカップを持って可愛く飲む。


「お茶がはいったぞ」

 父さんが我が家で収穫した煎茶をいれて配ってくれたのでアイテムボックスからフィナンシェを出した。



「おいしー」

「疲れた身体に甘いものって美味しいね!」

 ハナとアルバロに好評だった。おやつを食べていたら、どやどやとセイフティゾーンに入ってくるパーティーがいた。



「あれ?」

「この前の…」

 入ってきたのはドス・グラントを拠点にしているアルルの盾というBランクのパーティだった。


「おーい!この前は仲裁に入ってくれてサンキューな!」

 父さんが手を振って声をかけるとアルルの盾が振り返った。


「…治癒魔法の!」

「あの時のクマちゃん!」

「シロクマちゃん!」


 私たちを忘れてもハナのことを覚えていてくれたようだ。


「良かったらご一緒にいかがですか?」


 誘ったら私たちの隣にシートを広げたので父さんがお茶を淹れて私が菓子鉢にフィナンシェを盛り付けて渡した。


美味うまっ!」

美味おいしいな!」

「このお茶も爽やかで良いな!」

煎茶もフィナンシェも好評だった。


「気に入ってくれてよかった。このお茶は我が家で栽培している茶葉でお菓子は娘が作ったんだ」

「これが手作りですか!」

「すっごく美味いです」


「娘はここの商業ギルドにスイーツのレシピを売ってな、バームクーヘンやらクッキーやら」

「ええっ!」

「あのバームクーヘンの作者なんですか?」

「ちょっとしたブームだったんですよ!」

「そうか?そうか?」

 父さんが親バカでちょっと恥ずかしいけど、その後の話は私も聞きたい。


「商業ギルドや料理人ギルドからの依頼で一時期は中層階のバターや牛乳、砂糖などの依頼が殺到したんですよ」

「こぞってダンジョン入りして大量に納品されたおかげで今は素材が余っているとかで依頼もないので中層階はすいているんです」


「俺たちはハナちゃんが食べたがるから素材を取りに来たんだ」

 ハナがマイペースにフィナンシェを食べて牛乳を飲んでいる。


「……」

「……」

「やっぱり可愛いな…」

 フィナンシェを手で持って食べるハナにアルルの盾の皆さんの視線が集中する。



「あれからテイマーのスキル持ちに話を聞いたりしているんだが、生まれ持ったスキルだって言われて諦めたんだ」

「ドス・グラントを拠点にしているパーティーにテイマーと従魔が何組かいるんですよ」

「大鷲のいるパーティーは大規模討伐でも斥候として必ず参加していますね」

「あれは格好いいよな!」



「シャドウウルフをテイムしているパーティーもいるんですよ」

「シャドウウルフってどんな従魔ですか?」

「主人の命令に忠実と評判のウルフ系の従魔だよ。普段はテイマーの影に潜んでいるんだけど命令がなくても主人の危険を察知すると影から飛び出して主人を守るんだ」


「襲った方は返り討ちにあって驚くし、何より強いからな」

「かなり能力の高い従魔だし主人への忠誠心も立派だよな」

「普段は主人の影に潜んだり主人の傍らでじっと控えているんだが、お役目を受けたらどんな冒険者にも真似出来ない活躍ぶりなんだ」

「へえー」

「みんなカッコいいな!」

よその従魔って凄いなと思った。



「お腹いっぱい…ハナ眠たくなっちゃった」

 カッコいい従魔の話にしびれていたらハナが寄りかかって甘えてきたのでフィナンシェを手づかみで食べていた手を浄化して抱っこすると、こてんと頭を預けて寝た。


「可愛いですね」

 アルルの盾のメンバーたちがハナを見て表情を綻ばせる。


「娘が生まれてすぐに妻を亡くしてな、同じく親を亡くした赤ちゃんだったハナちゃんを引き取って娘と一緒に育てたんだ。カナもハナちゃんも我が家の愛娘だ」


「ハナを連れ帰ってくれてありがとう。ハナがいてくれたから母さんが居なくても淋しくなかったよ」

ぷうぷう眠るハナを撫でる。


 カッコいい従魔とは違うけどハナは我が家の大切な家族だ。



「…そういえば、あの時に怪我したパーティーのその後ってご存じですか?」

「ああ、何度か会ったぞ」

「ランクは下がったけれど皆さんのご厚意で借金を背負わずに済んだと感謝していました」

「ランクが下がっても腐らずに元気でやっていましたよ、すでに元のランクに戻っているんじゃないでしょうか」

「そうか!それは良かった」


「そうそう!あの時にいただいたスープが忘れられなくてギルドの干し肉を買ってみたら美味しくて」

「ちょっと割高だけど、あれからうちのパーティーの干し肉はギルドの干し肉なんだ」

「そうか!美味うまいか!」



父さんのステマは大成功だった。

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