第251話 お仕立て上がり
ドス・グラントに来た。
「お仕立て上がり、楽しみだね!」
ウッキウキでいつもの仕立て屋に向かう。
「いらっしゃいませ!」
「お待ちしておりました」
「お仕立て上がっていますよ」
今回も大歓迎してくれた。私たちが試着して納品完了となるまでハナはお店の皆さんに可愛がられてご機嫌だ。
「すっごく可愛いデザインですね!色もイメージ通り」
今回は布を染めるところから頼んだので伝統的な町娘スタイルだけど超高品質になった。
「セーターとカーディガンもどうぞ」
糸を持ち込んで染色して編んでもらった特別なセーターとカーディガンだ。
「これも素敵!イメージした以上です」
「それは良かったです」
よく考えてみたら顧客のためにデザインして仕立ててくれるんだから、これは憧れのオートクチュールだ。嬉しくて鼻息も荒くなっちゃうよね。
すべて大満足の仕上がりだったので受領して受付に戻るとすでに父さんたちも戻ってきていて、ハナはオタサーの姫のようにお店の方たちからちやほやされていた。ハナの冬用の掛け布団もオーダーしており、ふかふかの仕上がりに大喜びだ。
「お待たせハナ」
「カナちゃん!」
ハナが飛びついて来るのでキャッチして抱っこしてモフモフした。
「頼んでいたアレは?」
「出来ていますよ」
「運んで参りますね」
店員さんが運んできたのはこたつ布団だった。柔らかいオーガニックコットンの中はダンジョンでドロップした高級羽毛という贅沢仕様だ。
「おこたのお布団!」
ハナが大喜びで丸い尻尾をぴこぴこさせるのでハナが触れるくらい近寄る。
「やわやわ〜」
両手でぎゅっと掴んですりすりしている。
「気に入った?」
「うん!」
アルバロ世界の我が家の分と父さんとリザの家の分とアルバロとハナと私の家の分と3つ注文したので大荷物だけどアイテムボックスがあるから持ち帰りも楽々だ。
「最高に仕立ててくれてありがとう!」
「また季節の変わり目に頼むな!」
仕立て屋の皆さん総出で見送ってくれた。
仕立て屋での用事は終わった。
「ハナ、付き合ってくれてありがとう。ダンジョンに行く?宿で休む?」
「ダンジョン!」
ドス・グラントのダンジョンでドロップするシルクスパイダーの糸やゴールデンフォックスなどの上質な毛皮を求めて人が集まりドス・グラントの街は発展し、織物の街と呼ばれるようになった。
「牛乳がでるダンジョンだよね!」
「中層階のフロアから牛乳やバターがドロップするよ」
「うれしー!早くいこう」
四つ足で器用にスキップするハナの可愛い後ろ姿を見ながらダンジョンに向かった。




