第247話 栗ごはん
裏山で拾った栗を持って父さんとリザの家を訪ねた。
「半分ね」
どどんっと米袋のようなサイズの袋を積み上げた。
「…多いだろう」
「半分だってば。裏山に来る小動物のために結構残したんだけどね。まだ落ちていない実もあるからまた拾いに行くよ」
「とりあえず栗ご飯にするか。今日はうちで晩飯を食っていけ。クズさんも食ってってな」
「悪いな!」
アルバロの拠点に戻るやクズさんは大人に変身した。見栄っ張りな神様だと思ったけど黙っておいた。
「今日はクズさんが手伝ってくれて助かったよ」
「和菓子にしてくれるんだろう?」
「下処理に時間がかかるから今日中には出来ないよ」
「待てるぞ!」
とりあえず下処理だ。全部アイテムボックスに入れてみたら栗フォルダが出来たので開いてみる。
栗フォルダ
┗ 栗
┗ 鬼皮
┗ 渋皮
「なにこれ!超助かるんだけど!!」
ダメもとで試してみたら成功したので栗だけ1kgほど取り出してみる。
「栗だ!」
綺麗に渋皮がむけた状態で取り出せた。
「これはいいな!」
父さんも大興奮だ。
「私は向こうの家のキッチンで甘露煮とか作ってくるね!」
「おう!晩飯ができたら呼ぶからな」
自分たちを浄化してキッチンに入るとハナたちが見学用の場所に陣取った。子狸になったクズさんと寄り添って座って可愛い。
甘露煮を綺麗な黄色にしたいのでインターネット通販でくちなしの実を召喚した。
くちなしの実を半分に切って鍋に栗とくちなしの実を入れ、ひたひたになるまで水を注ぐ。いつもはここに到達するまでが大変なのに。アイテムボックスって素晴らしい。
鍋を火にかけて沸騰したら弱火にして茹でて火を止めたら冷ましてくちなしの色をしっかりつける。
栗を冷ましている間に小豆も煮る。
小豆をさっと洗って水けをきったら鍋に入れてお水と一緒に火にかける。沸騰したら差し水をして、さらに茹でる。再び沸騰してゆで汁の色が変わって来たらザルにあけて流水で灰汁を流す。
もう一度茹でこぼして灰汁を流したら鍋に水を入れて豆を鍋に戻して火にかける。沸騰したら差し水をしながら茹でる。
少量を小皿にとってスプーンで潰した時に抵抗なく潰れるくらいまで柔らかくなったら落し蓋をする。そのまま弱火で30~40分間ほど皮まで柔らかくなるまで茹でる。
「小豆はこのまま煮るよ。栗は冷めたみたいだね」
栗の甘露煮に戻る。
小鍋に砂糖と水、塩少々を入れて弱火にかけ、砂糖が溶けたら栗を入れて落し蓋をする。煮立ったら弱火で10〜20分くらい煮て冷めれば完成だ。
「出来たのか?」
クズさんがソワソワしている。
「甘露煮はね」
「食えないのか?」
「小豆が煮えるまでまだまだかかるし」
「そうなの…」
ハナががっかりして可愛い。
「うーん、何か合うものあったかな」
話しているうちに小豆もいい感じに茹で上がったので砂糖を入れて煮るのを後回しにしてアイテムボックスを確認したら複製しておいたロールケーキがあったので生クリームを泡立てて刻んだ栗の甘露煮を合わせた。
輪切りにしたロールケーキの上に栗入りの生クリームを絞って栗の甘露煮を上に飾った。
「栗のロールケーキだよ」
「やったあ!」
「僕が紅茶を淹れるよ」
アルバロが紅茶を淹れてくれたのでロールケーキを切り分けた。ハナと私に1切れずつ。ハナには一つ多く栗を乗せてやった。残りはアルバロとクズさんで半分こ。
「おいしー」
「美味いな!」
「これを食べたらお散歩に行こうね。クズさんの和菓子は明日の午後には出来るから」
「すまんな!」
大好物の栗を食べてご機嫌なハナが機嫌良くお散歩してくれた。それに今日はクズさんも一緒にお散歩ダンジョンに行ってくれて助かった。お散歩ダンジョンはアルバロの世界なのでクズさんは再び子供になったが大活躍だった。
「ハナ、はしゃぎすぎだ。水でも飲んで一休みしたらどうだ」
「うん!」
子供のクズさんがハナを気づかってくれた。興奮したハナはいつもヘトヘトにならないと捕まらないし、呼んでも戻ってくれない。でも今日は休ませた方が良さそうだなと思ったタイミングでクズさんがスッと捕まえてくれた。さすが神様だ。
「ありがとう助かる」
「なあに、このくらいはどうってことない」
子供の姿でハナを抱きながらカッコつけて可愛いな。
休憩させてから、もうひと暴れしたら気が済んだようだ。
「ハナ疲れてきちゃった」
可愛いので撫でまくる。
「じゃあ帰ろうか」
父さんたちの家に行くと晩ご飯が出来ていた。
「栗ごはんと栗おこわ、栗入りのうま煮だ。肉団子入りの鍋と唐揚げもあるぞ」
「すっごいー!栗いっぱいー」
シロクマに生まれ変わって栗が大好物になったハナが大興奮だ。
「ハナちゃんのためにパパ頑張ったぞ」
「うれしー」
父さんとハナが抱き合ってすりすりした。
ハナに栗ごはんと栗おこわ、栗入りのうま煮をよそってやる。
「さあ、どうぞ」
「ありがと!」
スプーンで栗ごはんをすくってぱくん。
「おいしー」
「よかったね、お鍋と唐揚げも食べる?」
「たべる!」
小さな唐揚げを小皿に取って、お鍋もよそってやる。
「美味い!美味いな!」
「たくさん食っていってな。クズさんには土産に詰めてあるから持って帰って家でも食ってくれよな」
クズさんがもりもり食べるので父さんの機嫌が良い。
「リオはもともと料理人なんだよ」
なぜかアルバロが自慢げだった。
「クズさんの世界にだって美味しいものたくさんあるでしょう?」
「もちろんだ」
クズさんがぐぐっと胸をそらす。
クズさんが見栄っ張りなせいでお供えしてもらえないのは勿体無いなと思うカナだった。




