第250話 眷属っぽい私たち
「やっぱりパエリヤとリゾットが無難だな」
冬の食糧不足対策としてお米を売り込んでほしいというアルバロの要請で父さんが受け入れてもらえそうなお米料理を検討したら無難なメニューがでてきた。
「魚介のパエリア、チキンのパエリア、キノコのパエリア。リゾットはチーズのリゾット、ポルチーニ茸のリゾット、トマトのリゾット、あさりのリゾットなど何種類か試作してみた」
父さんがテーブルにパエリアとリゾットを並べる。
「試食してみてくれ!」
「美味しそう!」
「ハナはどれがいい?」
「うんとね…チキンのとね…あとチーズの食べたい」
ハナにチキンのパエリアとチーズのリゾットをよそってやる。
「はい、どうぞ」
「ありがと」
スプーンを持ってぱくん。
「おいしー」
「うん美味しいね。おこげもいい感じ」
「ハナもおこげ好き」
「カリカリで美味しいよね」
ハナと微笑み合う。
「全部美味しいよ、是非とも広めてほしいな」
「レシピはサービスしよう。その分、米を買ってくれと言えばおかしくないだろう」
「民が喜ぶよ!」
「明日クラリッサちゃんのところに行こう」
さっそく王都に向かった。
「王都の家に寄らずに商業ギルドに行くか」
「そうしようか」
「いらっしゃいませ!」
「クラリッサちゃんはいるかい?」
「少々お待ちください」
「カナ!おじさんも」
「クラちゃん!」
ハナが駆け寄ると優しく抱き上げてくれた。
「今日も可愛いわね」
「えへへ」
「今日はクラリッサちゃんに相談があるんだ」
「では別室にご案内しますね」
クラリッサが大きめの部屋に案内してくれてお茶を淹れてくれた。
「今日のお茶もいい香りだね」
「カモミールよ。それで相談って?」
「もうすぐ冬だろう?」
「はい」
「冬の間は食糧事情が厳しくなると聞いた」
「冬ですから。仕方ないです」
「俺たちは自分たちで栽培も狩猟も養殖もやってるから、そこまで厳しいとは知らなかったんだ」
「立派な温室がありますもの、困ることはないですよね」
「何もかも俺たちが食うよりたくさん作っているんだ」
「将来的に何があるか分からないので多めに備蓄するのは正しいと思いますよ」
「自分たちの分を余裕を残して売れたらと思うんだ」
クラリッサの表情が変わった。
「ただし俺たちが作っているのは米だ。食糧不足でも買う人が少ないかもしれん」
「それは…」
クラリッサの表情が曇る。
「我が家の米を美味く料理する方法を無料でつけたら売れると思うかい?」
「おじさんのレシピを無料はいけません。レストランがお金を払って買うべきクオリティですよ」
クラリッサが商業ギルド職員っぽい。めっちゃ職員っぽい。安売りするなと止めてくれるクラリッサに信頼感が増し増しだ。
「俺たちの心配をしてくれてありがとう。でも俺たちのところには米が余ってる。北の方には冬に飢える人たちがいるんだろう?」
「それは…」
「米は適切な価格で販売する。レシピはちょっとしたサービスだ。いい落とし所じゃないか?」
「おじさん…」
クラリッサが困り顔だ。困った顔まで美人なんだから可愛いな。
「困らせちゃってごめんな。俺たちはこの後で仕立てに頼んでいた冬服を受け取りにドス・グラントに行くんだ。その後でまた王都に寄るから相談してみてくれるか?」
「本気なんですね?」
「家族で相談したからな!」
「ありがとうございます」
「これ、サンプルね。試食がないと相談出来ないと思うから多めに用意したよ」
テーブルに大きなお鍋をどんどん出す。
「うわ…お腹が空く匂い!」
「ほらほら冷めないうちにしまって!」
クラリッサが慌ててアイテムボックスに収納する。
「これはクラリッサに」
全種類、2〜3人前ずつ入った小さなお鍋をどんどん出した。
「え!いいの?本当に?」
「ほらほら冷めないうちにしまって」
「嬉しいわ!」
クラリッサがほくほく顔で収納した。
「炭水化物は太るから気をつけて」
「カナは今日も一言多いのよ」
クラリッサに頬っぺたを引っ張られた。




