第248話 栗きんとん
「昨日炊いた小豆もいい感じ!」
「カナちゃん、なに作るの?」
ハナが足元でフンフンする。
「今日は栗ぜんざいと栗きんとん」
時間がないしクズさんのリクエストが和菓子なのでモンブランは次の機会だ。
今日の午後にクズさんが来るから急いで仕上げる。小豆が美味しく炊けたので栗ぜんざいはすぐに出来た。
栗きんとんは本格的なやつを作った。岐阜県中津川の有名な栗きんとんの再現まではいかないけど似てると思う。
アイテムボックスで鬼皮と渋皮を分離した栗を茹でたら和三盆と一緒にフードプロセッサーで滑らかにしてボウルに移し、湯煎にかけながら木べらで練って和三盆が溶けたらラップで巾着に包む。食べる直前まで包んでおけば乾燥も防げる。
まだ時間があるので栗の甘露煮とサツマイモを合わせた黄金色の栗きんとんも作ろうと思ったら昨日くちなしを使い切ってしまったことに気づいた。彩りが欲しくなったので、くちなしを取り寄せずに裏漉ししたサツマイモに抹茶を加えて緑にしてみた。こちらも大きめの甘露煮を中心に茶巾に絞って取り分けやすいサイズにしたら甘露煮の黄色と抹茶の緑で鮮やかになった。
「カナちゃん、すっごく上手ねー!」
ころりとした栗きんとんにハナが大喜びで可愛い。
「クズさんが来たら一緒に食べようね」
「うん」
一緒に食べる分とアイテムボックスに保存する分を残して重箱に詰めた。重箱はクズさんの持ち帰り用だ。大量の栗を前に途方に暮れたがクズさんがいてくれて良かった。
…… “クズさんて都合がいいな”なんて思っていない。神様だし。敬っているし。お土産があると知ったらクズさんは喜んでくれるだろう。
「今日は和風のランチョンマットにしようか。この組み合わせとこの組み合わせはどっちがいい?」
「ハナこっちが好き」
ハナと一緒に選んだ紅葉色のランチョンマットは濃い色の漆器や美濃焼の銘々皿に合う。今日は漆器に栗ぜんざい、美濃焼の銘々皿に栗きんとんを乗せるつもりだ。
ハナと一緒にテーブルセッティングをしていると話し声が聞こえた。アルバロがクズさんを案内しているようだ。
「甘い匂いがするな!」
「いらっしゃい、クズさん。栗きんとんと栗ぜんざいを作ったよ」
「どっちも俺の大好物だ!」
クールなイケメンが頬を染めて喜んでいる。
「僕がお茶を淹れるよ」
「ぜんざいを温めるね」
「ハナ、パパとリザちゃんよんでくる」
アルバロが急須でお茶を淹れる間に私がお菓子の準備、ハナが父さんとリザを呼んできてくれた。
「今日のおやつは豪華だな!」
「父さんもリザも座って」
全員揃っていただきます。
「栗ぜんざい美味いな!」
「栗おいしー」
クズさんもハナも気に入ったようで良かった。
「栗きんとんも栗の風味が生きてるな、素朴で美味い」
「クズさんはこってりした洋菓子よりも素朴な和菓子の方が好きなの?」
「どっちも好きで選べないな!」
決め顔で返答された。
「そうなんだ。これはお土産ね」
アイテムボックスから出した重箱を積み上げる。
「お重の中は栗きんとん、こっちのお鍋は栗ぜんざいね」
「いいのか!?」
「拾うの手伝ってくれて助かったし。ハナとアルバロの分は残してあるから遠慮しないで」
…決してクズさんに残り物を押し付けたわけじゃない。喜んでくれてるからWin-Winだ。




